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SNSに救助技術訓練を投稿する消防本部に要注意:前時代的な体制が残る組織の見分け方

救助隊 指導会
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危険ワード一覧

種目名説明文
ロープブリッジ渡過高い場所に張ったロープの上を進む訓練です。谷や川を想定し、バランスを取りながら移動することで、高所移動の技術を身につけます。
はしご登はん火災や救助現場を想定し、高い場所に向かってはしごを使って登る訓練です。安全に早く登るための姿勢や動きを習得します。
ロープ応用登はんロープを使って建物や崖を登る技術を学ぶ訓練です。安全器具の使い方や登り方を工夫し、実際の救助現場に備えます。
ほふく救出煙やがれきで視界が悪い場所を、体を低くして進みながら人を助ける訓練です。冷静な判断力と基本動作が問われます。
ロープブリッジ救出ロープを張って空中でけが人などを安全に移動させる訓練です。ロープ操作とバランス感覚が重要です。
引揚救助地下や低い場所にいる人をロープで引き上げて救助する訓練です。滑車などの器具の使い方も学びます。
障害突破壁や狭い通路などの障害物を越える訓練です。力だけでなく、柔軟な体の動きや工夫も必要になります。
技術訓練救助に必要な基本の動きや器具の使い方を練習します。正確で安全な行動を身につけるために、繰り返し行います。
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「ロープブリッジ渡過」や「ほふく救出」を誇示する理由とは?

InstagramやX(旧Twitter)などのSNS上で、消防本部が「ロープブリッジ渡過」「はしご登はん」「ロープ応用登はん」「ほふく救出」などの訓練風景を投稿しているのを見たことがあるでしょうか?さらには「ロープブリッジ救出」「引揚救助」「障害突破」「技術訓練」などの動画を「大会仕様」で撮影し、「訓練の成果」として披露している投稿も少なくありません。

これらの訓練は、一見すると“過酷な現場に備えた努力の証”のように見えます。しかし、その裏側には、現代の災害・救急活動とは乖離した、前時代的な価値観と硬直した組織文化が根強く残っている現実があります。

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救助技術大会への「執着」が意味するもの

これらの種目は、いわゆる「救助技術大会」で採用される競技種目です。大会自体は全国の消防職員の技術向上を目的としたものですが、現在でも多くの消防本部ではこの大会の「選手育成」が目的化し、組織の力を大会に注ぐケースが目立ちます。

問題は、それが現実の救助活動と必ずしも一致しない点にあります。例えば、ロープブリッジを実際の災害現場で使用する機会はごく限られており、訓練の目的が「大会での勝利」になってしまえば、日常業務との乖離が進みます。

そして、こうした大会種目を「映える素材」としてSNSに投稿している消防本部は、大会の実績やパフォーマンスを外部向けのアピール材料にしている可能性が高く、職員の評価軸にもこの大会の成績が反映されがちです。

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SNS投稿が示す「価値観の化石化」

これらの訓練投稿に共通しているのは、「きつい訓練を乗り越える精神力」や「大会出場を誇る文化」を前面に押し出している点です。それは、職員の育成や技術の伝承とは別の次元で、「体力・根性主義」「精神論による組織評価」といった、過去の日本的企業文化が今も色濃く残っていることを意味します。

もし、採用試験に向けて情報収集している皆さんが、特定の消防本部のSNSでそういった投稿ばかりが目立つようであれば、そこは一度立ち止まって考えるべきです。

現代の消防業務では、隊員の安全管理・多様性への配慮・災害対応の科学的分析など、論理的で持続可能な運用が重視される時代に入っています。救助技術大会だけに熱中し、それを外向けに美化する組織は、こうした現代的価値観から取り残されている可能性があるのです。

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消防受験生へのメッセージ:見せかけの“華やかさ”に騙されるな

訓練は重要です。しかしそれは、現場で必要とされるスキルの習得と、隊員の安全性を確保するためのものであるべきです。「見せるための訓練」が横行し、それを組織全体が賞賛するような消防本部は、あなたが長く働くには不適切な環境かもしれません。

採用後、大会要員に選ばれ、通常業務をほとんどできず、大会終了後には燃え尽きたように扱われる若手隊員も少なくありません。しかも、その実績が昇任や評価に直結する構造であれば、そこでは本来あるべき「公平な実力評価」や「組織内の健全なキャリア形成」は困難です。

今の時代、SNSの投稿内容はその消防本部の価値観や体質を映し出す鏡です。「華やかな訓練動画」ではなく、その裏にある「何を重視している組織なのか」を読み解く力を、受験生自身が持たなければなりません。

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