兵庫県西宮市消防局の職員が痴漢で逮捕されたようですね。消防本部からの報道発表資料も提示されています。
西宮市消防局職員の逮捕について
このことについて、下記のとおり、本市消防職員が大阪府公衆に著しく迷惑をかける暴
力的不良行為等の防止に関する条例違反により逮捕されました。
なお、事実関係を確認後、厳正に対処いたします。
◎ 逮捕日
令和4年6月11日(土)
◎ 逮捕された職員
階 級 : 消防士
所 属 : 西宮市西宮消防署北夙川分署
年 齢 : 37歳
採 用 : 平成21年4月1日
◎ 事件の概要(確認できている内容)
令和4年6月11日(土)、走行中の電車内において、痴漢容疑で現行犯逮捕されました。
その後、本人からの報告はなく、昨日、警察から在籍照会があったため、本人に確認した
ところ、事件が発覚したものです。
なお、本人は容疑を認めております。
引用元:西宮市HP
消防士とは
消防士には主に2つの意味があります。
- 職業としての消防士
- 職業消防士として働く人の階級のひとつ
職業としての消防士には、消防官とか消防職員とか消防吏員とか色々と呼び方がありますが、明確に法令に定めが無く少々ややこしい感じです。
時間のある人は消防組織法を調べてみてください。
【消防職員=消防吏員及びその他の職員】という定義があるのに対して、【消防吏員が何者か】という定めはありません。つまり、消防吏員が何かという定義がされていないのです。
現役の消防職員でもこの辺を知らない人は非常に多く、総務系や人事系の人や消防長ですら知らない人が多いですね。
37歳 階級消防士
西宮市の消防年報を確認しましたが、階級別の職員数に関する記載が一切ありませんでした。
そして、【西宮市消防局の組織等に関する規則】を確認すると第7条第1項に消防長の階級を消防正監とするという定めがあります。
よって、西宮市消防局は消防士から消防正監までのうち消防副士長を除く7つの階級を使用しているようです。
- 消防士
- 消防士長
- 消防司令補
- 消防司令
- 消防司令長
- 消防監
- 消防正監
そして、地方公務員法第58条の3により公表が義務付けられている給料表の等級に応じた職員数一覧を見てみると、給料表上の格付けも7つに分かれていることが分かります。
給料表上の格付けについて見てみると【西宮市一般職員の給与に関する条例】の別表第9(第5条関係)において、それぞれの役割についての記載があります。
1級に消防士又は消防主事の業務
3級に特に高度の知識又は経験を必要とする消防士又は消防主事の職務
との記載があります。3級には消防主任の職務という記載もありますね。ちなみに消防主任とは、消防司令補の階級にあるものを指します。(西宮市だけのルールであり、全国共通ではありません。)
37歳消防士はおそらく、2級か3級に格付けされており、消防士長や消防司令補と同じくらいの給料をもらっていたのでしょう。
特に高度の知識又は経験を必要とする消防士の職務とは
消防職員における階級とは、現場での責任や権限などの範囲を明確にするためのものであり、知識や経験に裏付けされたものでなければなりません。
となると、特に高度の知識又は経験を必要とする消防士って変ですよね。
知識や経験が乏しい人が消防士という階級なのであり、知識や経験が備わっていくにしたがって、消防士長や消防司令補といった階級に上がっていくはずです。
非常に矛盾した文言が、市の条例に記載されているという異常さから、西宮市の底力をうかがい知ることが出来そうですね。
なぜ最強消防士が必要なのか
本来で言えば消防士は最弱です。消防士長、消防司令補、消防司令という階級が上がるに従って、消防士としての実力が備わっていくわけです。
西宮市においては、消防司令補と同程度の給料を受け取っている消防士がいるのです。つまり、最強消防士です。
採用1年目で最強消防士になることはできません。
本当ならば、最強消防士なんて居ない方が良いんです。現場における指揮命令上の権限の範囲や重さと給料が逆転してしまう現象が生じているわけですから。
昇任試験の設計ミス
西宮市がなぜこのような異常な状態を容認しているのかは分かりませんが、他の多くの消防本部において生じている同様の状況は、昇任試験の設計ミスにより生じています。
公務員の給与体系や先に紹介した地方公務員法第58条の3により公表が義務付けられている給料表の等級に応じた職員数に関しては、地方公務員法等や各種通達などにより様々な制約を受けています。
自治体の都合のいいように運用をしてしまうと、総務省などにバレてしまい、地方交付税等の削減対象となる場合もあります。公務員秩序を維持するためには必要な制度設計と運用がなされています。
しかしながら、消防の昇任試験を設計した人が、そういった事情を知らないうえに、知ろうともせず、市町村の総務担当から説明されても理解できない程度の能力しか持ち合わせていなかったが故に、異常な昇任試験を作ってしまったのです。
本来であれば、消防における階級=職責という原則と、公務員の給与はその職責に応じて決定するという原則が共存するためには、消防の階級に応じて給与が決定するという状況にならなければなりません。
しかしながら、設計ミスにより不思議な職員が誕生してしまうのです。
知識も経験も消防司令補と同程度である消防士であっても、現場での権限や責任は採用1年目の消防士と同じであり、その比較的軽い責任に対して消防司令補と同じ給料を支給する。
異常な状況ですね。
昇任試験の設計をした消防職員たちの言い分は、昇任試験に合格しないと階級を上げることはできない。40歳になっても50歳になっても昇任試験に合格しないのであれば消防士のままである。
ただし、50歳で給料表の1級に格付けしていると、地方公務員法に基づく公表資料作成時に問題が生じてしまうため、3級格付けにして高い給料を払うこととする。
全国に蔓延する不思議昇任試験
多くの消防本部では、階級、職務、職責、対価としての給与などについて整理が出来ていないのです。
50歳で階級消防士の人が1級の給料なのであれば何の文句もありません。1級よりも高い給料を払うことに問題があるのです。
昇任試験や階級制度を作る際には、それぞれの消防本部が属する市町村などの基準に抵触しないように作らないと駄目ですね。
ミスを認めたくないために意地になっていると、特に高度の知識又は経験を必要とする消防士とかいう不思議系最強消防士が誕生してしまいますから。
最近流行りの転生物のアニメなのでしょうかね。