建物火災件数の推移
平成17年から令和元年までに発生した建物火災の件数の推移が上記グラフとなります。
平成17年から平成28年までは一様に減少していましたが、減少が底付きしたのか、21,000件前後を推移しています。令和2年以降の結果が気になるところですね。
建物火災の件数が減少する要因として身近なものと言えば、ガスコンロの過熱防止装置が義務化されたり、喫煙者の減少により建物内で煙草、ライター、マッチなどを使用する機会が減ったことなどが挙げられますね。
建物火災の件数を原因別にみてみると下記のグラフのとおりとなります。
下位クラスの原因はほぼ横ばいに見えますが、17年に上位であったコンロや放火、たばこについては、順位こそ大きく下がらないものの、件数は大きく減っていることが分かりますね。
これは火災原因調査を通して次の類似火災の発生を未然に防止する取り組みが効果を出し、減っていったのでしょうか。
建物火災の原因
統計上上位にランクインしている建物火災の原因(令和元年中)の詳細を見てみます。
原因 | 件数 |
こんろ | 2,864 |
たばこ | 2,056 |
放火 | 1,287 |
電気機器 | 1,268 |
配線器具 | 1,180 |
ストーブ | 1,108 |
電灯電話等の配線 | 1,073 |
放火の疑い | 712 |
たき火 | 454 |
電気装置 | 441 |
灯火 | 405 |
マッチ・ライター | 257 |
溶接機・切断機 | 245 |
煙突・煙道 | 189 |
火入れ | 180 |
火遊び | 177 |
風呂かまど | 174 |
焼却炉 | 131 |
取灰 | 126 |
炉 | 124 |
かまど | 51 |
排気管 | 47 |
こたつ | 43 |
交通機関内配線 | 41 |
ボイラー | 36 |
内燃機関 | 7 |
衝突の火花 | 1 |
その他 | 3,649 |
不明・調査中 | 2,677 |
上記の原因をみてどう感じるでしょうか?
やはりコンロによる火災が多いため火の取り扱いには気を付ける必要があるとか、実家のガステーブルをIHコンロに買い替えてあげようかなとか、放火が意外と多いため何を気を付けようかとか考えるでしょうか。
電気火災
注目したいのは電気機器、配線機器等を原因とする火災の存在です。
順番に見ていくと、ほかにも電気を使用するものを原因とした火災が発生していることがわかります。
火災の原因について 直火(火を使用するもの)、電気(主として電気を使用するもの)とそれ以外に分類した場合の火災原因の推移は下記グラフのとおりとなります。
全体の件数が減少している件については先に示しているため、各分類の占める割合について注目してみましょう。
火災のうち電気に起因するものの割合が大きく増えているのが分かりますね。
なぜ電気を起因とする火災の割合が増えているのでしょうか?
家庭で使用する電気機器が増えたから?使用する電気量が増えたから?流通する電気製品が粗悪になったから?
どれもピンと来ませんね。
電気機器が増えたところで、電気そのものは燃焼現象ではなく、ヒューズやブレーカー、送電遮断器等の安全装置があることを考えれば、火災の発生が増えるということには直結しなさそうです。
電気量の増加についても同じです。
建物の老朽化に伴う配線設備の老朽化も考えられなくもないですが、建物・配線の老朽が加速的に蔓延する現象は不自然です。
粗悪品については、むしろ過去の方が規制が緩く、火災の原因となる要素は減っているんじゃないかと考えられます。
では何故、電気を原因とする火災の割合が増加しているのでしょうか。
電気火災増加の考察
原因が不明として取り扱われた割合は、若干の増加傾向はありますがほぼ横ばいです。
それに対して、電気を原因とする火災の割合は大きく増加しています。
この原因については、火災原因調査業務の歪みから生じている人為的な操作ではないかと考えられます。
火災原因の調査に関しては、燃焼という基本的に不可逆反応における原因調査の結果、不明として処理される件数があまりにも少なすぎる点に機能的な問題があると思います。
つまり、火災の原因は意図的に操作されている可能性が高いということ。
「火災の原因を究明することが消防に課せられた職務」について誤った認識をしてしまい、原因が不明とすることは職務怠慢であると認識をしてしまったのではないか。
ましてや、先の「火災調査の業務効率化に向けた検討部会報告書」において、科学的な分析機器やX線透過装置の導入について既に導入又は導入を検討している消防本部があるとこのとである。
つまり、電気機器の出火原因を発見することが出来るようになったということ。
しかしながら、燃焼、火災という不可逆反応において、電気機器からの出火が原因で火災が発生したのか、他の燃焼反応を受けて電気機器が影響を受けて火災が発生する状態になったのかは、タイムマシンでもない限り分からないはずである。
ましてや、燃え広がった先にガスボンベや灯油等があり、その場所が激しく燃えてしまった場合には、燃焼の逆流が起こり、出火場所の特定すら困難である。
事実、消防士が作成した火災原因調査の内容を完全に否定するような内容で裁判の判決が下されたこもあります。論理的に正確ではないということなのでしょうかね。
こんな扱いにもかかわらず、不明として処理される件数がここまで少ないのはなぜか。
結果を出した方が、人事評価の評定が上がるし、実力があると認められるのでしょうか。
とくに、電気を原因とした火災となれば、最低でも中学から高校ていどの電気の知識は必要となり、高卒が大半を占める消防組織にとっては、非常に難解で高度な書類を作成したように見えることでしょう。となれば、人事評価は爆上がりですね。
こういった背景に基づいて、電気火災の割合が増えているという考察となります。