日本の消防職員には労働三権というものが全て認められていません。
中学時代に学習した分野ですが、復習しましょう。
- 団結権
- 団体交渉権
- 団体行動権
名前が似ていますが、権利として分けている理由をよく理解しておきましょう!
労働3権
- 団結権
- 団体交渉権
- 団体行動権
これら3つの権利の目的や性質をしっかりと理解して、おくことが、悪用するにしろ活用するにしろ、消防職員委員会の理解の第一歩となります。
団結権
労働者が労働組合を結成する権利を言います。
労働組合を結成するということと、自主研修グループを結成することや、職場環境改善サークルを結成することは意味が全然違います。
労働組合には、労働組合法に基づいて、様々な権利が付与されています。
単なる集団ではなく、法令に定める条件を満たして結成される組織となります。
団体交渉権
労働者が使用者と団体交渉する権利をいいます。
団体交渉というもののイメージが無い消防職員が99%以上だと思います。民間企業経験者で、実際に参加したことのある消防職員なんて0.001%くらいしかいないでしょう。
団体交渉とは簡単に言うと、大人のケンカです。特に、無賃金労働、不適切な昇任昇格、不適切な人事異動、パワハラ、セクハラなどが横行している職場における団体交渉は、手こそ出ないものの、ヒートアップすると罵声のようなヤジが飛ぶものです。
内容は、【ボーナスの額が少ない】【無賃金労働と思われる勤務が横行している】【長時間労働を是正して欲しい】【パワハラが酷い】【育休が取れない】【懲罰的な人事異動に対する抗議】【危険な職場環境を是正して欲しい】などなど様々です。
非常にクリーンな職場であれば、団体交渉自体が無い場合もありますが、形式的に【ポットを増やしてほしい】とか【給湯室の掃除を当番制にしてほしい】とか、そういったモノを交渉事項にしたりする場合もあります。
消防は?無賃金労働、不適切な昇任昇格、不適切な人事異動、パワハラ、セクハラなどが横行しているしょくばですよね。
もし消防で団体交渉が行われれば、まさにケンカになることでしょう。
団体行動権
労働者が要求実現のために団体で行動する権利をいいます。
行動と交渉は違います。
単に話し合いの場を設けるのではなく、いわゆるストライキにより、会社側に労働者の意思を伝えて、労働環境の改善のための行動を起こすということです。
ちなみに、この団体行動権は、警察消防に限らず、すべての公務員に認められていません。
消防職員委員会の組成目的
消防職員には、労働3権のすべてが認められていません。
そのため、労働者による労働環境改善のための機会が失われているとして、消防職員委員会なる仕組みができあがりました。
団結権は認めないが、団体交渉権と同様の権利を認める。というのが、目的でありましたが、実際には、これらの目的は果たされることなく、制度が悪用されているのが事実です。
なぜ悪用されるのか。
消防職員委員会が悪用される原因①
団結権についてもう少し理解する必要があります。
団結権により組織される労働組合には成立のための要件があります。すべてではありませんが、ごく一部を挙げてみます。
- 労働者が主体となって自主的に組織する団体であること。
- 労働組合の運営に関して使用者側(管理運営業務に従事する者)が支配又は介入することを認めない。
まず、消防職員には団結権が認められていないため、上記要件の保護を受けることはありません。
つまり、交渉の場における団体について、
- 労働者主体である必要がなく、使用者側が恣意的に組織することができる。つまり、交渉する意思のある人ではなく、交渉意志のない人を集めることが自由にできる。
- 使用者側(管理運営業務に従事する者)のによる支配、介入が自由に出来る状態であるため、集団の意思決定のコントロールを恣意的に自由に行うことができる。労働者の要望の封殺や、捏造が自由に出来る状態となる。
分かりますかね?
消防職員には、これを読んでも分からない人が多いから、悪質な運用や不適切な運用から脱却できないんです。
少しでも賢い消防職員の方がいましたら、是非理解して、労働被害者の救済のために尽力していただきたいところです。
消防職員委員会が悪用される原因②
消防に団結権、団体交渉権が認められた場合に交渉したい内容はどういったモノでしょうか?
- パワハラが常態化した職場を改善してほしい
- 被害者を多数出しているパワハラ加害者に対して、再発防止の措置をしてほしい
- 救助技術指導会の訓練時間などの無賃金労働を改善してほしい
- 日勤者の時間外労働が常態化しているものを改善してほしい
- 日勤者の時間外勤務手当認められていない状態について改善してほしい
- 救急救命士に対する危険手当、特殊勤務手当を増額してほしい
- 災害現場で重機やクレーン等を操作した場合の手当を増額してほしい
- 女性用トイレや更衣室を増やしてほしい
- トイレをウォシュレットの付いた洋式に変えてほしい
- 若手職員が勤務明けに食材の買い出しに行かされている状態を改善してほしい
- 人事評価が適切に行われていない状態を改善してほしい
- 人事異動が適切に行われておらず、本人の意図に反して不当に行われている
- 人事異動を所管する課所の職員だけが優遇される人事異動になっている
- 他の職員より昇格が遅れているのには正当な理由がない
- 昇任試験が適切に行われていない
などなど、といった具合ですかね。
どうでしょうか。ほとんどが人事や労務といった関係の要望内容ではないでしょうか?
ここで問題となるのが、先に記載した、使用者側(管理運営業務に従事する者)のによる支配、介入が自由に出来る状態であるため、集団の意思決定のコントロールを恣意的に自由に行うことができる。労働者の要望の封殺や、捏造が自由に出来る状態となる。という点です。
当然、使用者側(管理運営業務に従事する者)の中に人事や労務に従事する者は含まれています。こういった自分たちに不都合な要望が上がって来そうになったら、積極的に支配、介入をして意見のコントロールや調整が可能となっている状態です。
さらに、【消防職員委員会】という、今となってはセンスの無い名称により、職員と名の付く消防組織内の部署が業務を行うことがほとんどです。人事や職員といった名称を冠する部署で消防職員委員会が運営されるのであれば、当然人事労務関連の意見は全て封殺または捏造されます。
いやいや、そこまで悪いはずはずがないでしょう!という意見もあるかも知れません。
でもよく考えてください。
そこまで悪い人たちの集団じゃないのならば、先に記載したような要望が潜在的に存在することは無いでしょう。
上記のような、人事や労務に関する要望が存在する以上、彼らはまともではないんです。
現実から目をそらさずに、消防職員委員会の運営状況から、自分の消防本部の腐敗度を推し量ってみるのもいいかもしれません。