【市町村消防の限界】横浜で119番通報受信6分間停止 システム障害【都道府県でも無理】

地域別

 横浜市消防局は15日、119番通報を受け付けたり、指令を行ったりするシステムが何らかの原因で停止し、6分間にわたって通報を受信できない状況が発生したと発表した。システムの保守事業者が原因を調べている。一時停止の間、火災や重篤な救急要請事案の通報は確認されていないという。市消防局によると、停止したのは午後3時5~11分の間。停止する9分前に軽度のシステム障害を知らせる警報が鳴り始め、確認していたところ全回線が一気に停止したという。非常用のバックアップに切り替え、復旧させた。同システムは2016年に導入、今年の3月に2回線が一時停止するシステム障害があったが、全34回線が停止するのは初めて。再度障害が発生した場合に備え、通報を受けて対応する人員を増員して対応している。同日、平中隆局長は「市民の皆さまに大きな不安を与えるものであり、今後このようなことが起こらないよう検証し、再発防止の徹底を図る」とコメントした。

引用元

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システム障害

指令システム

 指令システムについては、全国中で談合やら不正入札やらで問題が起こっているので、多少なりとも関心がある消防士さんも多いのかなぁとは思いますが、119番通報の受診から災害時の無線統制管理、各車両の位置情報の管理や時間管理、過去の災害情報の管理、現場からの映像処理などなど、様々な機能を備えた独自システムです。

 消防以外では使い道のない、一般にはリリースされていないシステムなので、システム会社が開発したものであるのが一般的です。さらに言うと、消防本部や地方自治体と業務契約を行う際に、著作権がシステム会社ではなく市町村に帰属するとか、その逆であるとか、他の自治体に同システムを流用することを禁止するとかいう付帯条項まで付けて契約するのが一般的です。

 となると、エラーチェックは大概の場合ザルです。

 一般リリースされるようなシステムであれば、エラーは徹底的に潰されていき、頻繁にバージョンアップされていきます。

 しかしながら、この指令システムは発見されていないバグが無数に残っている状態でリリースされます。

 システム開発とかに疎い人は分からないかもしれませんが、開発されたシステムには無数のバグが隠れており、リリース前にバグチェックのために何日も何時間も色々な確認を行います。それでも100%のバグを修正することはできないのです。

 ゲームなんかをイメージすると分かりやすいですね。リリースまでに発見できなかったバグの一部は裏技として使用されたりすることもありますね。

 これだけニッチなシステムなので、当然無数のバグが残っている状態でリリースされます。

 自分が勤めていた消防本部でも、バグ修正のための保守点検費用として、毎年多額の予算が計上されていました。安い金額では無かったため、正直、無駄なお金だなぁとは思いましたが、システムの切り替えは機器の入れ替えとセットになり、となると、庁舎そのものの改修なんかも必要になってしまい、無駄な費用を回収することは現実的に不可能な状況でした。

システム障害

 上記のような状況なので、システム障害はいつどの程度の規模で発生するのかは全く読めないのです。先日の富士通が起こしたマイナンバー関連のシステム障害は記憶に新しいものかと思います。

 消防本部の規模が大きくなればなるほど、発注するシステムの規模も大きくなり、その金額も大きくなります。そして、大規模な消防本部にシステムを納品した実績は、企業としてその後のシステム開発や入札に大きな影響を与えることになります。

 システムにどの程度のバグが含まれてしまっているかについては、実際にシステムを使用している消防職員からの聞き取りや助言が必要不可欠です。

 実際の消防職員の使い方を分析したりすることが必要ですが、すべてを検証することはできないので、消防職員が使用方法や負荷状況について言語化してシステム開発会社に伝えて、事前にバグ対策をしておくことが必要です。

 この【言語化】というところについて、非常に高い能力が求められます。

 ユーザーとしての視点だけでは、絶対に足りません。一部の簡単な保守管理も行える程度の知識を持ってユーザーとして使用している人であって、なおかつ高い言語化能力をもっていなければ、それらの助言は大概無意味です。今回のような致命的なバグが内在されている状況でリリースされることになります。

 おそらく、システム会社について損害賠償請求をすることも無いでしょうから、消防本部側にも責任の一端があるという扱いになることでしょう。

 今回の横浜消防については、全国的にトップ3に入るような大規模な消防本部で、管轄人口は370万人を超えています。

 ここまで大規模な消防本部であれば、消防職員の人数も多くなり、他の地方消防よりも優秀な人材があつまっているはずです。

 そのような優秀と言われる人が集まったとしても、今回のようなシステム障害が発生してしまうわけです。

 横浜消防で無理なのであれば、全国中の消防本部でも同じように不可能でしょう。致命的なバグが内在されたシステムを阿保面して使い続けているわけです。 

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市町村消防の限界

横浜市の人口は372万人です。もちろん、市の人口であり、都道府県の人口ではありません。

ちなみに、都道府県単位で見ても、横浜市の人口より多いのは下記9都道府県だけです。

東京都、神奈川県、大阪府、愛知県、埼玉県、千葉県、兵庫県、北海道、福岡県

次に人口の多い静岡県でも、人口は358万人しかおらず、これ以下の府県についてはすべて横浜よりも人口が少ないわけです。

 つまり、横浜という大都市で無理なことであれば、もはやどの市町村単位や広域化された消防本部において適切な指令システムを運用管理することは不可能ってことです。

 さらに言えば、都道府県単位で運用したとしても、可能性があるのは9都道府県だけです。もちろん、可能性があるというだけで、現実には厳しいと思いますね。

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まとめ 消防広域化

 消防の広域化というのは、こういった点でも必要になってくるわけです。

 都道府県単位どころか、人口500万人以上を最低単位にするとか、1000万人以上を最低単位にするとかいう基準で構わない気がしますね。

 消防職員と消防団員の棲み分けもスッキリすると思います。地域密着の消防団員と、広域に活動する消防職員って感じですね。