大阪市での殉職者を出した火災に寄せられるコメントや意見について

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亡くなった消防士をどう見るか

火事で消防士が亡くなると、多くの人が「勇敢だった」「英雄だ」と言います。
その気持ちは分かります。
一生懸命に市民を助けようとして、命を落としたのですから。
でも、ここで考えてほしいことがあります。
英雄だと言って終わりにすると、また同じような事故が起きてしまうということです。

 亡くなった消防士の家族の視点に立ってみてください。消防士である父は勇敢であったと簡単に整理してもらえるでしょうか?そんなことは絶対に無いはずです。

 消防士である父が犠牲になったのは、消防本部の采配ミスであると考えるのは当然のことです。

 たとえば、交通事故で子どもが亡くなったときに「立派な子だった」と言って終わらせてしまったらどうでしょうか?

 また同じ場所で事故が起きるかもしれません。
 本当にやるべきことは「なぜ事故が起きたか」「どうしたら次は助かるか」を考えることです。
消防士の殉職も同じです。

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大阪の火災と京都アニメーション火災

 2025年の大阪の火災では「逃げ遅れがいるか分からない中で建物に入った消防士」を称賛する声が多数寄せられていました。現役消防士や元消防士を自称する人たちからのコメントが非常に目立ちました。
 その中には「消防士なら逃げ遅れ情報が確定または不確定であるならば、逃げ遅れゼロの情報が入るまで内部で救助活動をする!その覚悟をもってやっている!」とか語気を荒げて語っている人もいました。
 該当インタビューでも、「勇敢だ」「すごい」とニュースで言われました。

 一方で、京都アニメーションの火災では、多くの人が本当に中に残されていました。避難経路を断たれ、ただただ火の手が迫ってくるのを為すすべなく待った人もいたことでしょう。
 それでも、現場にいた消防士は、燃えている建物の中に入るという決断をしませんでした。これは消防の戦術です。
 そのとき、一部では「なぜ入らなかったのか」と言われたのです。

ここに大きな矛盾があります。
大阪では「入ったから勇敢」、京都では「入れなかったから臆病」…
でもこれはまちがった考え方です。

 火事ごとに状況はまったく違うのです。
火の強さ、建物の構造、煙の広がり方…。
「入れたかどうか」だけで勇敢か臆病かを決めるのは、現場を知らない人、消防士としての適性を著しく欠いている人の単純な考えにすぎません。

 先に紹介した語気を荒げて語った消防士の理論からすれば、「京都アニメーション火災の対応に当たった消防士たちは、無能で臆病者であった」ということになってしまいます。

 これは絶対に間違っています。

 一般市民が亡くなる原因は、火災そのものです。
 消防士が亡くなる原因は、消防の戦術に依存します。

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本当に考えるべきこと

消防士が殉職すると、「火事そのものをなくそう」と言う人がいます。
もちろん火事を減らすことは大切です。
でも、それと消防士の殉職は別の問題です。

たとえるなら、こうです。
 もし警察官が、包丁を持った犯人に刺されて亡くなったとします。
 そのときに「包丁を売らないようにしよう」と考えるのはおかしいですよね。
 やるべきことは「どうやって安全に犯人を取り押さえるか」「どんな装備が必要か」を考えることです。

 残念ながら、火災も犯罪も無くすことはできません。
無くすことはできない脅威に対して準備するのが警察官や消防士であるべきです。

消防士の場合も同じです。
やるべきことは殉職しないための戦い方や安全対策を考えることなのです。

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英雄より大事なこと

「命をかけて中に入るのが立派だ」と言われると、
「無理をしてでも入らなければならない」と思ってしまいます。
でも、その考え方こそが殉職を生みます。

本当に大事なのは、【生きて帰ること】そして【生きて帰すこと】です。
 実働隊員は自分自身が生きて帰ること、現場指揮者は活動する全実働隊員を生きて帰すこと、これは責務です。理想論ではありません。
 もしも理想を付け加えるのであれば、消防士以外の誰も犠牲にならずに
全員救出することです。

 消防士が生きて帰ってこそ、市民を守り続けられるのです。
 亡くなってしまったら、その後の火事ではもう誰も助けられません。

 勇敢さよりも、生きて消防署に戻ること、生きて消防署に戻らせることを大切にしなければなりません。

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次にやるべきこと

では、どうすればいいのか?
ポイントは次のようなことです。

  • 火の強さや建物の条件をしっかり判断する訓練をする
  • 「入らない」という判断を、臆病ではなく正しい判断として認める
  • 装備ややり方を、隊員の命を守る視点から見直す
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まとめ

消防士が亡くなったとき、ただ「英雄だった」と言うだけでは意味がありません。
それではまた同じような殉職が起きます。

本当にやるべきことは、どうすれば死なずにすむかを考え、訓練やルールに反映させることです。

※この文章は一度作成したものを、元中学校教諭に簡単な添削を受け、「中学生レベルの読解力」でも理解できる程度の構成にしています。