論文試験の出題形式について
言うまでもないが、論文試験というものは日本全国至る所で、様々なシーンで採用されている試験方法である。
消防の昇任試験はもちろんのこと、大学や高校入試、一般の就職試験、公務員試験、資格取得試験など様々である。
しかしながら、その論文試験の出題方法については下記のように分類される。
タイトル型
これが最も簡単な出題方法であり、多くの公務員試験や消防の昇任試験についてもこの形式となっている場合が殆どである。
タイトル型とは、非常に短い出題文により記載する論文の内容を指定される出題形式となっています。例を挙げると下記のようなものになります。
- 人材育成についてあなたの考えを述べなさい。
- 定年延長に伴う消防本部で発生する事象について論じその効果について述べなさい。
- 若年層の人口の割合が下がっていることを踏まえて、今後の消防本部のあり方について論じなさい。
- 全国的に消防団員が定員に満たない状況が増えており、報酬の増額等の対策が取られています。今後の消防団の役割について、消防本部との関係性という面から述べなさい。
このような出題方法がタイトル型であり、論文試験の中で最も簡単な出題方法となります。
簡単な出題方法である理由は後述します。
課題文型
これは現在最も主流な出題形式となります。大学入試や一般の就職試験において採用されている出題方法となり、上記のタイトル型と比較すると一気に難易度が上がります。
先に800字から数千字程度の課題文が示され、その課題文を読んだうえで要点をまとめて、課題文を発展させた意見を論じていく必要があります。賛成反対を示したうえで記載する場合と、現状に対する倫理的な社会課題を論じる場合など様々です。
課題文についても、一般の新聞記事やコラムが掲載されている場合もあれば、一般の研究論文や書籍の抜粋となっている場合もあります。前者と比較して後者の場合は課題文自体が難解になるため、高い読解力が求められることとなります。
比較的簡単な例とはなりますが、例題を示すと下記のようなものになります。
例題
問1 次の文章を読んで100字以内で著者の意見を要約しなさい。
問2 あなたの意見を800字程度で述べなさい。
引用元:課題文https://mainichi.jp/articles/20221120/ddm/001/070/102000c
救急車のサイレン音がいまの「ピーポー」という音になったのは、約半世紀前の1970年だった。消防車や警察車両と同じ「ウーウー音」と呼ばれる音だったが、区別できるよう変更した▲そのピーポー音に逆風が吹き始めているようだ。熊本市消防局は119番で救急車が緊急走行する際、サイレン音は不可欠だと理解を訴える動画を配信した。同局によると1日約100件の救急要請のうち「サイレン音を出さずに来てほしい」と求める通報が、多い日は20件近くにのぼるという▲多さに驚くが「近所迷惑になる」など、音響で近所を刺激したくないというのが主因のようだ。とりわけ、新型コロナウイルス感染が拡大してからは「無音要請」が増えている。サイレン音で目立ちたくない意識が強まっているのかもしれない。決して熊本市に限った現象ではあるまい▲だが、緊急走行する救急車がサイレンを鳴らすことは法令で義務づけられ、音量の幅も指定されている。走行の安全や到着の周知のため欠かせず、頼まれて消せるものではない▲通報時に執拗(しつよう)にサイレン拒否にこだわると、肝心の業務に支障を来す。逆に「音を出すなら」と救急を断るようでは、本当に必要な要請だったのかと、勘ぐりたくもなる▲ちなみに、ピーポー音に変えた理由には音の「ソフト化」もあったという。熊本市の動画タイトルは「サイレンは命のために鳴らしています」。改めてその必要性と大事さを確認したい、半世紀をかけて社会に根付いた音である。
先に示したタイトル型で「サイレンを出さずに来て欲しいという救急要請についてあなたの意見を述べなさい」という出題であれば、議論の範囲は無限に広がっていると言えるでしょう。
しかしながら、今回のような課題文型で出題された場合には、議論の範囲に制限が発生してしまいます。課題文との関連性を常に意識した状態で、議論を展開する必要があるからです。
書きたいことを好き放題記載した場合には、大きな減点がなされることでしょう。
こういった点において、課題文型の出題形式は難易度がグッとあがります。
グラフィック型
上記の課題文型と出題形式は似ていますが、文章ではなく図やグラフ、場合によっては絵が示されて、それらを読解して論文を書く必要がある出題形式です。
基本的にこの場において採用されるグラフや図については、社会課題を明らかにする目的に作成されたものであるため、その意図を十分に読み取ることが重要です。
まとめ
消防士に対して課題文型やビジュアル型の論文出題をしたところで、適切に問題を解くことができるひとは極僅かとなってしまうため、しばらくの間はタイトル型の出題が続くことでしょう。
文章の読解や表図グラフを読解する能力は、必ず必要なスキルではありますが、そのスキルを備えている人は消防職員にはほぼ居ません。消防職員向けの文章を作成する際には、ある程度の誤読、理解不足を十分に想定したうえで行動することが基本です。
非常に残念な現状ではありますが、自己の能力を真摯に受け止めて対策を進めることが重要かと思います。