商業施設でスカート内盗撮 消防士長を停職3か月の懲戒処分
山口県美祢市の商業施設で、30代の男性消防士長が女性のスカートの中をスマートフォンで盗撮したとして、今年1月に書類送検。美祢市消防本部は7月23日、停職3か月の懲戒処分としたことを発表した。
この事件は、被害者の通報により表面化し、逮捕から起訴、罰金命令が決定するまで処分を保留していたという。つまり、それまでは現場の消防車や救急車に通常通り乗務していた可能性が高い。
スカート内盗撮という性犯罪を犯しておきながら、同時に救急車にも従事していた事実は、市民のプライバシーや安全への懸念を極めて強く惹起させる。
逮捕・起訴まで放置 被害者情報を犯罪者が知り得る恐怖
スカート内盗撮という罪は非常に悪質で、被害者が日常的に被る精神的苦痛は計り知れない。それにもかかわらず、処分を保留していた期間中も、救急車乗務を継続していた可能性があるということは、許しがたい事実だ。
救急隊員となれば、マイナンバーカードの読み取りで、被救助者の住所・氏名はもちろん、受診歴や処方内容、既往症などにアクセスできる場合がある。
これは性犯罪者である消防士長が、女性の個人情報だけでなく、傷病情報や生活の詳細にアクセス可能だったことを意味する。被害者たちの知られざる恐怖がここにある。
処分保留期間の危うさ 消防車両内の性犯罪者
「逮捕・起訴されるまで処分をしない」という構造には、組織の判断停止という深刻な問題が潜んでいる。処分保留中も、犯行可能な状態であったと考えざるを得ない。
そして消防士は、ただ単に救急車に乗っているだけではなく、個人の生命・病歴情報に直接触れる立場にある。この状況が表沙汰になることなく続いていた可能性は、二重の恐怖を市民に与えるものだ。
性犯罪歴がありながら救急隊に残れる消防組織の異常性
本件で最も恐ろしいのは、性犯罪者である消防士長が、救急隊として現場に残り続けていた可能性が極めて高いという点である。
盗撮が発生したのは2025年1月。処分が正式に下されたのは2025年7月。半年以上の空白期間、組織は明確な処分を下さず、かといって停職措置や隔離も取らず、ただ時間の経過と外部の司法判断に依存した。
仮にそれが「推定無罪」の原則を尊重する姿勢であったとしても、ことが性犯罪である以上、慎重な措置がとられてしかるべきである。なぜなら、現場で活動する隊員は、【一対一で女性と接触する場面が日常的に存在する】からだ。
通報者や被害者が女性であった場合、その身辺情報・居住地・既往症までもが、加害経験のある消防職員の目に触れていたという現実。
この事実を市民は知らされていなかった。
マイナンバーカードから読み取れる性犯罪ターゲット情報
現在、救急搬送時において、マイナンバーカードを提示することで、以下のような情報が参照可能となる。
- 本人の氏名・生年月日・住所
- 医療保険の加入情報
- 過去の処方歴や診療情報提供書
- 通院履歴や薬剤の内容(連携病院の場合)
これらは、真っ当な職員であれば医療連携や迅速な搬送判断に有用な情報である。しかしながら、【性犯罪歴のある職員の目に触れたとき、それは犯行のターゲットリストにもなり得る】という側面を、我々は真剣に考えなければならない。
今回のように盗撮で摘発された人物は、「たまたま捕まった者」である。裏を返せば、捕まっていないだけで日常的に同様の行為に及んでいる者が他にもいると考える方が自然である。
そして、そうした者たちが救急現場に立ち、被害女性の氏名・住所・病院名・病名を覗き見ることができるという状況を、放置してよいはずがない。
消防組織にはびこる「使われる者の無自覚と、使う者の無能」
消防士という存在は、公的な信用を前提に市民の生活に介入し、立ち入ることが許されている稀有な職種である。
市民の寝室に入ることもあれば、下着姿で倒れている人を搬送することもある。
財布や現金、貴金属が置かれた室内で長時間活動することすらある。
こうした職務に従事する者が、過去に性犯罪・盗撮・窃盗を行っていたという事実は、単に「一人の不祥事」では済まされない。
