概要
名古屋市千種消防署東山出張所で 5 月 21 日午前 6 時ごろ、職員休憩スペースの棚が燃える火災が発生した。現場にいた職員がすぐに放水し鎮火したため建物延焼や負傷者は出なかったが、消防署という「火を出してはいけない場所」で起きた失火であり、停職クラスが相場とされる重大な服務事故だ。ところが本部は詳細な処分方針をまだ示しておらず、電気ストーブが原因とみられる初歩的ミスも判明している。──消防の安全管理と懲戒運用を巡る“甘さ”が改めて露呈した形だ。
1 出火の経過と原因の初動情報
- 出火は東山出張所車庫に隣接する事務室の木製棚。午前 6 時時点で当直署員4人が在室しており、煙を感知して直ちに屋内消火栓で放水、約5分で鎮圧した。
- 棚周辺には季節外れの電気ストーブと延長コードが置かれており、消防は電源スイッチの切り忘れによる過熱の可能性を軸に調査している。
2 「失火=停職」が相場という事実
総務省例規や多くの自治体要綱では「本人の過失による出火」は停職・減給・戒告の対象と明記されている。
例えば今治市消防本部では公務外の出火でも停職3か月が科された前例がある。
今回のような庁舎内部の火災はより重く扱われるのが通例であり、処分が口頭注意で済むなら“極めて甘い”と言わざるを得ない。
3 「この時期にストーブ」―杜撰な危機意識
- 5月下旬の名古屋の平均気温は20 ℃台後半。暖房器具を常設する合理性は薄い。
- 電気ストーブは可燃物近接による火災リスクが高く、消防自身が住民向け啓発で繰り返し注意喚起してきた危険機器である。
自ら示すべき安全基準を内部で守れなかったという点で、単なるボヤでは済まされない。
4 情報公開と処分透明性への懸念
現時点で名古屋市消防局は
- 出火当時の当直体制と勤務区分
- 失火当事者の具体的行為(ストーブ操作・延長コード設置)
- 懲戒審査のスケジュール
――を公表していない。
過去には内部不祥事を「口頭注意」で終わらせた例も報道されており、今回も同様の“軽処分”になる可能性がある。
5 まとめ ― “消防署で火事”が示す組織の緩み
- 火災予防の最前線であるはずの出張所で電気ストーブ由来の出火。
- 処分相場は停職が普通。それ以下なら組織の信頼は大きく毀損する。
- 「多忙」を言い訳に安全点検を怠り、結果として税金で修繕・調査費用が発生する構図。
今回の懲戒結果と再発防止策が“身内の調書だけで幕引き”にならないか注視していく。消防が掲げる「安全安心」を内部から崩す失火――その重さを、市民も改めて問うべき時だ。