筆者は、10年を超える消防士としてのキャリアがあり、その多く期間を人事等の業務を担当していました。元消防士を語る人は世の中に多数いますが、そのほぼ全ての人は、現場の消防士を数年で辞めた人たちです。私のように、人事などの消防の基幹事務を経験している元消防士は殆どいません。
その点から、他の消防士採用試験突破方法を語る記事とは一線を画すと思っています。
随時個別相談も受け付けていますので、良質な情報をキャッチし、消防士採用試験合格を目指してください。
まとめ
下に書いた通り、多くの質問は採点に影響のない無意味なものか差がほとんどつかないものとなっています。
数少ない差が付きやすく採点・合否に影響のある質問を確実に取りに行くことが重要なポイントです。
消防士の採用試験の合格平均点は高くありません。対策さえ怠らなければ確実に差を付けられる面接の質問はポイントを押さえておくことが重要です。
とはいえ、身だしなみと話し方は非常に重要なポイントとなりますので、質問への回答と合わせて準備しましょう。
質問
今までで最も苦労した経験について(頻度中)
- 点数に差が付きやすい
- 個性を出しやすい
- 回答内容に自己アピールを加えやすい
- 以降の質問をコントロールすることができる(やりすぎ注意)
- 乗り越えたエピソードを加えるといい
この質問は差が付きやすい質問のひつです。
苦労と言っても、ひとそれぞれ感じ方は様々であるため、面接官から「その程度のことを苦労と感じるなんてありえない!耐性のない奴だな」と思われてしまう危険性があります。
選択するエピソードの種類は「部活」か「人間関係トラブル」のいずれかが良いと思います。
部活であれば、「辛い練習を仲間と励ましあいながら乗り越えて、ライバル校に試合で勝つことが出来た」「他の人は続かなかった基礎練習を、自分だけは引退まで続けた」「一度も遅刻することなく朝練に参加し、体調管理にも気を付けていたため、現役中は体調を崩すことも無かった」なんてエピソードが多いですね。
こういったエピソードを基本として肉付けしていけばいいと思います。「仲間と協力」「自分だけ残った」「体調管理」なんてワードは、現役体育会系消防士は大好きなので、不自然じゃない程度にちりばめておくことが良いと思います。
人間関係のトラブルであれば、「クラスメイトが意見の相違で揉めた際に仲裁に入り解決することが出来た」「イベント運営のボランティアをやっている際に、方針の違いから仲間と揉めてしまったが、話し合いをし、お互いの意見を尊重しあうことによって乗り越えられた」「バイト先の飲食店に理不尽なクレームが長期間に渡ってあったが、繰り返ししっかりと相手の話を時間をかけて聞くことにより解決し、その後は一番のお客さんになった」なんてエピソードが多いです。とは言え、部活のエピソードよりは少ないですね。
ここで重要なのは「解決」「乗り越えた」「時間をかけた」なんていうワードですね。これらのワードは面接官になる人の年代(40代後半から50歳代)に刺さりやすいです。
体育会系に刺さるワードを選ぶか、年代に刺さるワードを選ぶか。どちらが有効化は、蓋を開けるまで分かりませんが、どちらであっても大差ありませんので、しっかりと回答を準備しておきましょう。
そして、やりすぎ注意の「質問コントロール」についてです。
上記の例、「辛い練習を仲間と励ましあいながら乗り越えて、ライバル校に試合で勝つことが出来た」 を参考にします。
ここまで端的に回答する人は居ないと思いますが、この答え方では次のような疑問が生じます。
- 「辛い練習とは具体的にどんな練習なのか」
- 「励ましあったとは、具体的にどういったことをしたのか」
どんな練習であったのかとか、励ましあう方法については、最初から説明した方がいい場合もあります。最初から説明することにより、具体性が増したり、自らのスキルをアピールすることができるからです。
どんな辛い練習であっても目標のためなら耐えられることや、励ましあうことの重要さとその方法を知っていることを積極的にアピールすれば、点数が上がる場合もあります。
その点を逆手にとって、意図的に追加質問をさせます。
追加質問の内容は予想することができるため、回答も簡単なうえ、面接時間を消化することができます。面接時間内の質問内容をコントロールすることが出来れば、他の受験生よりも有利に進めることが出来ると思います。
ストレスを感じたと思うエピソードについて(頻度高)
- 個性を出しやすい
- 回答内容に自己アピールを加えやすい
- 以降の質問をコントロールすることができる(やりすぎ注意)
- 乗り越えたエピソードを加えるといい
基本的には先の「一番苦労したエピソード」と同じ内容の質問ですが、切り口が若干違います。
ストレスという要素が加わり、若干印象が変わります。
重要なのは「一番苦労したエピソードとほぼ同じ質問であるということを認識すること」です。
一部の熱狂的メンタルヘルス信者からは、ストレスという言葉がある以上、まったく違う質問であるという主張もあるかと思いますが、消防士の採用面接においては、ほぼ同じ質問です。
答え方に若干の工夫が必要となります。
何に対してストレスを感じたかを具体的に言葉で説明する必要があります。もちろん、身体的ストレスではなく、精神的なストレスです。
例として「 他の人は続かなかった基礎練習を、自分だけは引退まで続けた 」を取り上げます。
「 他の人は続かなかった基礎練習を、自分だけは引退まで続けていたが、チームメイトから「実力がないのにアピールのためにそんなことをするのは辞めろ」とか言われたのは、非常にストレスを感じました。自分としては基礎練習が試合の役に立つと信じて続けていただけだったのに、監督へのアピールとか言われて非常に悲しくなるとともに、ストレスを感じていました。しばらくは気持ちが暗くなることが続きましたが、少し時間をおいて冷静になり、「それぞれチームのことを思って一生懸命頑張っている結果、自分に対して厳しく当たっただけなんだろう」と納得することができ、それ以降はストレスを感じることはありませんでした。」
こんな感じで答えられればOKです。
ストレスを感じた原因とその時の反応、そしてそれをどうやって消化したのかについてエピソードを話すことが出来れば、他の受験生と差を付けられると思います。
志望動機(頻度高)
- 点数の差は付きにくい
- 結果的にリラックスタイムの質問になる
- 落とし穴に注意!!(加点ではなく減点方式だと思え!)
