サイトアイコン 消防情報館

大阪市消防局、動画投稿で140万円の副収入得た23歳消防士を停職3カ月 SNS時代の兼業規制を問う

大阪市消防局は2026年6月30日、勤務時間外に複数のSNS上へ動画を投稿し、広告収入などで少なくとも合計140万円程度の収益を得ていたとして、西消防署に所属する23歳の男性消防士を停職3カ月の懲戒処分にしたと発表した。地方公務員法第29条第1項第1号および第3号に基づく処分で、無許可の兼業をめぐる公務員の懲戒処分としては近年各地で相次いでいる事案の一つに位置づけられる。以下、公表資料や報道で確認できた事実と、それに対する論評を分けて整理する。

処分の概要

大阪市消防局の発表によると、対象の消防士は2025年9月ごろから2026年5月18日にかけて、勤務時間外に自身の複数のSNSアカウント上でグルメ紹介などの動画を250回程度投稿し、広告収入などで少なくとも合計140万円程度の収益を得ていた。市はこの行為を地方公務員法が定める服務規律違反にあたると判断し、停職3カ月の懲戒処分とした。処分の発表は同局の報道発表資料として公開されている。

発覚の経緯と本人の説明

報道によれば、今回の事案は2026年5月ごろに寄せられた匿名の情報提供をきっかけに発覚したとされる。消防局の聞き取りに対し、対象の消防士は、兼業が許可なく行えないことを認識しながら動画投稿を続けていた、消防の職務内容とは無関係な内容だったため発覚しないと考えていた、という趣旨の説明をしたと報じられている。約8カ月間にわたり250回程度の投稿を継続していたことになり、単発的・一時的な発信活動ではなく、一定の頻度で継続的に行われていたことがうかがえる。動画の具体的な内容や投稿先のプラットフォーム、収益の内訳など、発表資料に記載のない詳細については確認できていない。

停職3カ月という処分水準

大阪市消防局は、処分の根拠として地方公務員法第29条第1項第1号(法令違反)および第3号(全体の奉仕者たるにふさわしくない非行)を挙げている。同法は、職員が任命権者の許可を受けずに報酬を得て他の事業・事務に従事することを制限しており、今回はこの兼業制限違反が、単なる注意や戒告にとどまらず「停職」という身分上の不利益処分にまで至った形となる。処分の発表は同局の定例の報道発表資料として公開され、対象者の氏名は公表されていない。

地方公務員における兼業規制の位置づけ

地方公務員法は、職員が任命権者の許可を受けずに報酬を得て他の事業や事務に従事することを原則として禁じている。消防職員に限らず、教員や一般行政職を含む地方公務員全体に共通する規律であり、近年は動画投稿サイトやSNSでの活動を通じた広告収入・投げ銭収入が、無許可兼業として問題化する事例が全国で表面化している。今回のケースも、こうした「配信・動画投稿による副収入」型の兼業違反の一つとして位置づけられる。

論評・意見:処分の重さと「見えにくい兼業」への対応

停職3カ月という処分は、地方公務員の懲戒処分の中では相応に重い部類に入るとみられる。約1年近くにわたり250回もの投稿を継続し、140万円程度という決して少額とは言えない収益を得ていたことを踏まえれば、単発の副業とは異なる継続性・組織性があったと評価されたのではないかとみられる。一方で、動画の内容が消防業務と直接関係しないものだった点をどう評価するかは、意見が分かれ得るところだろう。職務との利害関係がない私的な発信活動であっても、地方公務員法が定める兼業許可制度は職務専念義務や信用保持を目的とする以上、内容の当たり障りのなさが免責事由にはならない、という考え方が処分の背景にあると考えられる。

論評・意見:SNS時代の服務規律をめぐる課題

この種の事案が今後も増えていくことは想像に難くない。動画投稿やライブ配信は誰でも手軽に始められ、収益化の仕組みも整っている一方、公務員がどこまでその収益活動を許可制の枠内に収めるべきかという線引きは、必ずしも職員に周知徹底されているとは言えないという指摘がある。消防の職務とは無関係な内容だから発覚しないだろう、という認識を本人が実際に抱いていたのだとすれば、それ自体が兼業規制についての理解不足を示しているとも言え、各消防本部には制度の周知や相談窓口の整備が改めて求められるだろう。同時に、匿名の情報提供によって発覚した経緯からは、組織内部での自己申告よりも外部からの通報に頼らざるを得ない監視体制の限界も見えてくる。動画そのものに消防を思わせる要素がなければ、所属先や本人を特定することは第三者にとって容易ではないはずであり、今回の事案がどのような経路で消防局側に伝わったのかは、発表資料からは明らかになっていない。

消防職員は交代制勤務が多く、非番や週休日といったまとまった時間を持つ職種でもある。そうした時間の使い方自体は本人の自由であるはずだが、収益を伴う活動になった時点で、許可制という一線を越えてしまう。今回の事案を一過性の出来事として片付けるのではなく、兼業許可制度の趣旨や手続きを職員にどう周知していくか、各消防本部が具体的な取り組みを示していけるかどうかが、今後問われることになるだろう。

モバイルバージョンを終了