宮崎県の都城市消防局は、ゴーグルの横に端末を装着し、救急現場の状況をリアルタイムの映像で消防指令室や医師と共有する実証を始めた。出動した隊員が端末で送った映像を元に、医師から処置の指示を受けられたり、病院の受け入れ態勢を整えたりすることで搬送時間を短縮できると期待している。7月中旬まで実際の出動で試し、本格導入するかどうかを判断する。 市消防局のデモンストレーション。救急車内で横になった患者役の職員の姿は、隊員が装着した「AR(拡張現実)グラス」のカメラを通して、消防指令室のパソコンに映し出された。 全国初の実証で、使っているARグラスは、両耳にカメラ型の端末とバッテリーをかけるタイプ。四つの消防署・分署のうち、南消防署に配備し、救急出動の際に救急救命士が装着する。カメラで現場の様子や患者の顔色などを撮影し、ウェブ会議システムを使って、協力する都城市郡医師会病院や消防指令室と共有することができる。 救急現場で救急救命士が高度な処置をする場合、医師の指示が必要だが、ARグラスがあれば通話に手を取られることなく、指示を受けた処置ができる。音声だけでは伝わりづらい患者の状況も共有しやすくなるとみている。患者側の了承を得て活用する方針だ。 実証は5月19日に始まり、6月8日までに3件の出動で試したという。南消防署の瀬之口隆志救急小隊長(50)は「言葉で伝えづらい患者の症状や現場状況を鮮明に伝えられるので、現場活動に有効だと思う」と話した。 市消防局はまた、119番通報の際に、通報者にスマートフォンでビデオ通話してもらい、現場の状況を把握する映像伝送システムも実証している。 通報者がスマホで119番している場合、指令室からショートメッセージを送信。メッセージを読み込むことで通話しながらスマホのカメラを起動させ、患者の様子を撮影できる。ショートメッセージのやりとりで、現場に向かう救急隊と通報者の間でもビデオ通話が可能になる。 消防局は、通報から救急隊の到着まで30分かかるような遠方への出動時や、通報者が患者の状況を説明できない場合、事故を起こした車種を知りたい場合などに役立つと期待している。 市は、ARグラスと119番の映像伝送の実証に、事業費約275万円を確保している。(中島健)
引用元:朝日新聞
救急救命士が実施する高度な処置
救急救命士が特別に許されている医療行為は下記5点となります。すべて、患者の状態が非常に悪く、病院搬送を待つと救命率が著しく低下するようなケースであり、一秒でも早く処置を開始することが望ましいものが並んでいます。
- 医療器具を用いた気道確保
- 心肺機能停止状態にある患者への輸液
- 心臓機能停止状態にある患者への薬剤(エピネフリン)投与
- 低血糖発作患者へのブドウ糖溶液の投与
- 心肺機能停止前の患者への静脈路確保と輸液
どの行為の場合であっても、患者の状況を電話で医師に伝えた上で、医師からの指示が必要となる行為であるため、救急救命士は無線イヤホンなどを使用して現場に向かうことがあります。
救急現場でのひっ迫状況や、多種多様な負傷傷病状態を鑑みて認められる医療行為が増えることによる負担についてや、短期間で取得することのできる救急救命士の資格にい対して過剰な医療行為を認めることは慎重な意見が多くあります。
さらにこれらの行為はスマホ普及前から認定されているものもあり、音声通話のみで十分に医師が指示を出すことの出来る状況であることを整理したうえで認定されたものです。
映像の必要性
映像があった方がいいのは確かではあるが、無くてはならないということは無いと思います。
必須ではないということです。
例えば、映像を前提とした救急救命士の特定行為が追加された場合には、必須になると思いますが現状そのような行為はありません。
高エネルギー外傷により気胸が強く疑われる患者に対して映像やデータ送信によって患者の状況をリアルタイムに共有できることを条件にして、救急救命士による脱気のための針刺し行為を認めるという特定行為を追加した場合などが考えられると思います。
つまり、救急救命士の特定行為に関してだけ言えば、現時点では映像の共有が必須ではないということです。
必要性について
映像に限らず、消防活動に対して必要なものは無限にあります。
