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消防団員の報酬は何が問題なのか

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消防団員とは

火災現場で消防車から水を出して消火活動をしている主な人たちはおおきく分けて、消防士(消防吏員)と消防団員の2種類が組織されています。

消防士は常勤の地方公務員であるのに対して、消防団員は非常勤の地方公務員です。

非常勤とは字のとおり、消防団員としての活動を常時してはいないということで、基本的には本業として別の仕事を主としています。サラリーマン、自営業、主婦(夫)などといった様々な人たちで構成されています。

当然ですが、消防団員となれば市町村から報酬といったかたちでお金が支払われます。

消防団は基本的に市町村単位で設置っされ、それを地域ごとに分けた【分団】が複数置かれています。【分団】の下に【部】や【班】といった単位を設けて組織を細分化しています。

また、広域化により複数の市町村で消防本部が構成されている場合には、それらとの不一致を避けるために【広域連合消防団】や【消防団】の下に【方面部隊】といったものを置く場合もあります。

消防士になるためには、市町村単位で実施される採用試験に応募し、筆記試験、面接試験を突破する必要があり、突破した場合、翌年度の4月1日に正式に採用されることとなります。

消防団員については、消防士のような採用試験があるわけではなく、勤務地または居住地の消防団を管轄する消防本部に連絡し、手続きを踏めば採用となります。よほどのことが無ければ採用となることでしょう。

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消防団員に支払われるお金の種類

年報酬

文字通り年報酬は年単位で支払われるお金であり、年途中からの入団であっても日割り、月割り等の定められたルールに従って報酬が支払われます。

支払い回数についても、半額を2回に分けて支払う場合や4分の1を4回に分けて支払うなどといった形で、それぞれの消防団のルールに従って支払われます。

とある自治体の年報酬の額は下記のとおりです。

階級報酬の額
団長年額 84,000円
副団長年額 70,000円
分団長年額 50,000円
副分団長年額 45,000円
部長年額 39,000円
班長年額 36,000円
団員年額 34,000円

年報酬については、下記のとおり国税庁から案内があります。

当該非常勤の消防団員が、その者の出動の回数に関係なくあらかじめ定められている年額、月額等によって支給を受ける報酬については、その年中の支給額が5万円以下であるものに限り、課税しなくて差し支えない。

したがって、上記の例に挙げた消防団においては、分団長以上の階級にある人のみが課税対象ということですね。

出動報酬(費用弁償)

災害現場や訓練、講習講演会等に参加した場合に支払われる手当(費用弁償)であり、1回あたり〇〇円などといったかたちでそれぞれの消防団ごとに規定されている。

出動報酬として支給しているとある自治体の金額は下記のとおりです。

種別報酬の額
水火災等の防御活動に従事したとき。      1回につき 3,400円
消防訓練、防災指導等の職務に従事したとき。1回につき 2,400円

消防団によっては、活動時間が〇時間を超過した場合には追加で支払うなどの規定を設けている場合もあります。

出動報酬と費用弁償の違いについて

一般的には費用弁償として支給される場合には、実際にかかった経費の弁償として支給されるため、一般的な収入として扱われないため、課税対象とならない外収入となります。
それに対して報酬は、一般的には、実際にかかった経費の弁償ではなく、労働に対する対価として支払われるものです。図書の執筆や講演会の請負等。
しかしながら、消防団員に支払われる出動報酬については、下記のとおり国税庁から案内が出ています。

当該非常勤の消防団員が、消防、水防等のために出動した場合に支給を受ける出動手当、警戒手当、訓練手当等で、その者の出動の回数に応じて支給されるもの(以下この項において「出動手当等」という。)については、28-8の「その職務を行うために要した費用の弁償」に該当するものとして差し支えない。


そのため、出動報酬という名目で支払われたものであったとしても、上記要件を満たすことと考えられるため「その職務を行うために要した費用の弁償」として取り扱われることとなるため、両者に違いはないものと考えられます。

旅費

災害時には自らが所属する消防団の車庫等に赴いて消防車に乗り込み、災害現場に向かうため、交通費がかかることは基本的にありませんが、研修会や講演会といったものが消防本部や市役所等で行われた場合には公共交通機関を使用して出向くこととなるため、要した費用については旅費として支給されます。

