「服務規律の確保」は「さーせーん!」と何が違うのか──消防不祥事に見るカラ返事の常套句

四国地方
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 香川県仲多度南部消防組合消防本部で、酒気帯び運転をした消防士長が交通事故を起こし、懲戒免職処分となった。この事件自体も深刻だが、問題はその後の消防本部のコメントにある。

「服務規律の確保や法令順守の徹底など、信頼回復に努める」

一見、責任を認めて再発防止に努めるように見えるこの文言。しかし、そこに込められた具体的な意味や責任の所在は、実際のところほとんど伝わってこない。これはもはや「さーせーん!」と同レベルの、気持ちのないカラ返事ではないかという疑問が浮かぶ。


■言葉を使えば謝ったことになる、という倒錯

「服務規律の確保」や「法令順守の徹底」といった表現は、もはや謝罪の儀式化である。意味は不明瞭、内容は空疎。市民が聞いているのは、「どこで何が問題だったのか」「なぜ防げなかったのか」「次にどう変えるのか」だ。

にもかかわらず、出てくるのは抽象語のオンパレード。これは、本音では責任をとる気がないのに、表向きだけ取り繕おうとする時の典型的な言語運用である。


■服務規律と法令順守の“重複”と“逃げ”

「服務規律の確保」と「法令順守の徹底」は、ほぼ同じ意味を持つ。服務規律にはすでに法令順守が含まれており、わざわざ並べる意味はない。にもかかわらず、あえて2つを並べて言うことで、「何か言った感」だけを演出している

これは、言葉の水増しによって責任をあいまいにし、説明責任を回避する典型的な話法だ。


■信頼は「言ったか」ではなく「どう変わるか」で決まる

市民が求めているのは、責任の押し付け合いやお決まりの用語ではなく、実際に組織がどう変わるかである。「服務規律を守らせます」と言う前に、「これまで何ができていなかったのか」を正直に語るべきだ。

それをせずに、「それっぽい単語を並べておけば大丈夫」という発想では、信頼など回復するわけがない。


言葉を使えば済む、そんな態度はもう通用しない。
「服務規律の確保」──それは、責任ある組織の発言ではなく、ただの“さーせーん!”にすぎない。