消防士になると消防学校の初任科という課程に入校します。入校といっても、消防学校は学校法人に定められる学校ではなく、単なる研修所に入寮するかたちとなります。警察学校なんかも同じですね。
こんかい紹介するのは、消防学校以外での1年目です。消防学校卒業後の1年間だとしてご覧ください。(一部の消防本部では、約1年間の現場研修を終えたのちに初任科に入校することとなる場合もありますが、その場合は、入校前の1年間だとしてご覧ください)
AM7:00時頃出勤
勤務時間はAM8:30からとなっていますが、おおよそ1時間以上前に出勤し、先輩方が出勤してくるのを待つこととなります。
待って何をするかと言えば、先輩の昼食や夕食を聞き取ったり、その日に使う予定の資料を机の上に準備したりします。
出勤してくる先輩方一人一人に大きな声で挨拶をし、「本日の昼食と夕食は何にしますか?」とか聞いて回ります。
昼食や夕食を消防署で作っている場合もあり、その場合には昼食か夕食のどちらかが弁当注文というかたちになると思います。
昔と比較して事務量が増えたこともありますが、多少住民の目を気にしているため、昼と夜ともに消防署で調理するケースは減っているようです。勤務時間中に料理をすることが是か非かの問題については、解決していませんので。
AM8:30勤務開始 資機材点検
消防車や救急車のライトや積載している資機材の点検を実施します。時間は30分から1時間程度かけて実施します。資機材が適正に積載されているかや、ホースが規定数積載されているかなど、昨日使用した用紙や救急用のガーゼなどは補充されているかも点検をします。
新人のうちは、積載している資機材の使用方法について詳しくないため、取り扱い訓練も兼ねて実施される場合が多いです。
代表的なものは、チェーンソー、エンジンカッター、3連はしご、空気呼吸器などですね。
最初の数日は先輩から使用方法を教えられ、その後の点検は新人が実施します。その頃先輩は何をしているかというと、遊んでいるわけではなく、新人の点検に漏れが無いかとかを細かくチェックしています。
これは悪い意味ではなく、火災現場に到着して、資機材が使えなかったため逃げ遅れを救助できませんでした。なんてことは許されないため、新人にある程度任せつつも先輩が詳細に点検していく必要があります。
色彩の
AM9:30から11:00訓練
基礎的な訓練を1時間から1時間半程度実施します。体力的に厳しい負担がかかるような訓練が実施されることは稀で、ほとんどの場合、資機材の取り扱い訓練であったり、放水や救助方法の手順を覚えるような訓練となります。
雨が降った場合は屋内での訓練を実施することもありますが、座学による自己学習になることが多いです。屋外での訓練を強行した結果資機材が濡れてしまうと、整備が面倒になるので、現場以外では濡らしたくないということですね。
昼食は弁当の場合には、訓練の合間を見て、弁当屋さんに注文します。
AM11:00~PM1:00 片付けと昼食
訓練後は資機材の片付けを行ったり、先輩からのフィードバックがあったりあします。
「次はもっとこうしていこう」とか「実際の現場では〇〇という事態もあるため、想定しておくと焦らないよ」とか
そして、大切なのが昼食の準備です。
注文して届いた弁当を並べたり、お湯を沸かして、必要な分のお茶や調味料などを準備しておきます。カップラーメン等を食べる人も多いため、そのためのお湯も準備しておく必要があります。
準備が終わったら先輩方に先に食事をしてもらいます。先輩方が食事する間は電話番をしたりして待っていると、50過ぎのお腹が出ている大先輩が来てくれて、「飯食ってきていいよー」なんて声をかけてくれます。
最後に食事をとり、食堂のあと片付けを行います。台拭きや雑巾が溜まった場合には昼のうちに洗濯機を回しておきます。
PM1:00~PM4:00 管内調査
