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【形骸化】運営側がこっそり教える消防職員委員会のダメな理由【実は出来レース】

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消防職員委員会の概要

必ず知っておくべき労使交渉

 消防職員には団結権(団体交渉を目的として労働組合を結成すること)が認められていません。ということについては、ほぼすべての消防職員が知っていることだと思います。

 消防組織や警察組織以外で結成されている労働組合が実際にどんな組織であり、どんな活動をしているのかを知っている人は極少数で、誤った認識が多くあります。特に重要である労使交渉についての理解が乏しい状況です。

 労使交渉団体交渉)とは 労:労働者 と 使:使用者 の間で行われる交渉のことで、労働者とは言うまでもなく、その企業・組織に勤めている人のことを指します。使用者とは、狭義では経営者・会社役員のことを指し、消防で言えば消防長の一人だけです。

 交渉の内容は多岐に渡りますが、給与UPの交渉や、福利厚生、休憩室の整備、負担軽減のための増員などが代表的な交渉事項です。

 実際の労使交渉において従業員と経営者が膝を突き合わせて交渉することは、時間的な制約や業務の実務的な理由等により、現実的ではありません。

 そのため、使用者には予算管理職員、人事労務担当職員、施設管理整備担当職員など、使用者に代わって一部の権限を行使する権限を有する人が含まれます。※組合に加入できないという意味ではなく、交渉の際に、立場が複雑になるというイメージですね。

 いったんは直接文章などで要望事項を経営者に提出し、実際の交渉については経営者以外の職員が担当する場合がほとんどです。

 消防組織で言えば、消防本部で勤務する予算、人事、施設などを担当する職員が使用者側に含まれることとなります。

 特に公務員の場合は、役職ごとに明確な権限があり、多くの場合、市町村長、消防長などの権限を専決処分等という形で委託されているため、使用者・経営者と同等の立場であるといえます。

消防職員委員会の根拠

 先にも記載したとおり、消防組織には団結権が認められていないため、当然労使交渉(団体交渉)をする権利もありません

 消防組織は階級制度により厳格に上下関係があり、一般的には風通しの良い職場ではないということになっているため、様々な要望について、気軽に上司に提案することが難しい状況でした。

 こういった状況を打破するため、階級制度は残したまま、平成8年に消防職員委員会という制度が施行され、それまで以上に円滑で効率的な消防行政の運営が実現できることとなりました。

消防職員委員会の組織及び運営の基準(平成八年七月五日消防庁告示第五号)に基本的な事項が記載されています。

また、消防職員委員会は、消防職員からの意見を幅広く求めることにより、消防職員間の意思疎通を図るとともに、消防事務に職員の意見を反映しやすくすることにより、職員の士気を高め、もって消防事務の円滑な運営に資することを目的として、消防組織法第17条の規定により消防本部に置くこととされています。

消防職員委員会の仕組み

 

 誰が作ったか分かりませんが、非常に分かりにくいフローですね。

 分かりにくいフローは別としても、制度的に崩壊している部分が多数あるため、その点については後述したいと思います。

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消防職員委員会の実績(公表ベース)

 公表されている実績については、かなり内輪ネタ感が強く、内容が分かりにくい場合も多くなっていますが、比較的一般的であると思われるものを紹介します。

消防職員の給与、勤務時間その他の勤務条件及び福利厚生に関すること

消防職員の職務遂行上必要な被服及び装備品に関すること

消防の用に供する設備、機械器具その他の施設に関すること

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消防職員委員会の実態(事務局からの本音)

 

 この消防職員委員会の事務局は、人事異動や懲戒処分等多くのヒトに対する事務を所掌するっ人事担当部門が行っています。人事担当は、パワハラの加害者・被害者の対応や昇任昇格、昇給に関するような情報、いわゆる閻魔帳なるものを持っていて、自分たちの思い通りにならない職員の悪口や相性の悪い職員リストなどなど、さまざまな悪い情報が延々と引き継がれています。

 そんな人事担当が事務局を務める消防職員委員会において、活発な意見交換が実施されるわけがありません。

 いかにして人事担当者に媚びるか。ただそれだけの委員会会議が実施されています。

 現に、先に記載した先行の事例においても、人事担当部門が所掌する業務についての改善事例はゼロに等しい状態です。

 例えば、以下の要望については例外なく闇に葬り去ることが出来ます。

 トイレを水洗にしてほしいなんて要望と比較したら、いかに重要な要望であるか分かると思います。これらが闇に葬り去られているんです。

 