ほぼ全ての受験生が回答を準備してきているため、点数に差が付きにくいです。とはいっても、配点が高くなっています。
落とし穴に注意!!というのは、配点が高い質問であるにもかかわらず、回答内容に差が付かず高得点になりやすくなっており、減点方式的に採点されているため、間違った答え方をすると、悪い意味で大きく差が生まれてしまいます。
質問される頻度が非常に高いが故に、準備をしすぎてしまい、面接官の印象に残ることを目的として、少々個性的な回答を準備している受験生がいますが、これは間違いです。
出会い系やマッチングアプリをやっている訳ではありませんので、短時間で強い印象を与えて覚えてもらう必要はないんです。
とにかく個性を出さずに無難に答えることが重要です。
希望する隊はあるか(頻度高)
- 実は差が付けやすい質問
- 事前準備は必要
- 質問する側はリラックスタイムだと思っている場合もあるが、実は差が付きやすい質問
消防ではポンプ隊、救急隊、救助隊、はしご隊 が一般的な部隊です。消防本部によっては、水難隊、化学隊、特別高度救助隊、などなど様々あり、これらのどの隊で働きたいかという質問です。
消防には現場以外に予防や総務といった業務もあるため、そういったものも選択肢になります。
ここでの正解は 救助隊 です。
救急救命士の資格を持っている場合でも、救助隊です。
本当は救急隊になりたい場合であっても、救助隊と答えるのが正解です。
それでは理由を説明します。
救助隊は、市民からは「消防士の象徴でありカッコいい存在、あの人たちがいるから町が守られている」と思われているものの、働いている消防士からは「面倒な仕事が多いうえ、上下関係が厳しく、手当もすくない。物好きだけが入隊する」なんて思われています。
意外にも、救助隊のなり手不足問題を抱えている場合が多いんです。物好きが多いがゆえにパワハラも多く、離職率も他の隊よりも高いため、人事部としては悩みの種となる存在です。そんな隊に成りたいという思いを採用前から語れるような人であれば、是非とも採用したいと思うのが人事の思いです。
出来る限り受験する消防本部の救助隊(花形)の活動や活躍状況を調べて、「救助隊になって〇〇のような過酷な現場があったとしても、人命救助に全力で取り組みたいです!そのために訓練を重ねたいと思っています」なんて言っておけば十分合格点です。
下手に自己主張をしてしまって、救急隊になりたいとかポンプ隊になりたいと言ってしまうと、そこから加点をもらって他の受験生との差をつけるのは困難です。
どうしても救急隊になりたいアピールをしたいのであれば、「救急隊としての知識を身につけ、救助隊として最前線に向かった際に一人でも多くの人を救助したいです!」とか言っておけばいいと思います。
採用後にあらためて面談があると思いますので、その時に「面接のときには救助隊という思いでしたが、今は火災予防(救急隊)をやりたいと思っています。」とか言ったとしても、クビになることはありませんので、面接時には安心してアピールしてください。
消防士になるにあたって不安なことはあるか(頻度中)
- 実は差が付けやすい質問
- 事前準備は必要
- 質問する側はリラックスタイムだと思っている場合もあるが、実は差が付きやすい質問
この質問は性質的には先の「希望する隊」と同じ分類の質問となります。
面接官は、緊張をほぐす目的で質問しているが、実際に受験生から返ってくる回答に差があり、気が付くと点数に差が生じている。ということです。
回答例としては、「消防という仕事は、人が亡くなる現場に居合わせることが多いと感じています。あまりそういった経験が無いので、不安に感じています。」といった感じです。
当たり前のことを言うのがポイントです。
良くない例としては「消防には厳しい訓練や礼節があると思います。そういったモノに耐えられるか不安ではありますが、自分は厳しい部活経験があるので大丈夫だと思います」ってな感じです。
いい例は、当然のことであり、これを否定するようなことは人道的に許されないでしょう。場合によっては、追加質問で「そのような場合にはどう対応したらよいと思いますか?」と聞かれると思いますので、「身近な先輩に、どうやって乗り越えたか相談してみたいと思います」なんて答えれば100点ですね。
悪い例の何が悪いかというと、消防組織に居る古い人間は「訓練が厳しいとは思っていない」という点です。多少厳しい面もありますが、必要最小限の厳しさであり、取り上げる程の事ではないし、昔に比べると今の訓練は遊びみたいなものだと思っています。
また、部活の延長で仕事に来られても迷惑なので、この言い方は良くないですね。