消防幹部の掲示板投稿に見る組織の異常性とモラル欠如

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不適切表現の使用、それ自体よりも深刻な組織の問題

 熊本県の八代広域消防本部において、幹部職員が内部掲示板に「同情するなら血をくれ」といった表現で献血を呼びかけた件が報じられた。さらには「ヌイてすっきりしよう」など、通常の公共機関では到底容認されない表現もあったとされる。

 これらの発言がなされた場所は、部外者の目に触れることのない、約250人の職員だけが閲覧できるクローズドな内部掲示板であった。

 このような閉鎖された空間であれば、ある程度自由な意見交換がなされるのは自然な流れかもしれない。だが、問題は単なる発言の不適切さにとどまらない。特に「ヌイてすっきりしよう」という表現を用いたのが、幹部職員、つまり組織の指導的立場にある者であったという点にこそ、深刻な問題がある。

 一般的に、10代や20代の若者が勢い余って放つ下品な発言とは異なり、社会経験を積んだ50代後半と見られる幹部職員の発言は、組織全体の規律や価値観を強く反映している。


幹部職員の質が問われる職場の風土

 幹部職員は、組織内においてモラルの模範でなければならない。特に公共機関である消防本部においては、住民の生命と財産を守るという重大な責任を負っている。そのような組織で、幹部が率先して公序良俗に反する表現を用いるというのは、倫理的破綻と言わざるを得ない。

 八代広域消防本部には、女性職員が11人在籍していることが報じられている。

 にもかかわらず、こうした発言が掲示板に投稿され、それが容認されていたという事実は、組織内部において健全な職場環境の形成がなされていないことを示している。

 仮に誰かが不快感を表明しようにも、それが許されない、もしくは無視されるような空気が蔓延している可能性も否定できない。


消防本部に蔓延するモラルの欠如と不祥事体質

 消防本部に関する不祥事は、全国的に後を絶たない。飲酒運転、セクハラ、職場内いじめ、さらには放火事件まで、あらゆる形態の問題が報じられてきた。

 こうした現象は、個々の職員の資質によるものではなく、むしろ組織全体の風土、つまり体質の問題と見るべきである。

 このような投稿を行った幹部職員に対し、組織として毅然とした処分を下すことができない、またはしないという対応がなされるのであれば、同様の問題は今後も繰り返されるだろう。な

 ぜなら、それは幹部職員の価値観がそのまま組織文化に反映されるからだ。

 掲示板がクローズドな場であったとしても、その場における発言は職場環境の指標のひとつである。仮に250人という小規模な閉じられた空間であっても、そこに健全な倫理観が共有されていなければ、外部に対して責任ある行動がとれるはずがない。


公共機関としての本質的な信頼の喪失

 本件は、単なる不適切発言の問題ではない。住民の安全を担う公共機関の根幹が問われるべき問題である。

 住民は、命にかかわる緊急事態の際、迷うことなく119番通報を行う。しかし、その先に待つ組織が、倫理意識に乏しい、内輪のノリでふざけ合うような職場であるとしたら、その信頼はどのようにして維持されるのだろうか。

 報道されていないが、多くの消防本部が同様の風土を内包している可能性は高い。現場で見聞きされる事象やSNSなどで散見される職員の態度は、日常的に倫理的な教育や管理が機能していないことを示唆している。

 消防職員である以前に、社会人としての常識や倫理観を持つことが必要不可欠であるという、ごく当たり前のことが、今の消防組織では希薄になっている。

 消防という職業の特殊性や危険性を盾にして、外部からの批判を退けるのではなく、自らが公人であることを強く自覚し、行動や言動のひとつひとつに責任を持つ姿勢が求められている。本件を通して明らかになったのは、八代広域消防本部に限らず、全国の消防本部が組織として抱える倫理的脆弱性である。