上記記事以降、神戸市消防局において第1回事故検証会が開催されたとのことです。
神戸市北区の団地火災で要救助者が落下した事故について、原因を分析する「第1回事故検証会」が18日、神戸市消防局航空機動隊庁舎(同市中央区神戸空港)で開かれた。救助方法の再現などを行い、専門家らが意見を交わした。
火災は7月17日午後に発生。同消防局は心肺停止状態の女性を3階のベランダから下ろす際、約5メートルの高さから地上に落下させる事故を起こした。女性の死因は焼死で、事故に起因するものではなかったという。
同消防局によると、降下する際に取り付けたハーネス型の救助器具「縛帯(ばくたい)」が何らかの原因で外れたとみられる。救助方法は一般的なもので、全国の消防機関からも疑問の声が寄せられているという。
18日の検証会には建築物の防火・避難計画などが専門の北後明彦神戸大名誉教授や、兵庫県山岳連盟の羽田宗子理事ら5人の専門家が参加。事故の発生状況について説明を受けた後、当時の現場と同じ応急はしごや縛帯を使った救助方法の実演を見学し、原因を検討した。
同検証会は年末までに数回開かれ、報告書をまとめる予定。鍵本敦消防局長は「原因を究明し、教訓や再発防止策を遺族らに説明したい」と述べた。
引用元:神戸新聞
そもそも開催目的が不明
公式の発表によれば、この検討会の開催目的は、下記のとおりとのことです。
建物火災における救助活動中の要救助者落下事故について、当該事故の原因を分析し、再発防止と安全管理体制の強化
今回の救助方法は長年にわたって消防隊員が実施してきたもので、採用1~2年目の消防士がまず初めに習得する基礎的な救助方法です。
全ての消防士が経験する消防学校の初任教育課程においても、この救助方法の確実な習得が原則となります。余程適性を欠いている人でもない限り、半年間の消防学校の訓練中にこの救助方法については、視界が悪い状態や騒音により声による意思疎通が出来ないような状態であっても実施できる程度には体得するものです。
ちなみに、私の消防学校初任教育時代には、1人だけ習得できない人がいました。いわゆる大人の発達障害が重度にあり、注意力散漫、物事を覚えられない、緊張すると動けなくなるなどの症状があった人でした。その後辞めちゃいましたけどね。
上記の状況を踏まえると、事故の原因の分析という意識の矛先は、人ではなく資機材に向けるしかないのです。
消防士として超基本的な救助方法すら習得していない人たちが寄ってたかって火災現場に行って、見よう見まねで要救助者をベランダから落としました。ということになれば、組織としての面目を保てないのです。
ろくな訓練もせずに、消防署では昼ドラでも見ていたのでしょうか?とい話になってしまいますから。
さらに言えば、その危機的状況を認識しようともしなかった消防署長や消防長といった人たちにも重大な責任があるはずです。もしかしたら、消防署長や消防長も、この基礎的な救助方法を習得していないのかも知れませんが・・。
自分たちの責任じゃないっていうことのアピールをしたいだけ
先にも記載したとおり、この検討会では、消防士としての能力を欠いていた職員が寄ってたかって救助活動のまねごとをして、要救助者を落下させたという結論を出すわけにはいかないのです。
そして、資機材に不備があったとか言い始めるのでしょう。
ある特定の状況を満たした場合には、救助用ハーネスが適切に機能しないため要救助者を落下させる危険性がある。とか言うしかないのでしょう。
わざわざ検証しないと分かりませんか?
ハーネスはその形状により、両腕が無い人や片足が無い人、ヒザより下が無い人など、適切に使えない場合もあるのは当然です。
常に要救助者の状況に合わせて、資機材を安全に使う又は使わないの判断をする必要があるのです。
安全に使えなかった資機材が悪いのではなく、安全に使えない可能性がある資機材の使用を選択した消防士が悪いのです。
救助用ハーネスには重大な欠陥があって、それについての改善案を今回の事故を教訓に提案させていただきます!だから私を出世させてください!ってのが魂胆なのかも知れませんね。
女性の死因
当初の報道から、一貫して女性の死因は焼死であり、本件落下事故は死亡の原因となっていません。
また、救助開始前に要救助者が心肺停止状態であることを確認しています。と主張しています。
死因が焼死なら落としてもいいの?
