消防士になりたいが、公務員試験が難しいという話をよく聞く。親戚のお兄さんは3年間受けて合格できなかったため、諦めて別の仕事に就いたらしい。
卒業後は消防の採用試験を受ける予定であるが、普通の大学に進学するか救急救命士の資格が取れる大学に進学するか悩んでいる。救急救命士の学校に通うことで消防士に採用される可能性は上がりますか?
結論
合格する可能性は上がります。
面接などの人物に付けられる得点が上乗せされるため、他の受験生より有利になることは確実です。
少々注意点がありますので、合格可能性が高くなるというメリットと注意点のデメリットを天秤にかけて進学先を検討してください。
注意点① 採用取り消しの可能性がある
募集要項において、消防士採用試験の一般枠と救急救命士専用枠が別に設けられている消防本部を受験する際の注意事項です。
特に一般枠ではなく、救急救命士専門枠を受験する際の注意事項となります。
大前提として、救急救命士の学校に通っても、卒業と同時に資格が取得できるわけではありません。
在学中の履修状況により、卒業年度の途中に救急救命士資格取得の国家試験を受験する要件を満たしている状態になるだけなので、在学中に資格を取得することは出来ません。
国家試験の試験結果が発表されるのが3月末から4月上旬である年度も多くあり、卒業式後に発表となります。
消防の採用試験は6月から10月の間に行われることが多いです。そして8月から12月くらいの期間に合否が発表となります。
この期間の差が生じることにより、消防の採用試験には合格しているのに、救命士の試験の結果は未だ出ていないという期間が生じることになるのです。
そして、救急救命士専門枠で受験して採用試験に合格していた場合には、救命士試験の合格が絶対条件となっています。そのため、万が一救命士の国家試験に不合格となった瞬間に公務員試験の合格も取消しとなります。
注意点② 希望通りの仕事ができるわけではない
消防士になることが目的で、救急救命士の資格をとることが手段であるとした場合には注意が必要です。
特に、消防士の中でも救助隊、特別救助隊などを目指す場合には注意が必要です。
全国的に救急車に乗車する救急救命士が不足している現状があるため、救急救命士の資格をもって入職すると、専属救急隊として配属される可能性が非常に高いです。
資格取得にかかる費用などを鑑みれば、救急救命士の資格を持っている以上、救急隊として使用しないことは資格に対する冒とくとまで考えられます。
注意点③ 金銭面での投資は回収できない
救急救命士の受験資格が得られる4年生大学の場合、通常の大学の1.2~2倍以上の学費がかかることが一般的です。金額的にいうと100万弱から500万円以上の差があります。
これに対して救急救命士に対して支払われる手当は、1回の救急事案あたり0円~数百円程度であり、回収するには非常に長い期間がかかることになります。
非救急救命士よりも早く救急隊になることができる可能性はありますが、救急隊が長くなると、消防の事務に関するバランス感覚とどんどんズレが生じてしまい、署長などへの出世はかなり狭き門となります。
消防本部によっては、救急救命士上がりのポジション(消防監や消防正監)が用意されている場合もありますが、数十人以上いる救急救命士の中から1人しかなれないことを考えると、現実的に期待することはできないと思った方がいいです。
注意点④ 気が変わったら路線変更が大変
救急救命士の受験資格が得られる4年生の大学に無事に入学できたとして、4年間ずっと消防士になりたいという意思が変わることは無いでしょうか?
小さいころからの夢であったとか語る人はいますが、現実に職業選択をする瞬間とは覚悟の度合いが違います。心変わりが当然発生します。
救急救命士の資格は、消防士として消防本部に採用されない限り、すべてを活かしきることはできません。病院や警察、自衛隊などで勤務している人もいなくは無いですが、そういった可能性があると少しでも思っているのであれば、救命士以外の看護師等の資格取得にした方が良いかも知れませんね。
結論
救急救命士の学校に入る方が良い人:通っている高校が偏差値50前後であり、勉強するのも好きではなく学力に自信が無い。学費については、両親・奨学金などの当てがあり心配していない。探求心や好奇心が高くなく、消防士になりたいという意思が変わることはなさそう。
救急救命士の学校に行かない方が良い人:通っている高校の偏差値が55以上あり、日東駒専以上の大学に入ることができる可能性が高そう。消防士になりたいとは思っているが、救急救命士が絶対条件ではない。
救急救命士の学校を進路として選ばなかった場合であっても、消防士として採用されたのちに、消防本部にて救命士養成所などに派遣されることにより資格を取得することも可能です。
とにかく消防士になることだけが目標なのであれば、高卒時点で消防士採用試験と救命士養成学校を併願することがいいと思います。
公務員試験に合格したらそのまま就職、不合格であれば大学・専門学校に進学すればいいと思います。