消防団ごとではなく、管轄する自治体で規定する旅費条例の支給対象者が、首長が任用する非常勤職員も対象としているため、通常の職員と同様に電車代が支給されることとなります。

退職報償金

一定の期間を超えて消防団員として勤務した後に退職した場合には退職金が支給されます。

退職報奨金は基本的に全国一律となったおり、下記のとおりです。単位は千円です。

勤務年数5年以上10年以上15年以上20年以上25年以上30年以上
階級10年未満15年未満20年未満25年未満30年未満
団長239344459594779979
副団長229329429534709909
分団長219318413513659849
副分団長214303388478624809
部長及び班長204283358438564734
団員200264334409519689

こちらは通常の会社から支給される退職金と同様の取り扱いとなるため、退職所得として課税対象となります。

ただ、自営業の方にとっては退職所得控除の範囲内かとおもいますので、基本的には非課税かと思います。

消防団運営費

消防団や分団といった単位に対して、基本額に人数要素、車両要素等を加えていき金額を算出し、消防団という組織に対して市町村の予算から支払われます。

主に団員募集のチラシや簡易的な修繕、消耗品などの購入に充てられています。

一部の消防団では宴会の費用に充てられるなどして問題視されることもありますが、基本的には【交付金】といった名目で支払われるため、決算報告が必要となるため、基本的にはひどい用途には使われていないはずです。

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消防団員が不足している

現状

理由は様々ではあるが、消防団員が不足している。

現時点において具体的な問題が生じているとの記載は見当たらないが、将来的に致命的な問題が発生する可能性があるため、積極的な団員確保につとめるとのことである。

不足する原因

不足する原因について、金銭的要因と社会的要因をそれぞれ分析している。

金銭的な対価が少ないためなり手が少ないという点と、自営業者の減少により時間的な制約を受ける働き方をするサラリーマンが増えた点についてあげている。

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直接支払われていない場合 脱税の疑い

報道でよく見る「団員の報酬が分団によりピンハネされて宴会費用に充てられている問題」について

これは年報酬にかかる部分が多いようですが、本来市町村が直接団員に対して支給する必要があるお金について、分団単位で一括してお金を預けて、個人への支給は分団にお任せしている状況です。

その際に個人ごとに適正な金額を領収したことを示すために領収印をもらい、適正に支給していることとしています。

正確に所属団員を把握したうえで個人ごとに支給しているのであれば問題はないのですが、市町村によっては、「正確に所属団員を把握することが出来ていないため、個人ごとの支給は分団長に任せています。」などと答えている自治体もあるようです。

これに関しては脱税の可能性がありますね。消防団員ではなく、市町村の脱税です。

市町村も例外なく課税対象となる報酬などを個人に支払う際には、支払い時に所得税を徴収し、国に納める義務がありますからね。

もう一つの悪い状況が、分団が一括して預かったお金のうちの一部をピンハネし、団員自らが参加する宴会費用として使われているケースがあります。

消防団の活動や報酬の支払いに関する部分が労働基準監督署の管轄内なのかはわかりませんが、個人に支払われる報酬や給与の一部を天引きするためには、法令で認められているか、就業規則等に定めてある必要があります。

消防分団単位で報酬を支払っているわけではなく、首長の名前で市町村単位で支払っているため、分団単位のローカルルールは適応されず、条例などで規定する必要があります。

さらに言えば、宴会費用などは就業規則で定めたとしても認められないという判例もあるようです。

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幽霊団員問題

幽霊団員問題というのは、所属はしているが活動が無い団員のことです。

所属しているだけで年報酬は支払われるため、年間をとおして災害対応も訓練などに一切参加せずに年報酬だけを貰い逃げする団員がいることが稀にあり、問題視されています。

上記の自治体では年間34,000円が支払われていることになります。

しかしながら、消防団員になるのは簡単ではないと思います。

手続き上は簡単ですが、新任団員用の訓練等を乗り越えなければその後の団員として残ることは出来ないと思います。

しかも、ボランティア精神をもって消防団に入団してくれた貴重な精神をもつ人です。

有意義な人材活用のために考えてほしいものです。

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