【費用対効果】名古屋市”青い救急車”運用開始 熱中症など出動増に備える【無駄遣いか否か】

中部地方

名古屋市は熱中症などで救急車の出動が増える時期を前に、青色の装飾を施した2台の救急車を新たに導入し、1日から運用を始めました。名古屋市中川区にある特別消防隊の施設で披露されたのは、「Blue EIGHT」と名付けられた新しい救急車です。熱中症などの通報が集中する晴れの日の出動が多いと想定されることから、青空にちなんで青色の装飾を施し、名古屋市のシンボルマーク「市章」になっている漢数字の「八」とあわせて「Blue EIGHT」と名前がつけられました。この救急車は中川区と西区にある特別消防隊の施設に1台ずつ配備され、出動要請が集中して救急車が手薄な地域が発生した場合にその地域に移動して機動的に運用されることになっています。名古屋市では去年の救急車の出動件数が過去最多の14万6000件あまりに達し、熱中症による出動が増えた夏の時期は地域によって一時的にすべての救急車が出払った時もあったということです。名古屋市消防局の川島直樹消防司令は「市民に呼ばれたらすぐ駆けつけ、救急車がいないエリアを作らないよう動いていきたい」と話していました。

引用元

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日勤救急隊について

日勤救急隊はその名のとおり、平日の日中、主に8時~17時頃までを中心に活動する救急隊の事です。

救急【隊】という名前が付いていますが、救急【車】と読み替えても支障ありません。

というのも、消防本部において、救急隊は余っている物の、運用する車が不足しているということが前提だからです。

 上記記事においても、救急車を2台配備したとは書いてあるが、そのために新たに救急隊員を育成したとか、採用したって記述はないですよね。

 余っていた救急隊を有効活用しましょうって話ですので、日勤救急車という呼び方の方がイメージしやすいかと思います。

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日勤救急車のメリット

現場到着までの時間が短縮する

 これは非常に大きなメリットに見えますが、限りなく嘘に近いです。

 具体的な例を示します。

 仮に、令和3年度中の、119番通報から救急車が現場到着するまでの時間が平均7分であったとしましょう。そして、同年度中の救急件数が10万件であったとしましょう。

 当たり前の話ですが、平均7分の中には、1分の事案もあれば15分の事案もあります。

 令和3年度中の、通報⇒現着までの時間の合計は70万分という数字が出てくることになります。

 今回の救急車配備により得られる効果としては、15分かかる事案が7分に短縮されるといったもので、対象となる事案の件数は、10~20件程度です。
 基本的にこの日勤救急車が稼働するのは、24時間稼働の救急車の約9割が稼働中に限られており、その際に日勤の救急車が近くにいるという状況は意外とレアケースなのです。

 すると、今回の件で短縮されるのは合計で(15分ー7分)×20件=160分となります。

 先に出した70万分にこの効果を反映させると、69万9840分となり、
 1件当たりの平均は6分59.904秒となります。

 1件当たりの効果としては0.096秒の短縮となります。

 1秒どころか、0.1秒にも満たない結果しか出ないのです。

 それでも、短縮するのであれば救われる命があるのかもしれません。0.1秒弱で救われるかもしれない命の件数は積算できませんが、この時間を生み出すための金額は積算できますので後述します。

消防職員の働き方が多様化する

 市民サービスへの直接的な影響は皆無ですが、職員満足度が向上します。救急車に乗って働きたいと思っているが、24時間勤務は家庭の事情により難しいといった、介護や育児中の職員にとっては喜ばしいものなのかもしれません。

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日勤救急車のデメリット

費用面

 日勤専用救急車だろうと、24時間稼働救急車であろうと、導入にかかる費用は1円も変わりません。

 救急車の導入費用は車両と積載する救命装置を合わせて概ね3000万円以上です。

 そして救急車を運用する救急隊の人件費も別途かかります。

 本人への支給額と社会保険料負担分等、個人装備品等等を合算すると、隊長級で年間約1000~1300万円、20代の新任救急隊で年間約500~600万円程度でが、ここでは簡易的に1人あたり800万円として計算します。

 そして救急車の乗車人数は3人ですが、有給の消化を考慮すると3.5人程度の準備が必要となります。

 つまり、800万円×3.5人=2800万円/年の費用がかかるわけです。

 常識的に考えれば、日中の全ての時間稼働しているわけではないので、他の業務と兼務しているはずです。例えば、救命講習の管理とか救急資機材の在庫管理などなど、簡易で単純な業務も割り振られているはずです。

 仮に、日勤救急車に割く割合いを5分の1程度とすると、事件費は560万円となります。

 つまり初年度だけで約3560万円もの費用がかかるわけです。その結果、0.1秒にも満たない結果を生み出すのです。

 市民を100人集めて、それぞれに3560万円の予算を割り振り、市民のために自由に使ってくださいと指示した場合に、1人でも上記のような救急車を配備する案を出すでしょうか?

 案が思いつかないとかいう話をしているのではなく、無駄遣いだからやらないという話をしているのです。

 例えば通報時に超軽症であることが明らかな場合には救急車を向かわせず、救急救命士1名がバイクで向かい、状況を確認する。その結果、救急車が必要か否かを現場で判断するという運用にすれば、圧倒的に予算は縮小されるし、現場到着までの時間も短縮することになります。

 現に、一部の消防本部では、簡易的な消火装備を積載したバイクを先遣隊として火災現場に向かわせる運用をしている地域もあります。

 

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デメリットが勝り過ぎ

 基本的には、日勤救急車は大賛成です。

 大賛成ですが、上記のような運用には大反対です。

 メリットに対してデメリットが勝り過ぎます。

 0.1秒にも満たない結果を出すために、これだけの税金が投入されるべきなのでしょうか?

 逆に言えば、これだけの税金を投入しなければ、0.1秒短縮することはできないのでしょうか?

 0.1秒にはこれだけの価値があるのでしょうか?

税金が正しく使われているのか。否か。

 これに疑問を持った人がどの程度組織内に存在して、その人の声がどの程度響いたのか。賛同した人のロジックは正しかったのか。

 消防職員の質は下がり続けています。