午後は管内を消防車で走行します。木造住宅が密集している危険な地域や、消火栓や防火水槽が不足している地域、駅前の細い道路が密集している地域、新しくできた住宅地、救急車をよく呼ぶ高齢者が住んでいる場所の近く、道路工事などにより交通規制がされている場所の確認など。
火災が発生した場合に危険が高いと思われる場所や活動上の障害が発生しそうな場所について丁寧に確認をしていきます。
※最近飲み会をした保育士さんのいる保育園の前を通ったりする場合も稀にあります。
PM4:00~PM7:00 夕食の支度
夕食の支度をします。いわゆる消防うどんや消防カレーなんてのがメニューの定番です。
20人以上務める大規模な消防署の場合には米を20合以上炊く必要があますし、カレーの量も大鍋に大量につくることになります。
昼食と同様に、先輩方に先に食べてもらい、最後の片付けまで行います。
PM7:00~PM9:00 報告書等の作成 風呂の準備
その日の訓練の内容や管内調査の結果について報告書を作成します。途中に災害があった場合にはそれらに関する報告書も作成していきます。
報告書が多くなった場合には先輩が手伝ってくれることもありますし、ロープの取り扱いや防火服の着装訓練などの個人訓練が必要だとなった場合には、先輩方が報告書をやってくれることも多いです。
そして、先輩方はこの時間から順番にシャワーを浴びるため、浴室の準備をしていきます。足ふきマットを出しておいたり、事前に風呂掃除をしておきます。
先輩方の風呂後には大量の洗濯物が出るので、それらの洗濯も待っています。先輩方の活動服やシャツ、下着を洗濯し、乾燥機があれば乾燥機、無い場合には干していきます。
PM9:00~AM0:00 洗濯の続き 各場所の掃除
先輩方の洗濯物がどんどん出てくるので、洗濯機の回転が間に合わずにしばらくは溜まっていく一方ですので、先輩方の入浴が終わるのを待つこととなります。
序列を気にする先輩も多いため、新人のうちは最後に入浴することとなりますが、浴室が空くまでは、食堂などの掃除をしたり、日中に使った書類を片付けたりして待つこととなります。
AM0:00~AM6:00 仮眠
災害があれば仮眠を中断して現場に向かうこととなりますが、なにもなければ、しっかりと仮眠することができます。
最近では個室の仮眠室も増えているようですが、個室の場合には籠ってしまう人が出てきたり、仮眠時間中の指令音に気が付かずに現場に遅れてしまう人が出てきたりすることに対して問題意識のある消防本部もあるようで、新築の消防署でも大部屋を採用している場合もあります。
深夜のうちに洗濯物を片付ける必要がある場合には、仮眠時間中に何度か起きて、洗濯物の入れ替え等をやる必要があります。
AM6:00~AM8:30 終業準備
8:30の勤務交替に向けて、片付けや掃除、引き継ぎ書・申し送り簿を作成していきます。
7時過ぎには同期の新人が出勤してくるため、掃除や洗濯について終わらなかったところがあれば申し送り、続きをお願いします。例えば雑巾・台拭きの洗濯や夕食で作ったカレーが廃棄出来ないほど残ってしまったなどです。
雑用に対して厳しい先輩がいる場合には雑用帳なるものを作らされて、漏れが無いように管理させられる場合もあります。
まとめ
新人のうちは雑用が多く、消防士としての仕事が出来ないイメージですが、訓練や教育は実施されています。
「新人のうちは雑用ばかりで消防に関することが少なすぎる!」なんて意見をよく聞きますが、消防士として覚えることは、浅く広くでは現場活動で活かすことができないため、ひとつひとつを丁寧に深く理解していく必要があります。そのため、受験勉強のような詰め込みでは役に立ちません。
消防士としての初期のうちは、呼吸をするように身体が動くようになるまで知識を身体に染み込ませる必要があります。そのため、繰り返しが多く雑用ばかりやらされてるイメージになりがちですが、最初の1~2年は消防士としての基本を身体に染み込ませる期間だと覚悟して頑張ってほしいと思います。