【ばれる前に逃げろ】在職中の非違行為に対する処置について【退職金の貰い逃げ】

現場の本音

 消防士を始めとする公務員の不祥事と言えば、セットになるのが処分です。代表的な処分は、懲戒免職、停職、減給、戒告、訓告といったものです。

 しかし、これらは全て対象となる非違行為をした職員が在職していることが前提です。

 既に退職している職員に対して停職や減給といった制裁を科すことは当然出来ません。

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退職金の貰い逃げ

例示
 在職中に多数の公文書の偽造を実施した。個人的な金銭的利益を追求したものでもなければ、この者の行為により金銭的な不利益を被った者はいない。
 業務多忙により、勤務時間内に処理が終わらないことが続き疲弊しきっていたところで、公文書の偽造改編により、負担を軽減する方法を思いつき実行した。この行為は一人で行っていた。
 数年後に親の介護を理由にして依願退職し、退職金を受け取った。

 数か月後に業務を引き継いだ別の担当者が公文書の偽造に気が付き組織的に調査したところ、既に退職済みの職員による行為であることが判明した。その者に連絡したところ、行為を認めた。

 内規で定める懲戒処分の指針によると、公文書偽造は懲戒免職の処分となると定めているが、既に職員が退職済みであるため、懲戒処分の発令をすることが出来ない。

 在職中に遡って懲戒処分を発令することは可能なのか。といったところが争点となります。

 どうでしょうか?ほかの犯罪などにしようかとも思ったのですが、警察に逮捕されるような官製談合や公金の不正使用となると、話が複雑になるので、少々特殊ではありますが、上記の例をお示しさせていただきました。

懲戒処分を遡って発令することは出来るのか

 答えはノーです。
 遡って懲戒処分の発令をすることは出来ません。免職、停職、減給、戒告、訓告、文書注意、口頭注意すべて不可能です。

 例えば停職の場合、依願退職の1箇月前に遡って【停職1箇月】の発令をすることが許された場合には、既に勤務をした1箇月に対して停職を発令することとなり、労働に対する対価の発生が問題となってしまいます。
 労働が無ければ対価も無いものとして停職の要件を満たしますが、既に勤務をしていた期間について停職であったという取り扱いになると、【働かせはしたけれど、お金は払わない。】という奴隷制度のような取り扱いが許されることとなります。制裁的な遡及停職が蔓延したら、恐ろしい世界になりそうですね。

 免職の場合はちょっと違いますね。本人が家庭の都合で退職したという退職理由を、本人の非違行為により組織が免職の処分をしたと書き換えるだけという取り扱いに見えます。

 よく誤解されることですが、懲戒免職=退職金が出ないといわけではありません
 人事関連業務を担当していた人で、よく勉強している人であれば知っている人もいるかもしれませんが、懲戒処分を決定する集団とは別に、懲戒免職の決定を受けて退職金を支払うか否かを決定する集団が存在します。
 ほとんどの場合、集団の名称こそ違うものの、構成員は同じです。

 依願退職を受理して承認した結果を受けて、退職金の支給を決定する。といった手続きであったものを、懲戒免職であったことに遡及変更することを受けて、退職金を支給しないことを決定する。これは不可能なんです。

退職金は返納させることが出来る

 懲戒処分を遡及して発令することは出来ないけれど、既に支払い済みの退職金について返還・返納をさせることは可能です。

 基本的には、条例規則にその旨の記載があるはずです。
 退職手当に関する条例規則は、市町村で管理する条例のなかでもトップクラスで理解しにくいものとなっていますので、消防職員のレベルで理解するのはかなり難しいかもしれません。

 退職手当の返還を求めることが出来る条件について記載があります。【在職中に発覚していれば懲戒免職相当であると判断されるような非違行為等があった場合】のような意味の記載があるはずです。

 先の例では、公文書偽造により懲戒処分相当の非違行為であることは間違いないので、退職金の返還を求めることは可能です。

 ただし、金額が大きく、住宅ローンの一括返済やリフォームに使われてしまっているケースも多くあります。

 この場合には、債券差し押さえなどの手続きにより、預金口座などを差し押さえる場合もありますね。

要するに、逃げ得はできないということですね。

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死亡退職の場合

 上記のケースで、公文書偽造をした職員が発覚前に死亡により退職した場合はどうなるのでしょうか。

遺族に直接支給される

 公務員の退職金に関する条例規則には、職員が死亡により退職したケースについても多数の定めがあります。

 職員が死亡した場合、民法の規定に準じた形で支給順位が定められており、条文に定められた者に対して、死亡退職金という形で支払われます。
 ちなみに、その死亡退職金は相続財産とは別に取り扱われることが一般的で、異なった計算方法により税金が課税されます。

 

遺族に対して返還請求

 死亡退職した職員の非違行為が明らかになったことにより、懲戒免職相当であると判断された場合には、存命の場合と同様に、退職金の返還を求めることとなります。

 しかしながら、死亡しているケースでは、受取人が複数に渡っているケースが多く、返還請求も非常に煩雑な作業となります。

 全額回収するのは至難の業ですね。