8月13日夜、静岡市中心街の飲食店で火事があり、焼け跡から1人の遺体が見つかりました。死亡したのは30代の消防隊員とみられます。
8月13日午後10時頃、静岡市葵区呉服町の飲食店から出火し、火は店舗を全焼したほか、他の階にも広がり、およそ5時間後に消し止められました。
焼け跡からは1人の遺体が見つかり、死亡したのは消火にあたっていた静岡市消防局・駿河消防署に所属する30代の男性隊員とみられます。
当初、消防はケガ人や逃げ遅れはないとしていましたが、関係者によると男性隊員は火元確認のため、建物内に入ったところ、巻き込まれたとみられます。
男性隊員は人命救助に関する専門的な訓練を積む特別高度救助隊の一員です。
今年6月には、同じ部隊に所属する20代の隊員が、訓練中に高所から転落し一時意識不明の重体となる事故が起きていました。
また、静岡市消防局では2年前に吉田町で起きた工場火災で消火活動にあたっていた消防隊員3人が亡くなっています。
引用元:TBSnews
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消防士の殉職
消防士の殉職は年間10人前後です。多いか少ないかは個人の感覚により異なるので、減給しませんが、建築業界で勤務する職人さんの死亡事故は年間250人くらいとなっています。
統計方法に関しては目的が別であるため、正確性を欠く部分がありますが、消防士と建築業に従事する人の人数が20倍弱の違いがあるとなっています。
つまり、一部データに基づくと、消防士の業務中の死亡事故事案は、建築業よりも少ないって事です。
また、建築業の中には左官や低電圧工事など、死亡事故が少ない業種も含まれているため、高所作業を伴ったり、重機作業と人工作業を並列で行う土木系の工事のみと比較すると、どちらの方が危険な仕事であるかはなんと無く分かると思います。
殉職者を出した組織の責任
消防の現場からいったん離れて考えましょう。
例えば町工場での作業中に職員が機械の誤操作により機械に巻き込まれて死亡した場合にや、高層ビルの建築現場にて足場を踏み外して転落により死亡した場合には、その工場や現場監督に対して多大な非難が寄せられることとなるでしょう。
場合のよっては労働基準監督署から工場に対して業務停止命令や罰金過料、場合によっては工場長や経営者に対して安全配慮義務違反として処罰される場合もあります。
では消防の殉職事案の場合はどうでしょうか。
なぜか消防の殉職事案に対しては「危険な現場でわが身を顧みずに人命救助や消火活動にあたってくれてありがとう!あなたの死を忘れません!」とか「あなたのように命を落とすひとが再発しないように懸命に訓練に励み、安全管理に勤めます!」とかいう意見が寄せられるのです。
先にも記載したとおり、建築業よりも殉職率が低い業種であるにもかかわらず、なぜか死者がたたえられてしまうのです。
一方では死者をないがしろにして関係者が非難されるのに対して、他方では関係者に責任を追及することなく死者を称賛する。
この思考回路はどこから来るのでしょうか。
2年前にも殉職事故
2年前にも殉職者を出しているのがこの消防本部です。
理由を考えないといけませんね。
今回のケースだけに注目すると、死亡した男性隊員は火元確認のために建物内に入ったということです。
つまり、この時点で建物内には逃げ遅れはおらず、危険を冒してまで建物内に入る必要があったとは言えないでしょう。
緊急性が高くない火元の確認であれば、排煙を十分に行いながら照明や自然光により明るさを十分に確保して、徐々に安全な範囲を広げながら建物内に進入していくのがセオリーです。
今すぐに行く必要のないような危険な場所に、危険を冒してまで行く必要があったのでしょうか。
ここで実体験から来る消防あるあるをご紹介します。
消防あるある
消防組織で常識的に認識されているのが、「武勇伝が多いほど出世が早い」「危険な経験が多いほど出世する」「死ぬかと思った体験が出世を後押しする」ということです。
消防長や幹部までの出世となると、別の要素も必要となりますが、上位5%に入って署長になるくらいであれば、上記の武勇伝要素だけでも十分に出世できます。
そのため、進んで危険な現場を求めて危険な活動をする消防士は数多くいます。
現役自体に、「今そこに行かなくても、消火活動に影響ないんじゃないか」と現場で思うことは多々ありましたね。
そしてこの消防本部では、そういった「火災現場で出世のための武勇伝を作る!」という意識が根強いのかもしれません。
本来であれば、この殉職事案に関連した職員は厳正に処分されるべきです。
死亡してしまう職員が発生してしまうほど安全管理のレベルが低い職員に対しては、停職や減給、降格などの処分が適当だとも考えますね。
殉職者が続くような、レベルの低い安全管理や出世のための武勇伝志向は、処分による抑止効果で簡単に止められることでしょう。
今回死亡した職員に対して敬意を払うことだけでは十分ではありません。しっかりと関係者を処分して、再発防止は図れなかったのであれば、再再発防止や再再再発防止を期待したいですね。