岡山・東備消防組合でパワハラ 管理職を停職2カ月、「防止する立場」の職員も処分

スポンサーリンク

岡山県の備前市と和気町を管轄する東備消防組合は2026年8月10日、部下や同僚に対して長期間にわたりハラスメント行為を繰り返したとして、消防本部の50代の男性管理職を停職2カ月の懲戒処分にしたと発表した。あわせて、当時ハラスメントを防止・是正すべき立場にありながら自らも不適切な言動をしたとして60代の男性職員を減給とし、監督責任を問われた管理監督者1人を戒告とした。消防本部でのハラスメントは全国で問題化しており、今回もその流れの中に位置づけられる。以下、報道で確認できた事実と、それに対する論評を分けて整理する。

事実:東備消防組合が公表した処分の概要

報道によると、東備消防組合が処分を公表したのは2026年8月10日である。停職2カ月とされたのは消防本部に所属する50代の男性管理職で、複数の部下に対するハラスメント行為が理由とされた。

これに加え、現在は一般職だが当時は管理職だった60代の男性職員が減給10分の1・1カ月の処分を受けた。さらに、監督責任を問われた管理監督者1人が戒告処分になったと報じられている。なお本記事では、個人の特定につながる情報は扱わず、組織名・立場の範囲にとどめる。

事実:認定された9件のハラスメント行為

報道によると、停職処分を受けた管理職は2023年12月から2024年10月にかけて、複数の部下に対し、威圧的な言動や人格を否定する発言、あいさつの無視などを継続的・反復的に行い、計9件がハラスメントと認定された。

具体的には、「あほ」「ばか」といった侮辱的な言葉を投げつけたり、その場から出ていくよう命じたり、差し入れを残した相手に危害をほのめかすような発言をしたりしたと伝えられている。被害を受けた職員のうち1人は精神的な不調を訴えて医療機関を受診し、約1カ月間休職した。

事実:ハラスメントを「防止する立場」の職員も処分された

減給処分を受けた60代の職員は、当時は管理職として、部下のハラスメントを防止・是正すべき立場にあったとされる。しかし、報道によれば、この職員は管理職によるハラスメントを是正しなかったばかりか、自身も日常の業務の中で個人の尊厳を傷つけるような言動をしていたという。

組織の中でハラスメントを止める役割を担うべき人物が、抑止機能を果たさなかっただけでなく加害の側に回っていた点が、今回の事案の特徴の一つだと報じられている。

事実:発覚の経緯と組合の対応

一連の行為は、東備消防組合が全職員約90人を対象に実施した、記述式のハラスメントに関するアンケートを通じて把握された。回答の中で複数の職員の行為について指摘があり、組合が調査を進めた結果、処分に至ったとされる。

組合は、外部の専門家を交えたハラスメント防止研修の徹底や、風通しのよい職場環境づくりに向けた組織改革に取り組み、全職員で信頼回復に努めるとしている。組合管理者を務める備前市長は、住民の生命と財産を守るべき消防組織で長期間ハラスメントが行われ、監督する立場の幹部自身も処分される事態は極めて遺憾だ、という趣旨のコメントを出したと報じられている。

事実:消防組織におけるハラスメント対策の枠組み

2020年6月に施行された改正労働施策総合推進法(いわゆるパワハラ防止法)は、事業主に対し、パワーハラスメントを防止するための相談体制の整備や事後の適切な対応を義務づけている。国や地方公共団体も対象であり、消防本部も例外ではない。

消防庁は法整備に先立ち、2017年に「消防本部におけるハラスメント等への対応策」を検討する作業チームの報告をまとめ、各消防本部に相談窓口の設置や実態把握を促してきた。背景には、消防が明確な階級制度を持ち、少人数の隊で長時間の交替制勤務を行うため、閉鎖的な人間関係の中でハラスメントが生じやすく、かつ表面化しにくいという指摘がある。

論評:階級と交替制が生む「逃げ場のなさ」

消防の職場は、24時間の交替制勤務が基本で、同じ小隊の上司と部下が長時間、同じ庁舎で執務し、食事や仮眠の時間まで共有することが多い。指揮命令が人命に直結するため、強い口調の指導が正当化されやすく、正当な指導とハラスメントの線引きが曖昧になりやすいという指摘がある。

こうした環境では、被害を受けた側が加害者と物理的に距離を取ることが難しく、我慢を重ねてしまいがちだと考えられる。今回、被害職員が休職に追い込まれるまで行為が続いた事実は、その「逃げ場のなさ」を示しているとの見方もできる。もっとも、環境が厳しいことは、人格を否定する言動を許す理由にはならないという批判は免れないと考えられる。

論評:アンケートで表に出たことの意味

今回の事案は、個別の相談や内部通報ではなく、全職員を対象としたアンケートによって表面化した。裏を返せば、日常の相談ルートでは長期間、行為を止められなかったということでもある。防止する立場の職員自身が加害に関わっていれば、本来の通報先そのものが機能しにくくなるという構造的な問題があるとの指摘がある。

再発を防ぐには、所属の指揮系統から独立した相談窓口や、匿名性を確保した通報の仕組みを整えること、そして定期的な悉皆調査を一過性で終わらせず制度として続けることが有効ではないか、という声がある。処分の公表による抑止と、声を上げやすい環境づくりは、どちらか一方では足りず、組み合わせて初めて機能するという見方には一定の説得力がある。

まとめ

東備消防組合の今回の処分は、管理職による長期間のハラスメントと、それを止めるべき立場の職員による加担、そして監督責任に対するものだった。全職員アンケートで事案が把握された経緯を踏まえれば、個々の処分の是非にとどまらず、消防組織全体で通報の仕組みと管理職の役割を点検し直す契機とすべきだという指摘は、的を射ていると見られる。