総務省消防庁は8日、マイナンバーカードの健康保険証機能を活用し、救急搬送時に傷病者らの受診歴や薬の処方歴などを取得する実証実験を、10月から前橋市消防局や熊本市消防局など6消防で実施すると発表した。救急隊がオンラインで入院や通院の情報を速やかに確認し、適切な搬送先の決定と効果的な治療につなげるのが狙い。
実験は、病院や薬局が受診歴、健康診断結果、処方歴をオンラインで共有しているシステムを利用する。事前に権限を得た救急救命士が、健康保険証として登録したマイナンバーカードを所持しているかどうかを本人に確認。その場で読み取り、受診歴などを確認し搬送先を決める。
引用元:中国新聞
概要
この件については、現場の救急隊からの要望意見によって実証実験が行われているのではなく、完全にトップダウンなり、国家主導の事業ですね。
マイナンバー制度を導入して全国民に番号を付与しましたが、まだまだ活用が進んでいないのが現状です。そもそも、国民が個人として活用するものではなく、国の機関や地方自治体の機関が効率よく漏れなく行政サービスを提供するための手段として導入されたのが経緯となります。
個人番号について国民の理解度はまだまだ高くなく、マイナンバーカードの普及率も目標には届いていないのが現状です。
そして消防庁。
消防庁は総務省の機関であり、総務省消防庁とも呼ばれます。
つまり、マイナンバー制度を前進させたい総務省の傘下にある消防庁は、現場のことは度外視してマイナンバーの活用を進めざるをえないのです。
公務員の守秘義務と個人番号事務
今回の記事にある実証実験では、事前に権限を得た救急救命士が、健康保険証として登録したマイナンバーカードをの場で読み取り、受診歴などを確認し搬送先を決めるとなっています。
番号法は番号の利用と利用により得られた情報の利用についても厳しく制限されています。
確実な判断や運用については、別途定めがあるとは思うのですが、一般的な個人番号事務に照らし合わせると、
事前に権限を得たとは、番号を利用することと受診歴などの個人情報を取得することの2点についての権限を指しているものと考えられます。
個人番号については公務員であれば誰でも使用できるものではなく、事前に利用について権限のある首長(専決規定が設けられている場合もあります)などに承認を受け、権限を付与されることとなります。つまり、一部の許された職員のみが個人番号に触れ、その利用と利用による個人情報の取得が許されるのです。
権限のない救急隊員
上記の場合だと、事前に権限を得た救急救命士は、番号利用により得られた情報について権限を有さない救急隊員にその情報を漏らすことは許されないとも考えられます。
そのため、事前に権限を得た救急救命士がその他の救急隊員に対して伝えられるのは、搬送先に関する情報だけです。
当然ですが、書類に残す場合も要注意です。番号利用に関する権限を付与された職員は、それらの利用により得られた情報や番号に関する情報について公文書として残す場合には、番号利用に関する権限を有さないものの目に触れる可能性のある方法での保存や起案は許されません。
電子文書の場合でも紙文書の場合でも同じです。一般の救急記録に関する書類と一緒にしておくと、他の権限を有さない消防職員の目に触れることとなり、番号法に抵触する可能性もあるものと考えられます。
まとめ
こういった公報を見ると、全国の消防職員がいかに馬鹿にされているのかを痛感します。
とはいえ、99.9%の消防職員は、自分たちが馬鹿にされていることに気が付いていないのが現状であり、問題は発生しません。
現場にとっては利益よりも不利益の方が圧倒的に大きい今回の導入とその導入検証です。
そもそも基礎疾患などがあり病院にかかっている場合には、緊急時の対応などについて主治医から説明があるはずです。そのため、今回の活用はほぼ無意味なんです。
基礎疾患がある人が偶然交通事故に遭い救急搬送されることになった場合については、確かに活用されそうな気がしてしまいますが、実際には意識のある傷病者であって、基礎疾患の内容にかかる投薬情報については、確実に聴取により知ることが可能です。
現状ですら、救急救命士の負担が大きくなってきて、救急車内に積載する必要のある救急資機材の種類も数も膨大なものとなっています。
この期に及んで、さらに負担を増やそうとするのは誰なんでしょうかね。
つまり全部無駄ってことです。考えても無駄でしょうか?