愛知県江南市消防本部の救急車が病院に患者を送った帰りに、同乗していた20代の女性研修医から私的な要望を受け、本来の帰路を外れて名古屋市内の駅付近まで送っていたことが21日、同本部への取材で分かった。同本部は「医師の要望によるものだったが、誤った判断だった」としている。
同本部によると、16日午後5時20分ごろ、江南厚生病院(同県江南市)から患者の病院間搬送の要請が入ったため、この病院の研修医と患者を救急車に乗せ、同県長久手市の別の病院に搬送した。
午後6時40分ごろに江南厚生病院に戻るため出発した後、救急車内で研修医から「私用があるので名古屋駅か伏見駅で降ろしてほしい」との要望があった。救急隊側は、大きく回り道する必要があったため拒否。だが最終的に本来の帰路に近い名古屋市内の藤が丘駅付近で降ろしたという。
引用元:産経新聞
帰り道の救急車の業務
まず大前提として、救急業務の管轄の範囲は市町村単位が原則です。
現在は、消防活動の広域化等により、市町村を跨いでより広い範囲で救急業務を実施している場合もありますが、今回問題となった江南市消防本部は広域化しておらず、市内のみで救急活動をしているわけです。
そして今回のケースでは、管轄の江南市ある病院から、市外(長久手市)にある病院までの病院間搬送です。
そしてこの2市の位置関係はこんな感じです。
隣接市ではないですね。
そもそも、こんなに離れた病院への病院間搬送を救急車で実施する必要があったのかは疑問ですが、今回とは話がズレるので置いておきましょう。
帰り道の救急車の業務
本題に戻りますが、救急車は管轄する市域外ではアウトオブサービスです。
万が一、帰り道の管轄市域外で事故や急病人を発見してしまった場合には、応急処置を実施するとともに、その地域を管轄する消防本部に連絡して、別の救急車を呼ぶことになります。
今回のケースであると、帰り道の大半は回送中となるわけです。
今回途中下車した医師についても、江南市外の名古屋市で降りているため、稼働中の救急車を私的利用したのかというと、微妙なラインですね。
帰り道の高速道路利用
救急車が管轄市域外の病院に搬送するケースは少なくありませんが、遠くの病院に搬送する場合であっても、基本的には隣接する病院までです。
高速道路を利用してまで搬送することは多くありません。
冷静に考えれば分かると思いますが、高速道路を利用してまで搬送する必要がある傷病者とはいったいどんな人なのでしょうか?相応の緊急性があるのであれば、例えばヘリなどの別の手段で搬送することや、近隣の病院で最低限の処置をして、安定したうえで別の病院に移送することが望ましいと思いませんか?
そして、高速道路の利用については、各道路管理団体の協力のもとに、無償利用を認めてもらっているという状況です。
団体によって違いはありますが、原則、緊急時に限って無償利用を認めている場合が大半であり、帰路については、無償利用での利用を認めていません。
帰路の無償利用が認められていない場合には、当然正規の料金を支払う必要があります。
支払方法は原則公費からの支出となりますが、意外と支出手続きが難しい費用となります。
交通費として支払うのか、道路を使用した対価とみなし使用料として支払うのか。
そして、利用時払いなのか後日払いなのか。
現金なのかカード払いなのか。
そもそも予算上必要な経費として認められるのかなど。
救急車は特別だ!とかいう頭の悪い人も多いかと思います。
救急車は1秒でも早く戻ってくる必要があるのだから、高速道路の利用は無条件で認めて、その使用料も予算化するべきだという頭の悪い人ですね。
しかし、常識的に考えれば、基本的に全ての公務員は必要に応じて適切に存在しているというのが原則的な建前です。適切で効率的な勤務場所に速やかに復帰することが原則であることは、救急隊に限った話ではありません。
事実、訓練やイベントのために救急車を使用不能状態で置いておくことは多くあります。
状況の推測
この件が公になった理由として推測されるのは2通りです。
1 同乗した医師の感じが悪く、公表する必要は無かったが、嫌がらせのために公表した。
2 医師下車時に目撃されたことにより、問い合わせが複数あった。今後消防側の非を問われないようにするために先手を打った。
まとめ
毎日毎日低レベルな消防不祥事のニュースが流れてきて、消防職員のレベルの低さにがっかりしますね。