これから消防士になる人、すでに消防士として働いている人、将来消防士になるために勉強している人色々な人に読んでいただいており、ありがたいことに、ご相談やお問合せをいただいております。
引き続き消防関係の人の役に立てるように、不定期ではありますが、情報を発信したいとおもいます。
この記事では、組織におけるパワハラについてご説明させていただきます。
それってハラスメント? クイズ
次のうちパワハラ・セクハラなどのハラスメントはどれでしょうか?
- 救助訓練中に先輩隊員が、ミスをした後輩隊員の背中を蹴飛ばした。
- 他の職員がいる前で大声で注意された。
- 昼食に作ったうどんの残りを「もったいないから」と言われて4~5人前の残りと他の人の食べ残しを完食することを強制された。
- 私生活での趣味(アニメ鑑賞や声優コンサート、コスプレ)を暴露され、数人の職員から馬鹿にされからかわれた。
- 女性隊員の身体を「救助訓練の一環」として抱きかかえた。
- 日中に行った訓練中のミスを指摘され、勤務時間外にスクワットを1万回実施するように命じられた。
- 妻の出産のために休暇が欲しいと申し出たが、「男に出産は関係ないだろう」と言われ、休暇がもらえなかった。
- 子の育児のために長期の育児休業を取得したい旨を申し出たが、「他の奴に迷惑が掛かるからだめだ。お前の子のために俺たちが苦労する必要は無いだろう。休みたいなら金を払え」と言われた。
- 非番での救助訓練が任意とはなっているものの、休むことが許されず、無給での訓練参加を強制されている。
- 女性職員が仮眠前にシャワーを浴びようとしたところ、女性専用シャワー室に見覚えのないものが置いてあり、盗撮用カメラであった。
- 消防署の懇親目的として、非番日にバーベキューを企画したとのことで、ある女性職員が誘われた。当日会場に行くと、男性の上司が一人だけおり、「今日のバーベキューは中止になった。ふたりきりで出かけよう」と言われた。のちに判明したが、バーベキューの計画など存在しなかった。
- 仮眠時間中に仮眠をとることを禁止され、6時間にわったって壁に向かって立っていることを強要された。
- 髪が長すぎると言われ、数人の職員に身体を押さえつけられた状態で、バリカンで髪を切られた。
いかがでしょうか?
ハラスメントはいくつあるでしょう?
全問正解した人がいたら、かなりハラスメントに関する意識が高い人です。
それでは答えです。
それってハラスメント? 解答
それでは解答です。
1~14までの選択肢のうちハラスメントはゼロです。
ハラスメントはひとつもありません。
犯罪だからハラスメントではない!とかでもありませんよ。
ハラスメントの要件における最も大切なことが抜け落ちているために、1~14のすべてがハラスメントにはならないんです。
ハラスメントの要件とはなんでしょうか?
ハラスメントの要件
消防庁においてもハラスメントの基準が示されており、抜粋すると下記のとおりです。
- 人格や人権を傷つけられたとき
- 個人としての尊厳が傷つけられたとき
- 妊娠・出産・育児休業等を理由とした嫌がらせがあったとき
どうでしょうか?
改めて先の選択肢を見てみて、これらの要件に合致しているでしょうか?
合致しているように見えますよね。
でも、ハラスメントにはならないんです。
もう一つ大切な要件が抜けているから。
もう一つの、最も重要な要件とは、「組織が認めること」です。
個人ではなく、組織が認める必要があります。
暴力をふるった当事者や、その管理監督者が認めても無意味です。
組織として認めないと、ハラスメントにはならないんです。
組織とは
「組織で認める」とはどういう意味でしょうか?
正確に答えられますか??
暴力行為をした当事者が「あれはパワハラだった」と認めたところで、無意味です。
高速道路で140キロで走る車を、家族旅行中の警察官が見かけて、「スピード違反だ!」って思っているのと同じことです。
140キロで走る車を警察が検挙して、初めてスピード違反になるんです。
管理監督者が部下の行為がパワハラであることを認めても無意味です。
例えると、子供(18歳)が公園で野球をしていたところ、ボールを取り損ねて、隣接する家の窓ガラスを割ってしまった。隣家は不在であったため、侵入し、ボールを回収した。その際に自分のボールと似たボールが複数あり、それらを持ち帰った。その後、子供の保護者である親と一緒にその家に謝罪しに行き、割った窓ガラスを弁償し、ボールを返却した。
この場合、管理監督者が保護者、パワハラ当事者が子、被害者が隣家居住者ですね。
当然、管理監督者は子の不法行為を認識しています。そして被害者に謝罪をしています。しかしながら、状況から、器物破損、住居侵入罪、窃盗罪のいずれでも書類送検、起訴されることはないでしょう。
つまり、犯罪にはならないんです。
これと同じです。
わかりますか?
当事者であっても権限のない誰か(管理監督者、加害者、被害者)が認めてもパワハラにはならないんです。
人事担当部門、人事担当責任者、消防長、第三者委員会などが認めない限り、パワハラにはなりません。
ハラスメントとして取り扱われることはありません。
稀に、被害者側が訴えを起こして、裁判所が「これらはハラスメントである」と認定した場合があります。その場合、組織がハラスメントと認めていない場合でも、手続き上はハラスメントであるものとして取り扱われます。
学校でのいじめと同じです。
99%は揉み消される
消防の人事担当部門、人事担当責任者、消防長は、ハラスメントの認定を絶対にしません。
なぜなら、ハラスメントであることを認めるメリットがほぼ無く、認めないデメリットもほぼ無いからです。
ハラスメントであることを認めると、法令に従って関係職員を処分する必要があります。また、組織としてハラスメントが存在したことが報道され、消防長や人事担当責任者の責任を追及される場合もあります。デメリットしかありませんね。
そして、ハラスメントを認めなかった場合でも、99%は被害者が泣き寝入りして、メンタルを病むか自主的に退職していきます。その後、組織や加害者を訴えてくることは99.9%ありません。
メンタルを病み自害した場合に、保護者が訴えてくるケースが最も多いですが、それも多くはありません。なぜなら、死人に口なし。資料は全て組織内にある以上、訴えても勝てないのが分かりきっているから。
被害者がいることを認識していても、絶対に組織は認めてくれません。
1%の扉をこじあけて、ぜひ働きやすい消防組織を作りましょう。