新しく注目される「消防士型上司」
近年、職場における問題リーダーを分析する中で消防士型上司という新しいカテゴリが話題になり始めています。
これは「常に火災を消すように緊急事態に飛び込み、英雄的に対処するが、火を防ぐ努力をしない上司」のことです。
マ イクロマネージャーや放任型と並ぶ、現代的な問題上司の一種として認識されつつあります。
消防士型上司の特徴
・危機が発生したときだけ評価され、予防には無関心。
・称賛を独占する一方で、部下は疲弊し、離職や士気低下を招く。
・長期的な改善よりも、場当たり的な対応が優先される。
こうしたスタイルは「短期的な勝利感」や「緊張感の中でのヒーロー像」を求める心理に支えられており、本人には自覚がない場合が多いのが特徴です。
■消防組織における特殊な問題
一般企業では一部の上司がこのタイプに該当する程度ですが、消防組織の場合は事情が異なります。
もともと「火災が起きてから出動する」という仕組みに基づいているため、組織全体が消防士型に陥っているのです。
つまり、
・火災予防よりも「火を消して称賛を得る」ことを優先する。
・不祥事が起きても「対応した」ことで評価され、再発防止は後回しになる。
・制度的にも、予防や組織改善の文化が育たない。
結果として、消防組織全体が「消防士型上司の集合体」となり、常に緊急対応に追われる一方で、根本的な改善は放置されるという悪循環を繰り返しています。
組織全体が消防士型であることの危険性
この体質は現場の隊員にとっても市民にとっても不幸です。
・職員は慢性的なストレスと長時間労働にさらされ、燃え尽きていく。
・市民は「防げたはずの火災」や「未然に防止できた不祥事」への対策を受けられない。
・組織は緊急対応を繰り返すことで「頑張っている」という幻想を守るが、実際には効率も信頼も低下していく。
これはまさに、全員が消防士型上司になってしまったひどい組織の典型です。
結論
消防士型上司という言葉は最近話題になり始めたばかりですが、消防組織においては個人のレベルを超え、組織全体がその体質に染まっています。
その結果、市民にとって本当に必要な「火を出さない仕組み」や「予防文化」は軽視され続け、職員の疲弊と不祥事の連鎖だけが残る。
消防士型上司の問題を考えることは、消防組織そのものの病理を映し出す鏡でもあるのです。
項目 | 内容 | 具体例・影響 |
定義 | 危機が発生した時に英雄的に対応するが、予防や改善には無関心な上司 | 火災を未然に防ぐより「火が出てから消す」ことに喜びを感じる |
行動パターン | 緊急対応に突進し、称賛を独占する | ベンダーを叩き起こし、自ら徹夜で修正 → 一時的に拍手喝采 |
弱点 | 危機そのものを防がない、再発防止を軽視 | 似たような障害や不祥事が何度も繰り返される |
部下への影響 | 慢性的なストレス・疲労、優先順位の混乱、モチベーション低下 | 「またか」と諦める文化、離職増加 |
組織への影響 | 長期戦略が育たず、場当たり的な文化に固定化 | 問題解決より「火消し」の美談が残る |
評価の歪み | 危機対応は称賛されるが、予防努力は見過ごされる | 「火を消した英雄」は表彰、「火を出さなかった努力」は無視 |
解決の方向性 | 称賛の対象を「予防」へ、冷静な対応、短期成果としての予防策提示 | 「インシデントが起きなかった日」を成果として発表する |