救急救命士の「独断」特定行為、その背景に潜む組織の闇

消防ニュース
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医師の指示なき特定行為、救命士の越権か、組織の黙認か

 奈良県広域消防組合で発生した、救急救命士が医師の指示を受けずに特定行為を行った事案。傷病者の容体が良好であったことが不幸中の幸いと言えるが、この行為は医療行為の根幹を揺るがす重大な問題である。救急救命士は、医師の指示のもとで特定行為を行うことが法律で定められている。今回のケースでは、その法的枠組みが完全に無視された。

 医師の指示を必要とするのは、医療行為が高度な専門性を伴い、患者の容態を正確に把握し、適切な処置を選択する必要があるからだ。医師は、長年の経験と知識に基づき、患者の全体像を把握し、リスクと利益を天秤にかけて判断を下す。救急救命士は、その指示に従い、迅速かつ的確に処置を行うことで、患者の救命に貢献する。

 しかし、今回のケースでは、救急救命士が自らの判断で特定行為を行った。あたかも、この違法行為により助かったかのような書きぶりであるが、組織全体として違法行為を容認する風土なのであろう。救命士養成所で何を学んだのか疑問である。なぜ医師の指示が必要なのか、その意味を理解していれば、このような行為に及ぶはずがない。

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組織の隠蔽体質、再発防止策は形骸化か

 今回の事案に対し、消防組織はどのような対応を取るのだろうか。過去の事例を見ても、組織は不祥事を隠蔽し、内部で処理しようとする傾向がある。再発防止策を講じると言いつつも、具体的な改善策が実行された例は少ない。

 今回のケースも、組織は「傷病者の容態が良好であった」ことを強調し、事態の矮小化を図るのではないか。しかし、法的逸脱は決して許されるものではない。組織は、今回の事案を真摯に受け止め、徹底的な原因究明と再発防止策の策定を行う必要がある。

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救命士の倫理観欠如、組織の責任は重大

 今回の事案で最も問われるべきは、救急救命士の倫理観の欠如である。患者の命を預かる医療従事者として、法を遵守し、常に患者の安全を最優先に考えるべきだ。しかし、今回のケースでは、救急救命士が自らの判断を優先し、患者の安全を軽視したと言わざるを得ない。

 このような倫理観の欠如は、個人の問題にとどまらず、組織全体の責任でもある。組織は、救急救命士に対し、倫理教育を徹底し、プロ意識を高める必要がある。また、組織全体で法令遵守の意識を共有し、違反行為を許さない風土を醸成する必要がある。

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市民の信頼失墜、組織の信頼回復は可能か

 今回の事案は、市民の消防組織に対する信頼を大きく損なうものである。市民は、救急医療に対し、絶対的な安全と安心を求めている。しかし、今回のケースは、その期待を裏切るものであった。

 組織は、市民の信頼回復に向け、全力を尽くす必要がある。そのためには、情報公開を徹底し、透明性を確保することが不可欠だ。また、再発防止策を具体的に示し、実行することで、組織の信頼回復に努める必要がある。

 今回の救急救命士の行為は、組織の倫理観の欠如、隠蔽体質、そして市民の信頼失墜を招いた。組織は、この事態を真摯に受け止め、抜本的な改革を行う必要がある。