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【珍事件】虚偽通報の犯人を勝手に調査して懲戒処分【大きな代償】

 千葉県習志野市は29日、うその119番通報で店舗に出動した際、虚偽通報の〝犯人〟を突き止めようと、防犯カメラの映像を見るなどしたのは職務外の行為だったとして、市消防本部警防課の男性消防司令補(47)を停職3カ月とした。男性は「うその119番通報が頻発し、やめさせたかった。悪意はない」と説明。市は、その後の虚偽通報は激減したとしている。
 市によると、男性は中央消防署に勤務していた2月14日、公衆電話からの119番通報で市内の店舗に出動した際、店側に求めて防犯カメラ映像を確認。通報したとみられる人物が写った場面を部下にスマートフォンで撮影させた。その後、この人物の関係先に行って映像を見せたという。
男性が上司に報告して発覚。市は「個人情報の扱いに注意するよう周知し、再発防止に努める」としている。

引用元:産経新聞

追加の報道などを元に、改めて整理した内容が次の記事です。

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この消防士の職務の範囲とは

 色々と目移りするような記事ではありますが、この消防士(消防司令補)が処分された概要は、「防犯カメラの映像を見るなどしたのは職務外の行為であり、停職の懲戒処分が適当である。」ということです。

 「など」には虚偽通報を繰り返していると思われる人物の関係先に行って、防犯カメラの映像に映っていた証拠などを突き付けたという内容も含まれているのかは不明です。

 仮に含まれているとするならば、報道発表の内容も記事の内容も「虚偽通報を繰り返す人物の関係先に行ったなどしたのは職務外の行為である」となるはずです。

 整理すると、千葉県習志野市の消防職員は、虚偽通報を繰り返す犯罪者が防犯カメラに写っている可能性が極めて高いと判断した場合であっても、その防犯カメラの所有者や管理者に対して映像の確認を求めたり、その内容をスマホで撮影することは職務の範囲外であるため禁止されているようです。
 さらに、映像を確認したところ、虚偽通報を繰り返していた人物の名前や所在が分かっている場合であっても、その者やその者の関係者と接触することなどにより虚偽通報の抑止をすることは、消防職員の職務の範囲外であるため禁止されている。ということなのでしょう。

 習志野市が言っている「個人情報の扱いに注意するように周知し、再発防止に努める」という発言と、「防犯カメラの映像を見るなど」という言葉の結びつきが薄いですね。

 市長の認識が実際の事実とズレているか、報道発表の内容にずれがあったのか、記事にする際に認識のずれが生じたのかは不明です。

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職務の範囲内・範囲外

 職務の範囲内か範囲外かについて検討するには、範囲内の事を列挙するよりも、今回のケースに照らし合わせて、範囲外のことについて検討することが賢明と言えるでしょう。

 今回のケースにおいて、防犯カメラの映像を見たことの他に、職務の範囲外と判断されている可能性のある行動とはどんなものがあるでしょうか。

  1. 防犯カメラ映像の確認をしたこと(確定で業務外
  2. 防犯カメラ映像の閲覧を求めたこと。
  3. 防犯カメラ映像の写真撮影を依頼したこと。
  4. 防犯カメラ映像を写真で撮影したこと。
  5. 防犯カメラ映像から虚偽通報をしている可能性が高い人を発見すること。
  6. 虚偽通報をしている可能性が高い人を発見すること。
  7. 虚偽通報をしている可能性が高い人の勤務地や出入り施設などの情報を調べること。
  8. 虚偽通報している可能性が高い人の関係先を訪問すること。
  9. 虚偽通報している可能性が高い人の関係者に防犯カメラの写しの一部を見せること。

 この中の少なくとも2つ以上の行為が業務外であったことになります。まずは1は報道内容から確定と言えるでしょう。また、市町の個人情報の扱いという発言から、個人情報に関わる何かが含まれているものと考えることも出来ます。

 すると、7、8,9あたりの可能性が高いですね。

 7について、手段は分かりませんが、虚偽通報をしている可能性が高い人の情報について調査していますが、市消防職員には虚偽通報をしている可能性が高い人について調査する権限が無いということなのでしょうか。ただし、調査の方法や行動について一切言及されていない点を考慮すると、映像を見ただけで人物が特定できる状態であったのでしょう。例えば、特定の制服や店名の入った服を着ていた場合や、既に別件で関係性のある人物であった場合などが想像できるでしょう。
 となると、知っている人が防犯カメラ映像に映っていた。というだけなので、個人情報の扱いとは関係がなさそうです。

