福岡市消防吏員A、一般方式7.4倍・SPI方式12.5倍 新設2区分で広がる倍率格差の中身

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福岡市消防局が実施した令和7年度消防吏員A(大学卒業程度)採用試験で、一般方式の競争倍率は7.4倍、同時に新設されたSPI方式は12.5倍となった。同じ「消防吏員A」の採用枠でありながら、選ぶ試験区分によって倍率に5倍近い開きが生じている。

令和7年度から始まった「二本立て」の試験制度

福岡市の消防吏員A採用試験は、令和7年度から「一般方式」と「SPI方式」の選択制になった。一般方式は択一式の教養試験・専門試験を中心とする従来型の試験で、申込受付は4月24日から5月16日、第1次試験は6月15日に福岡市内および東京都内の会場で実施された。一方のSPI方式は、民間企業の採用選考でも使われる適性検査「SPI3」を用いる方式で、5月27日から6月15日の期間内に全国のテストセンター等で受験できる仕組みが取られた。いずれも学歴要件は大学卒業程度で、最終合格者の発表は8月上旬から9月上旬の予定とされていた。

数字で見る二方式の倍率差

福岡市が公表した「令和7年度福岡市職員(上級、消防吏員A、獣医師、保健師)採用試験等実施状況」によると、一般方式は採用予定18人に対し申込者168人、第1次試験の受験者数140人、第1次合格者41人、第2次受験者36人、最終合格者19人で、競争倍率は7.4倍だった。

これに対しSPI方式は、採用予定8人に対し申込者155人、第1次試験の受験者数137人、第1次合格者23人、第2次受験者17人、最終合格者11人で、競争倍率は12.5倍となっている。両方式を単純に合算すると、採用予定は計26人、第1次受験者数は計277人、最終合格者数は計30人で、合算ベースの倍率はおよそ9.2倍となる。

申込者数だけを見れば一般方式168人・SPI方式155人とほぼ並んでいるが、最終合格者数は一般方式19人に対しSPI方式11人にとどまり、採用枠の少なさと相まって倍率の差につながっている。

1次試験と2次試験、差はどちらで生まれているか

倍率の差がどの段階で生じているかを見るため、第1次試験合格者から最終合格者に絞られる割合を比べると、一般方式は41人の1次合格者のうち19人が最終合格しており、その割合はおよそ46%。SPI方式は23人の1次合格者のうち11人が最終合格しており、割合はおよそ48%となる。

つまり、面接等を含む第2次試験を通過する割合自体は両方式でほぼ同水準であり、大きな差が出ているのは「申込者・受験者に対して第1次試験の合格者をどれだけ絞るか」という段階だ。一般方式は受験者140人に対し1次合格41人(約29%)、SPI方式は受験者137人に対し1次合格23人(約17%)で、SPI方式の方が1次試験段階での絞り込みが厳しくなっている。

過去3年間の倍率推移

区分導入前の令和5年度・令和6年度の実施状況もあわせて見ると、消防吏員A全体の倍率は次のように推移している。

  • 令和5年度:採用予定22人、申込304人、第1次受験者229人、最終合格者25人、倍率9.2倍
  • 令和6年度:採用予定22人、申込254人、第1次受験者202人、最終合格者25人、倍率8.1倍
  • 令和7年度:採用予定計26人(一般18人・SPI8人)、申込計323人、第1次受験者計277人、最終合格者計30人、合算倍率約9.2倍

申込者数は令和5年度の304人から令和6年度は254人へ減少した後、令和7年度は一般方式・SPI方式の合算で323人まで回復している。採用予定人員も令和6年度の22人から令和7年度は26人へ増えており、募集枠の拡大と申込者数の回復がほぼ同時期に起きている形だ。

倍率差の背景をどう見るか

一般方式とSPI方式の倍率差について、公式には明確な理由は説明されていない。ただし、採用予定人員が一般方式18人に対しSPI方式8人と少なく設定されている点は、倍率差を生む直接的な要因になっていると見られる。SPI3はテストセンター方式を採れば全国どこからでも短時間で受験できる利便性があり、これが幅広い層からの申込を集めやすくした一方で、合格枠自体が絞られていたため、結果的に倍率を押し上げたという見方もできる。

また、一般方式は択一式の教養・専門試験対策に一定の時間を要するのに対し、SPI方式は民間就職活動でも使われる形式であるため、消防職を第一志望としない層を含め、より幅広い受験者を呼び込みやすい試験だという指摘もある。倍率の高さが直ちに「難易度の高さ」を意味するわけではなく、試験内容の違いや受験者層の広がり方の違いが数字に表れている可能性がある点には注意が必要だろう。

受験区分を選ぶ際に留意したい点

消防吏員Aを目指す受験者にとっては、倍率の数字だけでなく、自分の得意分野に合った試験形式を選ぶことが重要になる。択一式の教養試験・専門試験に慣れている、あるいはじっくり時間をかけて対策を積んできた受験者であれば一般方式が選びやすく、逆に言語・非言語分野を中心とした適性検査に強みがあり、対策期間を短縮したい受験者にはSPI方式が向いていると考えられる。

いずれの方式も採用予定人員が数十人規模にとどまる狭き門であることに変わりはなく、倍率の見かけの差だけで方式を選ぶのではなく、試験内容そのものとの相性を踏まえて検討することが、結果的に合格の可能性を高めることにつながるとみられる。