 なぜ葬り去ることができるのかというと、消防職員委員会は、会議中の意見が全て公開される前提であると、活発な意見交換がなされない可能性があるため、最低限の情報を残して非公開としており、事務局の発言も全てなかったことにコントロールすることが可能です。

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消防職員委員会が形骸化し、制度崩壊している理由

 続きとなりますが、議事録をすべてコントロールすることができ、会議中の発言が外に漏れないことを保証されているとなれば、消防職員委員会から消防長に意見を述べる際に、事務局である人事担当部門に関する要望はすべて揉み消すことが可能です。

具体的な揉み消しフローを紹介します。

 先に例に挙げた「昇任昇格試験において、恣意的で不公平な配点基準が設けられていることの是正」に関して意見が意見とりまとめ者経由で提出されたとします。

 その時点で揉み消すことは出来ないので、そのまま消防職員委員会で審議されることとなります。

 その審議のなかで、「確かに一部の職員に有利な昇任昇格試験になっているのは事実ですが、現在の消防長が肝入りで導入・設計した制度なので、消防職員委員会から消防長に対してこの意見を『試験制度の見直しを行うことが望ましい』などと提出した場合、消防長の機嫌を損ねることとなり、ここにいる全員の今後の出世に響くことは間違いないです。どうしますか? 『総合的に勘案して合理的な試験制度であるため、改正の必要は無い』という委員会判断をして消防長に報告すれば、今ここにいる人たちの将来は明るくなると思います。これでよろしいですか?」という事務局からのコントロールが入るわけです。

 実際に消防長の肝入りかどうかは関係なく、人事担当課である自分たちに都合のいい、恣意的な運用が可能であるように制度設計されている昇任試験制度は、絶対に手元に残しておきたいと思っている以上、上記のようなコントロールが入ることになります。

 

 逆に、「トイレを温水洗浄便座に交換してほしい」なんて意見が提出されたケースを見てみましょう。

 消防職員委員会まで提出されるルートは同じです。

 消防職員委員会を構成する委員長、委員の大半は消防署や分署、出張所などで勤務する現場職員ですので、消防本部で予算事務や施設管理事務がどのような手続きで行われているのかを知りません。そのため、実際には「5年間をかけて、段階的にトイレを温水便座付きのものに交換する計画」が当時の消防長の判断により、予算措置も含めて決定している場合であっても、構成委員は、その計画が存在していることを知らないので、「温水便座への交換は早急に実施することが望ましい」という意見を消防長に上げる訳です。

 この意見は人事担当課にとってデメリットは一切なく、むしろ、事務局として結果を出せるチャンスです。逆に、施設整備等を担当する職員にとっては迷惑な話です。消防職員委員会の不適切な運用により報告された「温水洗浄便座に交換せよ!」という指示が出され、せっかく計画を立てて予算措置をした計画事業の変更を強いられるばかりか、場合によっては計画自体の中止が求められる場合もあります。

 事務局である人事担当課としては、自分たちが所管する事務以外であれば、どんないい加減な要望であっても、可決することがメリットにつながるのです。

 その結果、委員会に対する不信感が広がるとともに、意欲のある職員が腐っていくことに繋がりかねません。実際、ある意味で達観したような仲間をたくさん見てきました。

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消防職員委員会を良いものに変えていくのに必要なこと

 対策は簡単です。

 まずは、人事を所管する部署が消防職員委員会に一切かかわらないこと。

 次に、事務局は無作為抽選又は選挙等により複数人を選出して構成すること。

 最後に、委員会には、委員長・委員以外に、本部の管理運営事務を担当する職員の出席を義務づけること。

 この3点を守れば、自分が勤めていた消防本部で行われていた悪意のある消防職員委員会の運営は、システム的に阻止できると思います。

 どんなに頭の良い人がシステムを考えたとしても、いずれシステムの穴を見つけ、個人的な利益を享受しようとする人が湧いてきます。

 設立当時は消防職員委員会も優れた制度であったかもしれません。しかしながら現状は、悪意のある個人により悪用され、昇任や昇給のための道具にされているのが事実です。

 団体交渉権を持たないことが問題なのではないと思っています

 ご意見お待ちしております。

 

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