死因が焼死である以上、落下させたことについては、原因究明はするものの賠償はしないってことなのでしょうか?
例えば、建築現場で高エネルギー事故により受傷した要救助者について、骨盤骨折と両大腿部の切断があった場合で、事故直後は意識が若干あり、消防隊到着時には弱い心拍こそあるものの会話はできない状態であったとします。この傷病者を病院に搬送した結果、救急隊の応急処置と医療機関での緊急治療の甲斐虚しく、出血多量の失血死により死亡しました。
この傷病者の死因は出血多量の失血によるものです。となれば、搬送中の救急隊が傷病者の顔面を殴ろうと、爪を剝がそうと、何をしてもオーケーという考えなのでしょうか?
違いますよね?
死因が何であったとしても、傷病者に対して消防機関が新たな受傷をさせてはいけないのです。それは超非道徳的行動であり、場合によっては罰を受けるべきです。その人は病院で死亡判断を下されるまでは生きているのです。この例では、傷害罪として救急隊は罰せられることでしょう。
上記の例を見れば理解していただけるかと思いますが、今回の神戸市消防局のケースでは、最低でも業務上過失傷害罪での書類送検程度はあってしかるべきかと思いますね。
消防がやったころだから仕方がない って意識が、内部に甘い隠ぺい体質の消防組織を作り上げるのです。
心肺停止について
先の記事でも記載しましたが、延焼中の火災現場にて発見された傷病者について、心肺停止か否かまで確認するケースはレアケースです。
●防火手袋をした状態で脈拍の触診はできません。
⇒火災現場の延焼中の建物内で防火手袋を外した場合、緊急的な避難行動に遅れが生じるほか、バランスを崩して手を床に付いた際に、落下物で受傷することとなります。余程の強い事情が無い限り、手袋を外すことは許可されません。
●防火帽を適切に被った状態で、呼吸の確認はできません。
⇒騒音が激しく、至る所から消火用水が垂れてきて、上部からの落下物がある可能性がある状態で、防火帽を外したりずらすことは絶対にありません。高速道路をノーヘルでバイクに乗るようなものです。余程の強い事情が無い限り、ヘルメットを外したりすることはあり得ません。
緊迫した火災現場での要救助者の確認は、消防隊員の安全を確保したうえで、もっと簡易的に確認をします。
- 呼びかけに反応があるか
- 指先や胸部に対して痛み刺激を与えたときに反応があるか
これで十分です。1、2共に反応が無い場合には、胸骨圧迫・心臓マッサージのみ実施します。胸骨圧迫の結果、要救助者が顔を歪めるような反応を見せた場合には、直ちに胸骨圧迫を中止し、呼びかけによる反応があるかを確認していきます。これの繰り返しです。
火災救助の場合では、発見し、上記1、2の行為が出来る程度の安全地帯に到達してから5分以内には救助が完了します。
燃焼する部屋の中で傷病者を発見した時点で、無線などを使って周知されるため、救助方法について複数の準備を開始することになり、ベランダや窓まで傷病者を運んだ時点では救助する準備が概ね整っている場合が殆どです。
つまり、傷病者が心肺停止の状況であることを落下前に確認できたとは、到底考えられないのです。
もし本当に火災現場で防火手袋を外し防火帽を大きくずらした状態で、騒然とする現場を呼吸音が聞こえる程度の静かさにしたうえで、傷病者の頸動脈を触診しながら、口元に頬や耳を近づけて呼吸の有無を確認したというのなら、それこそ問題な気がしますね。
まとめ
総じて言えることは、目的が分からないってことですね。
本当に検証する気があるとは思えないし、パフォーマンスの検証をやったところで消防本部のイメージが悪くなる可能性が高い。
どういう思考回路で意思決定をしたのか、それらのプロセスが気になりますね。
やはり濃厚なのは、今回使用した救助用ハーネスには重大な欠陥があって、それが原因で落下する事故が発生したため、改善案を提案させていただきます!だから私を出世させてください!ってのが魂胆なのかも知れません。そしてその救助用ハーネスを【神戸式】とか【神戸仕様】とか名付けたりしたら、本当に人間性を疑ってしまいませんか?
いずれにしても、要注意ですね。来年の4月から採用が決まっている皆さん覚悟した方が良いかも知れないですね。