あった方が良いものなんて、無限にあるという意味です。少しだけ例を挙げてみましょう。
管轄区域全域を飛行可能な無人ドローン、無人ヘリ
119番通報があった際に即時に出発し、現場の状況を撮影しに行きます。必要であれば消火剤の散布やAED等の応急処置資機材の投下なども可能です。
音声による避難指示や救命措置の指示も可能です。
隊員の位置情報のリアルタイム把握モバイル
森林火災や大規模倉庫火災、河川や海での溺者救助、土砂災害時の広域検索などの際に全隊員の位置情報をGPSなどによりリアルタイムに把握するモバイルなども普及していません。
個人装備品の空気呼吸器の残量や体温、心拍、血圧なども共有することにより、消防隊員の生命だけでなく、効率的な消防活動が可能となります。
広域救助の際に負傷者などを発見した際にも、直ちに位置情報の共有が可能となります。
例を挙げればきりがないですが、【必要】という理由だけでは無限にあるため、【必須】とい条件が満たされないと、大切な税金を投入して事業化することは不適切であると言っていいでしょう。
必須でないと税金投入は不適切か
必要:あった方がいい
必須:なければならない
この違いは大丈夫でしょうか。
公務員職場において大切なのは、目的を見失わないことです。
目的を達成するために必要なことなのかどうか。
目的を達成するためには無くてはならないものかどうか。
これに加えて、予算上の適正性についても考えなければなりません。
先に紹介した無人ドローンについて考えると、あった方がいいのは事実だが、無ければ消防行政が停止してしまうようなものではない。予算上も負担が大きい。
ARカメラはどうか
まぁ、よほどの低能でなければわかると思いますが、必須ではないですよね。
このARカメラが無いと消防行政が停滞するのであれば、導入前までは停滞していたってことですからね。
どの程度必要かについて考えると、このARカメラが無いことにより不利益を被る人がどの程度いて、このカメラの導入によりどの程度の利益を享受することができるのかについて考えることにより必要性について検討することができますね。
しかし、どう考えても必要性は低いですね。
先に記載したとおり、救急救命士の特定行為は音声通話のみで医師の指示が受けられることを前提にして作られたものです。さらに、それ以外の医師の指示を必要としない救急行為は救急隊員や救急救命士の独自の判断に基づいて実施する権限があります。
映像が必要となるシーンは非常に限られており、受け入れ準備をする病院にとっても、映像確認により適切な受け入れ準備をするよりも、ある程度の酷い状況を見越して受け入れ準備をする方が楽でしょう。
裏があるのか
予想されるのは次の2パターンですね。
市長・有力議員などの思い付き
消防職員としては管理する資機材が増えるうえ、業務上のメリットも非常に薄いものであるが、市長や有力議員などが思い付きで導入を薦めてきた場合には、断ることができません。
ときには地元新聞や全国紙の地方記者なども囲い込み、自らの売名、選挙対策のために消防行政と税金を利用して報道されようという魂胆が見え隠れしますね。
消防組織の無力さ
自治体ごとに予算の配分や使用方法などについて承認を得る方法は大きくことなります。
予算配分の作業は自治体が抱える業務の中でもトップクラスで膨大な作業であり、まさに不眠不休の作業続く場合もあります。
そのなかで、それらの作業の負担軽減を目的として、一定額については詳細な審査を経ることなく、消防局独自の判断により使用が認められる予算が割り振られる場合があります。
本来であれば予算配当を受ける際に、完成した事業計画と契約見込み業者のリストなどを用意する必要があるのに対して、こういった独自判断が許される予算については、事業計画案や素案の段階でも予算配当がされることがあります。もちろん、金額の上限があらかじめ決められており、消防組織内で自由に事業の改廃を行う権利があるということです。
こういった必要性の低い事業に予算を配当したという事実から、これらが市長や議員の肝いり事業ではないのであれば、消防局として判断力が著しく低いという見方もできることでしょう。
税金の無駄遣いについてどう考えているのでしょうか。