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繰り返される不祥事──消防組織の危機管理意識の欠如

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飲酒運転という重大な背信行為 ​

 2025年4月18日深夜、宮崎市消防局の職員が飲酒後に自家用車を運転し、物損事故を起こした。​当該職員は歓送迎会で飲酒し、家族の送迎で帰宅した後、自ら車を運転し、駐車場や店舗敷地内で事故を起こしたとされる。​この行為は、消防職員としての自覚と責任感の欠如を示すものであり、極めて遺憾である。

 消防職員は、市民の生命と財産を守るという重大な使命を担っている。​その職務には、高い倫理観と危機管理意識が求められる。​しかし、今回のような飲酒運転という重大な法令違反を犯すことは、その信頼を根底から揺るがす行為である。​

 宮崎市消防局は、今後の対応について「警察の捜査等の動向を注視し、事実関係を明らかにしたうえで、厳正に対処してまいります」としているが、​このような事案が発生したこと自体、組織としての危機管理体制に疑問を抱かざるを得ない。

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処分の先送りと組織の甘さ

 宮崎市消防局のこの飲酒運転事案に対し、組織としての処分は未だに確定していない。現在は「警察の捜査結果を待っている」としているが、これは**あまりにも不自然な“時間稼ぎ”**に見えてならない。

 そもそも、飲酒運転というのは一般社会においても重い犯罪行為であり、企業や自治体の処分基準でも厳格な処罰が科されるのが通例である。特に、公務員であり市民の模範であるべき消防職員が、事故を伴う飲酒運転を行ったのであれば、その時点で「免職」が当然の処分であるべきだ。

 宮崎市の懲戒処分基準が公表されていないことも不透明性に拍車をかけている。だが、他自治体の例を見れば、飲酒運転+物損事故の場合、「免職または停職」とするケースが多数であることからも、この事案に対しての“曖昧な保留”は説明がつかない。

 そして、仮にこのまま処分を引き延ばすのであれば、何らかの“意図的な利益供与”が目的ではないかという疑念を持たれても仕方がない。

 処分を保留することで得られる“猶予期間”は、職員にとって非常に都合の良いものである。たとえば公務員であるうちに、低金利の住宅ローンを通してしまうことができる。公務員しか入れないような団体割引の生命保険への加入、公務員向けのクレジットカード発行、公的機関を通じた資格取得・講習受講など──いずれも「現職であるうち」にしか享受できない特典が山ほどある。

 このような特典の“最後の駆け込み”を可能にするために、組織ぐるみで処分を先送りにしているとしたら──それは公益を守るべき公的機関が、明確に公益を損ねているという重大な背信行為である。

 「処分は慎重に行う」という名の下で、本人が反省する機会を与えるかのように見せかけつつ、実際には“現職の権利を最大限に活用させてから辞めさせる”という組織的な姑息さ。これが事実でないと言える材料が、今のところ宮崎市消防局からは何一つ示されていない。

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消防という組織が抱える構造的腐敗

 今回の宮崎市消防局職員による飲酒運転は、個人の問題では済まされない。これは、腐敗した組織が生み出した必然的な結果だと断言せざるを得ない。

 消防職員は、高い倫理観と危機対応能力が求められる職種であるはずだ。火災現場での即時判断、災害時の冷静な対応、緊急走行時の高度な運転技術──それら全てに共通するのは、「最悪の事態を想定した行動」ができるか否かである。

 しかし、そんな職業に従事している人間が、「飲酒後に運転しよう」という思考に至ってしまう現実。これは、もはや個人の資質ではなく、組織そのものの規律と文化に大きな欠陥があると見るべきだ。

 宮崎市消防局が今回の件を“本人からの申告”で把握したという点も、非常に象徴的である。言い換えれば、事故がなければ、組織として何も把握せず、本人の申告がなければ、隠し通すことも可能だったということだ。つまり、“モラル”ではなく“偶然”に頼って初動対応しているという、極めて危険な状態にある。

 さらに言えば、不祥事が発生した際の「責任の所在」がいつも曖昧だ。会見で謝罪はしても、明確な処分は先送り。組織全体での再発防止策も、マニュアルを見直す程度の軽い対処にとどまり、本質的な変革は常に見送られる。

 このような組織体質は、残念ながら消防に限った話ではない。が、それでもなお、命を扱うという特別な責任を持つ消防だからこそ、腐敗は許されないはずなのだ。

 今回の事案をきっかけに、「このままではまずい」と気づける組織であってほしい。しかし、過去の事例を見れば、それは難しいだろう。今回もまた、SNSは通常通り更新され、広報紙も予定通り配布されるだろう。そして、不祥事だけが何事もなかったかのように過去へと押し流される──いつもの光景が、また繰り返されるだけである。

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