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住宅用火災警報器「全戸訪問」の愚策、税金浪費と組織の怠慢を露呈

時代錯誤の「全戸訪問」、実効性なき調査の無意味さ

 愛知県瀬戸市消防本部が実施した住宅用火災警報器の設置状況を調査するための「全戸訪問」。一見、市民の安全を守るための積極的な取り組みのように見えるが、その実態は時代錯誤も甚だしい愚策と言わざるを得ない。

 通常、このような調査は「時点調査」として行われるべきである。つまり、ある特定の時点における設置状況を把握することで、全体の傾向を把握し、効果的な対策を講じるための基礎資料とするのだ。しかし、今回の「全戸訪問」は、期間を区切らずに行われたため、調査結果が時間の経過とともに陳腐化し、実効性を欠くものとなった。

 例えば、調査開始時に設置されていなかった住宅が、調査期間中に設置した場合、調査結果に正確に反映されない。また、調査期間中に転居や新築があった場合も、同様の問題が生じる。このような調査方法では、正確な設置率を把握することは不可能であり、結果として、効果的な火災予防対策を講じることはできない。

税金数億円の無駄遣い、住宅用火災警報器一括配布の合理性

 今回の「全戸訪問」には、多大な人員と時間を要した。消防職員が各戸を訪問し、設置状況を確認するという作業は、想像を絶する労力を伴う。この6年間に、一体どれだけの職員がこの業務に割かれ、人件費換算するといくらになるのか。優に数億円は超えてくるだろう。

 この莫大な予算があれば、住宅用火災警報器を一括購入し、全戸に配布することができたはずだ。住宅用火災警報器の価格は、決して高額ではない。一括購入すれば、さらに単価を抑えることも可能である。

 にもかかわらず、消防組織は、このような愚策を強行した。その背景には、組織の怠慢と税金に対する意識の低さがあると言わざるを得ない。

人員不足は口実、組織の非効率な人員配置

 消防組織は、常に人員不足を訴える。しかし、今回の「全戸訪問」のような非効率的な業務に多大な人員を割いている現状を見れば、人員不足は単なる口実に過ぎないことが明らかだ。

 消防組織は、人員配置の最適化を図ることで、より効率的な業務遂行が可能となるはずだ。例えば、最新のIT技術を活用し、オンラインでの設置状況調査や相談窓口を設置することで、人員を大幅に削減できる。

 また、消防職員の業務内容を見直し、事務作業や広報活動など、専門的な知識や技術を必要としない業務は、外部委託やボランティアを活用することも検討すべきだ。

評価されるべきは実績ではなく、税金の使い方

 今回の「全戸訪問」は、あたかも評価されるべき実績であるかのように報道発表されている。しかし、市民が評価すべきは、このような非効率的な業務遂行ではなく、税金の有効活用である。

 消防組織は、市民の税金がどのように使われているのか、その透明性を確保し、説明責任を果たす必要がある。また、市民の声に耳を傾け、より効率的で効果的な行政サービスの提供に努めるべきだ。

 今回の「全戸訪問」は、消防組織の時代錯誤な発想、税金に対する意識の低さ、そして人員配置の非効率性を露呈した。消防組織は、この事態を真摯に受け止め、抜本的な改革を行う必要がある。

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