岐阜県美濃加茂市や可児市など10市町村を管轄する可茂消防事務組合は22日、組合に勤務する職員の時間外勤務手当の支給を巡り、過去約5年間に約2150万円の未払いがあり、計290人に影響があったと発表した。
組合によると、勤務1時間当たりの給与額の算出について2018年に給与条例の改正があったが、給与システムの設定変更が行われていなかったことが判明した。システムの計算と手計算との相違があり、分かった。
未払い期間は18年5月から今月までの4年7カ月間。20年3月以前は賃金請求権の時効が成立しているため、組合が職員らに支払う金額は時効分を除いた約1180万円となる。来年1月20日に280人に支給する。
組合は、消防長と次長兼総務課長を訓告処分とするなど計4人の処分を決めた。組合の担当者は「職員の法令に対する認識の甘さ、意識不足が要因。公務員として法令遵守による公正な職務の遂行を徹底する」と説明した。
引用元:岐阜新聞
支給ミスという不祥事
被害者は2者
この不祥事による被害者は2人いますね。
1 本来受け取ることができるはずであった給与の一部を受け取ることができていなかった消防職員
2 本来均等に均された給与支出予算であるはずのものが、約5年分をまとめて負担することとなった納税者
1の消防職員については、想像に容易いと思います。そして2については、若干の想像力が必要かと思います。
単年で1000万円以上の追加予算が必要となれば、その財源を確保する必要があります。地方自治体単位で特定の財源がない状態で1000万円以上の財源を確保することは容易なことではないため、他の事業を中止または縮小する必要が出てくることでしょう。
その地方公共団体が無駄遣いをしていないという前提に立てば、中止・縮小された事業により、それらの事業により利益を享受する予定だった人はある意味被害者と言えるでしょう。
例えば、道路補修の予定を変更して一部の補習を先延ばししたとか、役場の待ち時間短縮のために導入予定であったシステムの導入を見送ったとか、そういった被害が少なからず発生していたといえると思います。
加害者は存在する
地方自治体や消防本部、消防職員に対して損害を与えたという意味において、加害者は存在します。
今回のケースでは、当時給与の支給事務を担当していた職員をはじめ、当該事務の担当課長等の管理職、場合によっては消防長までが加害者と言えるでしょう。
例えば、委託業者の不適切な行為により地方公共団体に1000万円を超える被害が発生した場合には、当該委託業者に対して損害賠償の請求行為がなされることでしょう。
記憶に新しいのは、個人情報が保存されたUSBメモリを持ったまま飲酒して、当該メモリを紛失した事案がありましたね。どういった算出かまでは調べていませんが、損害賠償請求がされたようです。
となれば、今回のケースについても同様に加害者側の責任が追及されて然るべきものと考えます。
加害者の責任
加害者の責任の取り方は様々です。
責任の取り方というより、責任の追及方法という表現の方が正しいかも知れませんね。
最もポピュラーなのは、分限又は懲戒処分でしょう。減給や戒告、降格といったものが適切だと個人的には思いますね。
職務上のミスだから仕方がないというのは、あまりにも舐め過ぎですよね。
それが正しいか否かは別として、プールの給水栓を開けたままにした教師が責任をとって実費を支払わせるケースが存在するのは事実です。
ミスはミスとして責任は発生するのです。
★★
確かに、今回追加で必要となった1000万円は過去2年間に支払われるべきものであったため、自治体組織が負担するのが当然であり、被害とは言えないという見方をする人もいると思います。
それは違います。
公共団体である以上、年間を通して歳入と歳出の計画を立てて、その件について議会承認を受けています。そして、会計年度は原則的に独立しており、給与は完全に年度単位で独立した会計予算となっています。この議会承認を受けた歳出予算にに変更を加えるということは、歳入についても変更が発生することとなります。
適正な財政支出をミスにより阻害した時点で被害が発生しているのです。
賃金請求権と時効
記事の中で、賃金請求権の時効が成立している期間については追支給を行わないということが記載されていますが、これって間違っていませんか?