 8については、虚偽通報をしている可能性が高い人に会いに行ったという可能性が高いですね。ここでは会いに行くのに必要な情報の入手は論点の外側なので、会いに行くという行為だけが争点になります。とすれば、個人情報の扱いという市長の発言とはズレる気がします。
 自宅の電話から虚偽通報を繰り返す住人がいたとして、その人の家を訪問する行為が職務外であるとはならないはずです。よって、8は候補から除外ですね。

 9についても情報が少ないですが、見せ方次第では個人情報の扱いに関する問題になるでしょう。「この人はこの場所に出入りしていますか?」と聞けば、個人情報の扱いの問題にはならないでしょうが、「この人は虚偽通報を繰り返している可能性がありますので、こちらにいらっしゃるようであればお話を聞かせていただきたい」と言った場合はどうでしょうか。
 個人情報の扱い関連の問題が生じそうな気もしますね。

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公務員職場における個人情報の扱いの原則

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範囲外か否か

 公務員職場における非違行為、懲戒処分に相当するような行為か否かについては、極端な例について検討するのが常套手段ですので、今回もその手法をとります。曖昧な例を取ると、付属的な不確定な情報が多く乗ってしまい、適切な判断に繋がらないため、こういった手法がとられることが多くなっています。

 検討事例
 消防に対して同じ公衆電話からの虚偽通報が連日繰り返されていた。警察に相談しているものの、時間はバラバラであるため、1週間経っても行為者の検挙には至っていない状況である。
 虚偽通報の行為者の声は特徴的なものがあり、一度聞くと耳に残るものであった。
 
 虚偽通報を受信したことのある消防士Aは、制服や作業服ではなくスーツを着て、その公衆電話の横を徒歩で通って近隣の病院におもむき、そこで開催されている救急研修に公務で参加していた。

 消防士Aが公衆電話の横を通過したころに虚偽通報があったという情報が、職員あて一斉メールで届いた。

 消防士Aは公衆電話で電話をしている人物を目撃していたが、服装や容姿については覚えていない。

 公衆電話が見える位置に住んでいる同級生がいたため、その人に「●時頃なにをしていたか」と尋ねたところ、「友達とYouTubeの撮影をしていた」との回答を得た。その動画を見せてほしいとお願いしたところ、該当部分の動画を携帯宛に快く送ってもらうことが出来た。ちなみに、虚偽通報の件などは伝えていないし、このやり取りは公務の研修の休憩中に私物の携帯電話で行っている。

 虚偽通報があった時刻に公衆電話から電話するものの姿が映っており、服装容姿についても確認することが出来た。

 研修終了後に徒歩で職場に戻る途中、虚偽通報の行為者であると疑わしい人が公衆電話で電話している姿を目撃した。服装容姿、かすかに聞こえてくる声色から判断しても、99%虚偽通報の犯人であると確信できる状態であった。

 報復が怖かったため、その場から職場に電話したところ、今まさに虚偽通報を入電中であるとのことであった。声をかける必要は無いから、その場所から見える範囲で犯人がどこに行ったっか見ておくように、危険なことはしなくていいとの指示を受けた。

 犯人は通話終了後に小走りで近所の雑居ビルに入っていったのが見えた。

 5分後に現場に駆け付けた消防隊長に状況を説明した後、雑居ビルに向かった。

 雑居ビルは漫画喫茶とカラオケ店のみが営業中で、それ以外は空きテナントになっていたため、消防士Aは、漫画喫茶の受付の人に「今この人来ましたか?」と尋ねたところ、「あぁ、ついさっき入店しましたねぇ」と気のない返答を受けた。

 

 どうでしょうかね。

 献身的で優秀な消防士に見えるのは、もはや自分自身が消防士ではないからでしょうか?

 これらの行為に違法性や公務員としてふさわしくない行為があったのでしょうか?

 謎ですね。

 市消防本部としては、具体的に彼のどの行為が業務外であり、どういった理由で停職2か月という重い処分をくだしたのかは、丁寧に説明する責任がある気がしますね。

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