横須賀市消防職員採用試験の倍率は、令和3年度(2021年度)の4.9倍から令和4年度(2022年度)に34.2倍へと急上昇し、その後は令和5年度16.8倍、令和6年度11.8倍、令和7年度11.0倍と3年連続で低下している。横須賀市が公表している「過去5年の採用試験状況」をもとに、この5年間の推移と、その背景にある申込者数・受験者数・最終合格者数の内訳を整理する。
過去5年で最大7倍近く動いた倍率
横須賀市が公表している資料によると、消防職員採用試験(1次試験は体力試験)の申込者数・受験者数・最終合格者数・倍率は、年度ごとに次のように推移している。
令和3年度は申込者数110人(うち女性5人)、受験者数79人(同3人)、最終合格者数16人(同2人)で、倍率は4.9倍だった。翌令和4年度は申込者数410人(同26人)、受験者数308人(同20人)と大きく増えた一方、最終合格者数は9人(同2人)にとどまり、倍率は34.2倍まで跳ね上がった。
その後は令和5年度が申込者数276人(同21人)、受験者数185人(同9人)、最終合格者数11人(同1人)で倍率16.8倍、令和6年度が申込者数316人(同24人)、受験者数177人(同9人)、最終合格者数15人(同2人)で倍率11.8倍、令和7年度が申込者数253人(同18人)、受験者数165人(同10人)、最終合格者数15人(同1人)で倍率11.0倍と、3年連続で緩やかな低下が続いている。
令和4年度に倍率が突出した内訳 受験者数の増加と合格者数の少なさ
5年間のうち突出しているのが令和4年度の34.2倍である。この年度は申込者数・受験者数がともに5年間で最多となった一方、最終合格者数は9人と、5年間で最も少なかった。受験者数308人に対して合格者数が9人にとどまったことが、倍率を押し上げた直接の要因である。
これに対し、直近の令和6年度・令和7年度はいずれも最終合格者数が15人と、令和4年度の9人よりも多い水準で推移している。受験者数は165〜177人程度で令和4年度の308人より少ないが、合格者数が増えていることもあり、倍率は11倍台まで落ち着いている。最終合格者数、すなわち実際の採用人数の年度ごとの変動が、倍率の水準に影響を与えていることがうかがえる。
受験区分は学歴でなく年齢による3区分
横須賀市消防職員採用試験は、A区分・B区分・C区分という3つの受験区分に分かれているが、公表資料には「各年度の受験区分は学歴区分ではなく、年齢区分となっています」との注記がある。他の消防本部でしばしば見られる大学卒業程度・高校卒業程度といった学歴による区分とは異なる制度であることが、この注記から確認できる。
令和7年度の最終合格者15人の内訳は、A区分6人、B区分5人(うち女性1人)、C区分4人となっている。令和6年度はA区分6人(同1人)、B区分2人、C区分7人(同1人)、令和5年度はA区分4人、B区分2人(同1人)、C区分5人と、年度によって区分ごとの合格者数のバランスが変化している。
なお横須賀市は、通常の採用試験とは別に、令和7年度は令和7年8月1日採用の中途採用試験も実施している。この試験は申込者数81人(うち女性3人)、受験者数38人(同1人)、最終合格者数4人(同1人)で、倍率は9.5倍だった。定期の採用試験に加え、年度途中の欠員などに対応する中途採用の枠が別途設けられている点も、横須賀市消防局の採用制度の特徴である。
1次試験は体力試験 持久走・懸垂・腕立て伏せ
横須賀市消防局のホームページによると、次年度(令和8年度)の消防職員採用試験では、申込締切が8月5日、1次試験の実施日が9月25日と案内されている。1次試験は体力試験で、実施種目は持久走(男性1,500メートル、女性1,000メートル)、懸垂、腕立て伏せとされている。過去5年分の採用試験状況の資料でも、各年度の1次試験は例年9月下旬に実施されており、申込みから1次試験までは1カ月半程度の準備期間が設けられていることになる。学科試験の内容など2次試験以降の詳細は公表ページの本文には記載がなく、受験案内など別資料で確認する必要がある。
論評:倍率の乱高下は何を映しているか
令和4年度の34.2倍という数字だけを見ると「狭き門」という印象が強くなるが、5年間の推移を通して見ると、最終合格者数(実際の採用人数)が9〜16人の範囲で年度ごとに変動しており、その変動幅が受験者数の変動と重なり合って倍率を大きく動かしていると見られる。倍率の上下だけを取り上げて「人気が高まった」「人気が落ちた」と単純に結論づけるのは早計であり、募集側の採用予定人数の変化を合わせて見る必要があるという指摘は成り立つだろう。
消防職員の採用試験をめぐっては、全国的に若年人口の減少や公務員志望者の分散などを背景に、受験者数の確保が課題になっているという指摘が各地の消防本部から出ている。横須賀市消防局の場合、令和4年度以降は受験者数が緩やかに減少する一方で最終合格者数はむしろ増加傾向にあり、採用枠を維持しつつ受験者の裾野をどう広げるかが今後の論点になるとみられる。5年分のデータが示す倍率の変化は、単年度の数字だけでは見えない採用動向を映す指標として、受験を検討する側にとっても参考になるといえる。
