新潟市消防局が公表している職員採用試験の実施状況によると、消防士採用試験(高校卒業程度)の倍率は、2023年度(令和5年度)の9.4倍から2025年度(令和7年度)には11.3倍まで上昇した。一方、同じ年度の大学卒業程度区分の倍率は7.8倍にとどまっている。新潟市が公開している過去3年分のデータから、消防士採用試験の倍率の推移と、高卒程度・大卒程度という試験区分による差の背景を整理する。
高校卒業程度は3年連続で高倍率が続く
新潟市消防局の高校卒業程度(消防士)試験の実施状況は、次のように推移している。
- 2023年度:採用予定7名程度、申込者122名、最終合格者13名、倍率約9.4倍
- 2024年度:採用予定10名程度、申込者121名、最終合格者11名、倍率約11.0倍
- 2025年度:採用予定10名程度、申込者102名、最終合格者9名、倍率約11.3倍
申込者数はこの3年でやや減少しているものの、最終合格者数もあわせて絞られているため、倍率としては9倍台から11倍台へとむしろ上昇している。採用予定数を10名程度に据え置いた2024年度・2025年度も、実際の最終合格者は9〜11名で採用予定数を下回る水準にとどまっており、高校卒業程度区分は一貫して狭き門となっている。
大学卒業程度は区分の統合で数字の姿が変わった
大学卒業程度区分は、2023年度・2024年度には「消防士A」「消防士B」の2区分に分かれていたが、2025年度には1つの区分に統合されている点が特徴的だ。
- 2023年度:消防士A(採用予定7名程度)申込者82名・最終合格者15名で倍率約5.5倍、消防士B(採用予定7名程度)申込者32名・最終合格者6名で倍率約5.3倍
- 2024年度:消防士A(採用予定10名程度)申込者63名・最終合格者12名で倍率約5.3倍、消防士B(採用予定9名程度)申込者23名・最終合格者9名で倍率約2.6倍
- 2025年度:大学卒業程度(採用予定10名程度)申込者78名・最終合格者10名で倍率約7.8倍
2024年度まで2区分に分散していた応募者が、2025年度は1つの区分に集約された形になり、倍率も単純比較はできないものの、2024年度の2区分(5.3倍・2.6倍)と比べて2025年度の一本化後(7.8倍)の方が高い水準になっている。
一次・二次試験の各段階で見る絞り込みの実態
高校卒業程度区分について、試験段階ごとの人数の推移を2023年度と2025年度で比べると、どの段階で受験者が絞られているかが見えてくる。
2023年度は、教養試験の受験者122名のうち103名が合格し、その後の体力検査には80名が臨んで77名が1次試験合格となった。続く2次試験(面接等)には37名が進み、最終合格は13名だった。教養試験から体力検査の間で受験者が大きく減っているのは、教養試験合格後の辞退者が一定数いたためとみられる。
2025年度は、教養試験受験者88名のうち77名が合格し、体力検査には76名が臨んでほぼ全員が1次試験を通過した。一方で2次試験には23名しか進んでおらず、最終合格は9名にとどまる。1次試験合格者76名に対し2次試験受験者が23名という数字からは、1次試験合格後の時点でかなりの辞退があったことがうかがえる。
いずれの年度も、教養試験・体力検査を通過した後の2次試験(面接)段階で最終的な絞り込みが行われており、倍率の数字以上に、面接段階での評価が合否を大きく左右する構造になっていると言える。
高卒・大卒の倍率差が示すもの
3年分のデータを通じて共通しているのは、高校卒業程度区分の倍率が、大学卒業程度区分の倍率を一貫して上回っている点である。2025年度でみると、高校卒業程度が11.3倍であるのに対し、大学卒業程度は7.8倍と、3ポイント以上の差がついている。
大学卒業程度区分は、大卒者が消防士以外にも他の公務員試験や民間就職など複数の進路を同時に検討できる立場にあるのに対し、高校卒業程度区分を受験する層は地元での安定した職としての消防士への志望度が相対的に高く、応募が集中しやすいと見られる。また、大学卒業程度区分では採用予定数が2023年度の7名程度から2024年度以降は10名程度へと拡大しており、募集枠の広がりが倍率を押し下げる方向に働いた可能性もある。
応募者数と募集枠のバランスから見える背景
全国的に消防士採用試験の受験者数は減少傾向にあるとされる中、新潟市消防局の高校卒業程度区分では、3年間で申込者数が122名→121名→102名と緩やかな減少にとどまっており、地域における消防士人気は比較的堅調に推移していると見られる。
一方で、大学卒業程度区分を2025年度に1区分へ統合した背景には、2024年度までA・Bの2区分に応募者が分散し、区分ごとの採用予定数と実際の応募状況にばらつきが生じていたことへの対応があったのではないか、という見方もできる。区分を一本化したことで、大学卒業程度としての倍率がまとまった数字で示されるようになった点は、受験者にとっても比較しやすい情報になったといえる。
まとめ
新潟市消防局の消防士採用試験は、高校卒業程度区分で9倍台から11倍台への上昇が続く一方、大学卒業程度区分は試験区分の再編もあって倍率の見え方が変化している。いずれの区分でも、採用予定数に対して最終合格者数が下回る年度が多く、決して易しい試験ではないことがデータからうかがえる。受験を検討する場合は、単年度の倍率だけでなく、区分ごとの過去数年の推移や採用予定数の変化もあわせて確認しておくことが望ましいだろう。
