札幌市消防局は26日、白石消防署の20代の男性消防士が22年6月~23年3月、無許可で札幌市内の風俗店の受け付け業務に従事し、約90万円の収入を得たのは地方公務員法(営利企業等の従事制限)違反に当たるとして停職3カ月にしたと発表した。消防士は26日付で依願退職。3月に匿名の通報で発覚した。非番の日などの夜に業務に就いていた。
処分理由は営利企業従事制限
札幌市のHPから公開されている懲戒処分の指針を確認したところ、以下のような基準になっています。
(11) 営利企業等従事
任命権者の許可なく、営利を目的とする会社等の役員等に就任し、若しくは自ら営利を目的とする私企業を営み、又は報酬を得て何らかの事業又は事務に従事した職員は、免職、停職、減給又は戒告とする。
一方で人事院が示す懲戒処分の指針は次のようになっています。
(10) 兼業の承認等を得る手続のけ怠
営利企業の役員等の職を兼ね、若しくは自ら営利企業を営むことの承認を得る手続又は報酬を得て、営利企業以外の事業の団体の役員等を兼ね、その他事業若しくは事務に従事することの許可を得る手続を怠り、これらの兼業を行った職員は、減給又は戒告とする。
札幌市は免職、停職、減給又は戒告 となっているのに対して、人事院は減給又は戒告と定めています。
つまり、人事院の解釈としては、営利企業従事に関する処分単体においては、処分の上限を減給までとしているってことです。その割合こそ書かれていませんが、10分の1とかが一般的な減給割合です。
札幌市が人事院と同一の基準とする必要はありませんが、異なる裁量を行使するのであれば、やはり説明上の責任というか、合理的な理由は必要なんだとは思います。
減給と免職じゃぁ全然違いますから。
例えば、人事院が定める基準によると、窃盗は免職又は停職、強盗は免職となっています。
果たして、このご時世に営利企業従事を理由に停職3箇月処分は正しいのでしょうか?
この消防士は直接的被害を発生させていない
先に示した窃盗や強盗については、確実に被害者が存在しています。これ以外にも、人事院が定めている懲戒処分の指針において免職や停職の処分が規定されているものは、約1箇月の無断欠勤、情報漏洩、入札談合、公文書偽造、ハラスメント、横領、放火、殺人、薬物使用、淫行、飲酒運転などです。
消防の仕事が休みの日に、風俗店の受付業務をしたところで、誰か被害者がいたのでしょうか?
副業により得たお金を私利私欲のために使っていたから問題なのか、そのお金を全額自治体に寄付していたら問題なかったのか。
風俗店ではなく、店主の体調不良により運営が困難な状態にある商店街の八百屋であったとしても同じことをしたのでしょうか?
風俗店の受付業務により得た利益を全額地元消防団の活動費として寄付していたとしても、同じ処分をしたのでしょうか?
たらればが多くなり、想像が困難になる人もいるかと思いますが、地方公務員は公務員という立場上、個人の感覚や担当者の感覚や機嫌によって結論が変わるような決定を絶対にしてはいけないのです。
今後もこの消防本部は、無届で営利企業に従事した職員は停職にするという明確な意思をもって欲しいものです。人事院よりもはるかに思い懲戒処分の指針を作っている責任をしっかりと認識していかなければならないのでしょう。