栃木県の那須地区消防本部の消防車が昨年12月、走行訓練中に横転する単独事故を起こしていたことが2日までに分かった。運転していた那須消防署湯本分署の男性消防士長(28)=当時=と同乗していた男性消防司令(53)=同=の2人にけがはなかった。同組合は同日までに、車両の修理費約4千万円を本年度一般会計補正予算に計上した。
同本部によると、事故は昨年12月3日午前、那須町高久丙のセンターラインのない県道で発生した。対向車とすれ違った後、誤って路肩から1.5メートル下の牧草地へ転落し、車体左側を大きく損傷したという。
車両は高所作業が可能な屈折はしご付き消防車で、2015年11月の配備時の購入額は約1億2800万円。修理費のうち約2200万円は保険金で賄い、残り約1800万円に一般財源を充てる。修理完了は12月末の見通し。現在は車両の配置換えをして対応しているという。
同本部は2人を口頭注意とし、再発防止に向けた手引きを新たに作成した。同本部は「消防戦術にも影響を与える重大な事故でおわびしたい」としている。
引用元:Yahoo!ニュース
概要
横転する単独事故と記載がありますが、よく読むと、対向車とのすれ違い時に路肩に転落したようですね。
屈折はしご付き消防車は、車幅か約2.5mもあり、一般的な乗用車が1.8mであることを考えると約1.5倍もの大きさがあることが分かります。乗用車の1.5倍と考えると、かなり大きい感じがしますね。
消防車両に限らず、公用車を運転する際は、税金により購入された高額な物であることと、万が一故障した際には、金銭的な部分に限らず、他の業務に多大なる影響が発生してしまうことを意識して、高い安全運転意識が求められます。
狭い駐車場や狭い場所での切り返しの際には、誘導員を立たせて、軽微な物損事故にも十分に注意を払います。
当然、今回のような狭隘な場所でのすれ違いの際には、誘導員が車両から降りて、脱輪や壁や樹木との接触を十分に注意するのが常識であり、公務員としての責務です。
そういった注意義務を十分に果たしたのかはいささか疑問ですね。
口頭注意のみとなっているので、尋常ならざる注意配慮をして、安全管理を徹底していたことでしょう。
通常程度の安全管理や注意配慮しか行っておらず事故を起こしたのであれば、訓告や戒告、減給といった処分があってもしかるべき事案かと思います。
問題点1:4000万円では足りない
はしご車の修理費用は膨大
考え方として、トラック部分と艤装部分に分ける必要があります。
トラック部分は通常の運送用のトラックと同じなので、修理費にも相場というものがあります。
今回のような横転転落事故であると、フレームの修理まで発生している可能性が高いので、その部分だけでも、300万円~8000万円程度の修理費用がかかるものと考えて差し支えないでしょう。
膨大な費用がかかるのが、艤装部分の修理です。
当然ですが、はしご車のはしご部分は、大量生産品ではありません。
組み上げられたはしご車は、丁寧に調整され、寸分の狂い無く安全に運行できるようになっています。はしご車のはしご部分を建物にぶつけたりしてしまうと、全体の調整が狂うこととなり、再調整や必要部品の交換に半年以上の期間がかかることもざらにあります。
はしご車のオーバーホール
はしご車は運用開始から7年目と以降5年ごとに、はしご部分のオーバーホールを実施することが推奨されており、運用上は、消防本部が配慮するべき安全管理上義務となっています。
このオーバーホールには3000万円以上の費用がかかることが一般的です。
はしごの長さや形状により費用が変動することは当然ですが、はしご部分に大きな歪みなどが生じていないことが条件で上記価格で実施されることとなります。
今回の横転事故により、はしごは多少歪んだことでしょう。例えば1度とか2度とかいう単位で数ミリ歪んでいる可能性は十分にあります。オーバーホールと同程度の点検整備は当然必要となる上に、歪みの修繕や交換なども必要になってくるはずです。
こういったことを考慮すると、この度補正予算に計上された4000万円では、シャーシ部分の修理と艤装部分の修理が十分に賄えるとは到底考えられません。
想像ですが、修理部分を削減したり、無理な値段交渉があったのかも知れませんね。
問題点2:事故から予算計上までの期間
事故があったのが12月で、予算計上されたのが8月頃となると、約8箇月もの期間を要したこととなります。
確かに、12月の事故の場合、翌年度の当初予算に計上するには時間的な制約もあり、正規の手続きを踏んでいては、難しいところもあったと思います。
とはいっても、折衝に長けていて議会運営や予算処理に関して詳しい人が居れば、4月やもっと早い時期の補正予算という手段もあったかと思います。
また、市長や消防長、消防管理者などの判断があったものと思いますが、補正予算という手段に限らず、予備費の充当、専決処分など、できることは数多くあったはずです。
はしご車導入時の資料まで確認していませんが、きっと「はしご車の導入により今までよりも多くの人の生命や財産を守ることが可能となる」なんてニュアンスの記載がきっとあったはずですから、そこに重きを置けば、時間をかけることの問題点も十分に考慮されたはずです。
まとめ
予算額の妥当性や予算計上までの期間の妥当性など気になる事件ですね。
消防本部にとって、はしご車って金食い虫で、オーバーホールがある関係で維持費が馬鹿にならないんですよね。
しかも、活躍の場がほとんど無いのが現状です。場合によっては、17年(3回目のOHを実施せずに廃車)とか22年(4回目のOHを実施せずに廃車)の期間中に、一度も火災現場などの災害現場で実績を残すことなく廃車になっていく車もあるくらいです。
実績がないことは平和だったという証です。ということで良いのかどうかという判断はいたしませんが、OHのみならず車検や点検などの費用を考えれば、この期間に十億円規模の維持費がかかることとなるでしょう。
この十数億円を別のことに使用して、国民の命や財産を守るという政策は決して愚策ではないと思ってしまうのです。
例えば、救急車を増台したり、市町村内の医療の充実のために使ったり、基幹病院と交通過疎地を往復する市内循環バスを運行したりなどですね。