賃金請求権、つまり、勤務先に対して賃金を請求する権利は労働者にある権利であって、その権利を行使した場合であっても、勤務先、つまり使用者は時効の範囲内に限ってしか支給しないということです。
今回のケースでは、労働者が勤務先である消防本部に対して当該賃金請求権を行使したわけでは無いと考えられます。となると、勤務先である使用者が主体的に動いている事案であるため、期間をフルに遡って総額を支給することを咎めるものではないと考えられますよね。
稀に議員や首長が責任をとって給与の一部を自主返納するケースも存在します。この場合には、時効といった期間に囚われることなく、納得感のある期間を自主的に設定して返納してるのが通常です。
今回のケースのように、使用者側が賃金請求権の時効を理由に請求しないという判断が可能なのであれば、そもそも全額を支給しない判断だって可能なのではないでしょうか?
職員側から賃金請求権の行使があって初めて、追支給が成されるということだって構わないわけです。
何のための公表かを考えればすべてが分かる
全額を支給しないという判断や、請求権の行使後に支給を決定すること、そして不祥事として公表した理由を考えれば色々と消防の内情が分かると思います。
賃金請求権の行使が無いのに、不祥事として公表した。公表はしたが、不適切な事務処理をしていた職員の処分はなされていない。
上記2点を深堀してみると分かると思います。
まぁ出世の為ですね。正義感の欠片も存在しません。
最初に気付いた人が、多少なりとも正義感があるのであれば、追支給と当時の職員に対する処分はセットで存在しているはずです。
俺は当時の間違いを発見した!だから褒めてくれー!出世させてくれー!ってやつですね。みんなにお金配るから出世させてくれー!ってことですね。
自分の出世のために1000万円もの税金を追加予算として認めさせたわけですから。
そして当該決定に際して、当時の関係職員を処分するとなれば、多くの幹部候補職員の立場が危うくなります。だから、その人たちの責任は追及しない。
非常に歪んだ組織ですね。
消防で誤支給は当然のこと
消防で誤支給は非常に多く発生しています。
脳筋集団が複雑なお金の計算なんてできる訳がありません。
地方自治体が所管する条例規則の中でトップクラスで難しいのが給与関連の条例規則です。非常に規定っぷりが複雑であるだけでなく、条例規則改定時においても常に過去の条文が残るようにつくられており、一部を理解するためには全文を理解しなければならない。現在有効な条文と現時点では無効だが、遡及が発生した場合には有効となる条文があるため、同じ条件で結果が異なる計算方法が複数存在している条例となっています。
ここまで複雑な条例規則を消防職員が読むことはできません。消防職員3000人の中に1人くらいしかまともに読める人はいないでしょう。
となれば、誤支給は日常茶飯事です。計算間違いや条件見落としなど状況は様々です。
私も現役の消防士時代に、人事からの服務給与の取り扱いが明らかに条例違反であったため、当時の担当者に連絡して内容を伝えましたが、理解してもらえないどころか、逆ギレされたことを覚えています。その後再度説明を求めましたが、人事総務にいた全員が内容を理解することができなかったため、違法な服務給与の取り扱いはその後も継続していきました。
運よく数年後に当該事務の担当になり、当該違法状態の是正のために動きましたが、違法状態を理解させるのに数か月を要し、10人に説明した結果、1人だけうっすらと理解してもらえました。大学生になっても連立方程式が解けない人がいる状況と似ていますね。そんなレベルです。
ようやく違法状態是正のために動けると思ったのですが、当該決定権のある管理職は違法状態を理解できず。なぜ違法なのかは理解できないが、説明の中で違法状態であることは分かった。しかしながら、これを違法であると認識できているのは消防本部の中で君だけでしょ?違法だとした場合には、過去に遡って、当時の事務担当者たちの間違いを指摘することになるし、当時の担当者って、消防長以下多数の幹部職員だから、すべてを有耶無耶にしてくれないかな。今までの経緯を考えれば、君のように違法な事務に気が付くひとは今後出てこないと思うし。って言われましたね。