消防士という地方公務員の中で最も高給取りのイメージがあるのが救急隊です。
火災や交通事故、救助事故でも多くの場合負傷者が発生しており、それらを伴わない負傷者、急病人も多く発生することから、救急隊は最も現場活動が多くなるため、救急隊に支払われる出動手当や深夜勤務手当の額も多くなっています。
都市部の救急隊は1日に10件以上の救急事案を扱うケースも多くあり、年収比較で100万円近く差が出る場合もあります。
同期で同年齢、同じ階級であるにもかかわらず、年収が100万円くらい違ってくるのです。
救急隊の概要
救急車には約3人の隊員が乗車しており、乗車するにあたって必要となる資格等については、135時間以上の講習を修了した救急隊員と、92時間以上の講習を修了した準救急隊員、または国家資格である救急救命士の資格を有するものがあります。
3人のうち1人以上は救急救命士を乗車させることが望ましいとされており、各消防本部では救急救命士の確保対策を実施しています。
救急隊のキャリアのパターン
救急現場一筋編
- 救急救命士として採用(一般の消防士として採用後に救急救命士養成所でもOK)
- 7~14年後に救急隊長(代理)
- 40代のうちに救急隊長
- 若い救急隊の指導を任されるようになる
- 55歳前後で救急隊引退
- 小規模出張所(分署)で定年まで消防隊として勤務(中隊長)
※救急救命士の資格を取得せずに救急隊長になる人も多くいましたが、資格が広く普及してきたことにより今では減少傾向にあります。
また、救急隊が他の消防士と比較して年収が高くなる傾向にあるため、50歳を超えて救急隊を続けられると、人件費の負担が大きくなってしまうことから、人件費負担が重くなりすぎないうちに救急隊長から外す傾向にあります。
救急エキスパート編
- 救急救命士として採用
- 5~10年後に119番の受令員(指令管制員)として勤務
- その3~5年後に救急隊長(代理)として救急隊復帰
- 40代のうちに救急隊長
- 若い救急隊員の育成・指導を担当
- 55歳前後で救急隊長引退
- 小規模出張所(分署)で定年まで消防隊として勤務(中隊長)
ポイントは指令管制員を踏んでいるところです。
救急活動は救急車が到着してから始まるのではなく、119番通報を受けた瞬間から始まります。つまり、救急活動が開始された瞬間は救急隊員ではなく、119番通報を受ける指令管制員が担当することとなるんです。
通報を受けた内容から状況を想像し、適切な応急処置を指導しながら、現場に向かう救急隊に内容を伝えていくこととなります。より俯瞰的に救急現場をとらえる能力が必要となります。
当然、そのような能力が無くても、指令管制員は務まりますが、救急隊としての活躍を目指す人にとっては重要なポジションとなることでしょう。
救急から出世を目指す編
- 救急救命士として採用
- 7~14年後に救急隊長(代理)
- 本部の救急管理事務担当(現場から離脱)
- 5年前後の救急管理事務の後 救急隊長として現場復帰
- 3年前後の救急隊長の後 救急管理担当の管理監督職として現場引退
- 救急以外の消防事務の管理を担当し幹部・署長として退職
なるべく早い段階で、本部の救急関連の事務を担当する部署に配属される必要があります。
救急業務を人命救助としてではなく、自治体が行う行政施策の一つであると俯瞰的にとらえ、経営マネジメントしていく立場にあるため、向こう数年から数十年の救急業務が向かうべき方向性について調整をしていくことが出来ます。
消防組織においても、ピラミッドの頂点に近づくほど、政策色が強くなっていきます。ひとりの命を救うことに尽力するだけではなく、最大多数の幸福化についても検討していく必要があるため、複雑な判断が求められます。そういった経験を踏んだ人でなければ、幹部としての適性性が低いとみられてしまうため、署長以上への出世を目指す場合には必ず経験が必要です。
逆に、そういった立場が目標なのであれば、早急に救急業務を捨てて、別のルートを探る方がいいでしょう。
まとめ
10人いれば10とおりの境遇があり、10とおりのキャリがあると言えます。
今回は代表的な3つのパターンについて紹介しました。
消防で努めていく中で生涯年収を最大化するためには、できる限り長く救急隊を続けることです。
一部の幹部では救急隊長の年収を超えますが、そこにたどり着くまでの長期間は救急隊長の年収を下回ることとなってしまい、最後の数年では逆転できないほどの差となります。
消防の中でも救急隊は今後の発展性が見込める部門ではあります。
睡眠不足という負担や、毎日のように死と向き合うこととなる精神的な負担は数値化することがこんなんではあります。