それでも、消防組織内では、「処分が決まるまでは通常業務」「刑罰が済めば復職可能」「配置転換でリセット」といった、組織防衛と温情主義が入り混じった対応が横行している。
性犯罪者が消防車に乗る
性犯罪者が救急搬送にあたる
性犯罪者が市民の個人情報を読み取る
この異常な構図に警鐘を鳴らす者が、消防組織の中に一人も存在しないことが最大の問題だ。
なぜなら、それを止めるべき立場にあるのは、消防長を含む事務方の人間といった「使う側の人間」であるからだ。
しかし現実には、こうした役職者は不祥事を事後的に処理するだけの存在であり、日常的な監督もチェックもできていない。
不適切な者を採用し、監視もできず、違反しても見逃し、事が明るみに出てから慌てて処分を下す。むしろ、それらを喜んでいる側面するらある。
【無能が無能を管理する構造】が、不祥事を連鎖させているのである。
性犯罪だけではない 消防職員による「金品窃盗」も頻発している
性犯罪と並んで増加しているのが、現場からの窃盗や拾得物の横領である。
- 救助現場から財布を盗む
- 倒れていた高齢者のキャッシュカードで引き出す
- 搬送中にバッグから現金を抜き取る
- 出動先の家の冷蔵庫から飲料を勝手に飲む
こうした行為で摘発された消防職員は、直近の5年間だけでも全国で十数件にのぼっている。
いずれも氷山の一角であり、内実としてはもっと多くの違反が見逃されている可能性が高い。
そもそも、現場にいるのは2人または3人の救急隊員。うち1人が不正を働いたとしても、もう1人が止めなければ隠し通せてしまう構造が存在する。
そして実際に、「同乗者が見て見ぬふりをしていた」「所属では黙認されていた」といったケースも報告されている。
つまり、問題は「個人のモラル」に帰着させるべきものではなく、「そうした個人を見抜けず、排除できず、制御もできない組織の設計そのものにある」ということだ。
「信用」に乗って市民の生活に入り込む職種の責任とは
消防職員・救急隊員というのは、職務上、以下のような特権を持っている。
- 緊急性を理由に私人の住居へ立ち入る
- 裁量判断で病院を決定し、患者を移送する
- 現場で財布やスマホなどの貴重品を預かる
- マイナンバーカードを確認・読み取る
- 被害者や患者に「服を脱いで」などの指示を出すことができる
こうした全権を預けられている職種である以上、普通の公務員以上の倫理的制約と内部統制が求められてしかるべきである。
ところが現実には、救急車に乗る人間が何をしているかをチェックする仕組みすらなく、性犯罪歴があっても平然と現場に戻れる仕組みになっている。
「救急だから仕方ない」
「現場の人手が足りないから」
「処分が決まるまでは乗せざるを得なかった」
こうした言い訳が積み重なった結果、犯罪者が信用という看板を持って堂々と活動するという異常が平然と成立してしまっているのだ。
【この記事のまとめ】
消防士長による盗撮事件は、ただの一件の不祥事ではない。
性犯罪者が救急車に乗り、市民の氏名・住所・病歴にアクセスできることを、誰も止めようとしなかったという構造の欠陥を露呈した事案である。
消防職員は「信用を前提に市民の生活に立ち入る職業」である。
その重みをまったく理解せず、犯行の発覚まで現場に立たせていた消防組織、そしてその状況に危機感を持たない管理職たち。
我々はこのような構造をたまたま発覚した盗撮事件として済ませてはならない。
むしろ、この事件によって明るみに出た異常さを受け止め、まだ組織内に存在しているであろう見えていない性犯罪者たちの存在を前提に、制度や監視の再考が求められている。
そういった見えていない存在を処分しろとかそういうことではない。
そういった人間がいる前提で、システム設計をしなければならない。もちろん、概念としてのシステムではなく、データサーバーのアクセス権や書類の閲覧権限、執務室の入退室の権限すらも制御するという、具体的なシステムのことである。